2008年 青輝賞


表彰も2年目。1年目は理想を追求し過ぎました。
本年公開された作品の中で、しっかり選ぶことにしました。



2008年少年映画大賞「青輝賞」・発表

■発表

2008年青輝賞・作品賞
あの空をおぼえてる 広田亮平君の一世一代の名演技に感動! 脱帽!
2008年青輝賞・少年映画ベスト5
1.あの空をおぼえてる 不満な点はあれど2008年の最高傑作。→ レビュー
2.チェスト! 少年映画の王道を行く爽やかさ。→ レビュー
3.ぼくのおばあちゃん 祖母を看取る優しい少年に涙、涙。→ レビュー
3.トウキョウソナタ カンヌも認めた少年の眼差しとピアノ。→ レビュー
5.青い鳥 吃音の教師と中学生の静かな交流が余韻を残す。→ レビュー
 次点(佳作4作品) 歩いても歩いても、アキレスと亀、その日の前に、火垂るの墓

2008年青輝賞・最優秀少年俳優賞
広田 亮平 「あの空をおぼえてる」「山のあなた」など子役として完成域に。
2008年青輝賞・新人少年俳優賞
御厨 響一 「チェスト!」の陰ある美少年役は、鮮烈な印象を残す。
2008年青輝賞・優秀少年俳優賞
高橋 賢人 「チェスト!」の主役。爽やか少年を熱演!
吉原 拓弥 「ぼくのおばあちゃん」の実質主役。素晴らしい演技でした。
井之脇 海 「トウキョウソナタ」の演技は柳楽優弥君にも決して劣らない。
吉岡 澪皇 「アキレスと亀」で北野武の子供時代を熱演。妖艶な美少年。
田中 祥平 「歩いても歩いても」のマイペース少年役が印象に残る。
2008年青輝賞・特別賞(シニア・ボーイ賞)
本郷 奏多 「青い鳥」「K-20」など高校生ながらも少年性を持続。
吉武 怜朗 「火垂るの墓」の清太役。やはり高校生とは思えない。

 

2008年少年映画大賞「青輝賞」・総評

■作品賞について

昨年は作品賞「該当なし」でした。今年も「なし」にしようかとも思いましたが、理想ばかり追求して敷居を高くするのは本意ではなく、その年のベストという意味で選出することにしました。

作品賞の「あの空をおぼえてる」ですが、観た時は非常にもどかしさが残りました。もう少しで素晴らしい作品になったはずなのに・・・何かひっかかる!その原因は主役を演じた広田亮平君の扱いが軽すぎるのでは、ということでした。(それが原因でトップクレジットの竹野内豊さんに反感すら感じました。)

しかし時間が経つにつれ、プロモーションがどうであれ、この映画は広田君が主演であることは自明であり、その主題自体が少年映画として優れていると考えるようになりました。両親、特に父親は、自分なんかどうでもよく、妹しか愛してないのでは?これは妹を持つ男性なら、子供の頃に誰しも1、2度は感じた事があるのではないでしょうか。

そんな、ある意味ベタなテーマを非常に嫌味なく、感動的に描いた作品だったと、素直に思うようになってきました。 また竹野内さんも、苦悩する父親を素晴らしい演技で演じており、下らない反感を覚えたことが、恥ずかしくてなりません。

今、DVDで観ても涙が出てきます。世間では失敗作のレッテルが貼られているようで、映画賞にノミネートすらされていませんが、私は自信を持って作品賞に値する映画だと思います。

■ベスト5 少年映画の条件とは

今年公開された映画で、純粋な意味で少年映画と言えるのは「あの空・・」、「チェスト!」、「死にぞこないの青」 だけでした。(あくまで私が鑑賞した中の話ですが。)純粋な意味とは、主役が少年で、色々な出来事を通して、一つ大人になって成長していくようなカテゴリーの映画です。

しかし、これも高望みせず、主役でなくても少年俳優がキーマンにはなっている作品も含めて、広義の意味で少年映画として、ベスト5を選びました。

「チェスト!」は、昨年まで多かった地方製作(鹿児島)の地元映画ですが、奇をてらうことなく正統派の少年成長物語が爽やかでした。今やテレビでは壊滅してしまった「ケンちゃん」、「はっちゃく」、「ずっこけ」シリーズのような良質の映画でしたね。

3位は「ぼくのおばあちゃん」と「トウキョウソナタ」を同列で選びました。この2作とも原作は少年主役のストーリーだったと聞きましたが、興行的な面から大人の話に変わっています。これを残念と捉えることもできますが、映画にしてくれただけでも感謝と、前向きに考えることにします。2作とも、少年俳優の熱演が非常に光りました。

5位は悩んだ末に「青い鳥」。少年映画というには年齢高めですが、作品の持つ静かなパワーは強烈でした。

少年映画の最低条件は、男女の色恋がメインではないということです。 (色気が1番の欲望になってしまったら、もう少年卒業と考えています。) もちろん、少年とて、年上の女性に憧れたり、クラスの美少女を意識することは当然ですので、サイドストーリーとして色恋の話があることは、スパイスになっていいと思います。ただ「小さな恋の物語」的なものが全て、という作品は評価できません。

「歩いても歩いても」、「その日のまえに」なども印象に残った作品でしたが、少年俳優の活躍度という点でやはり物足りない面がありましたので、次点扱いとしました。
「死にぞこないの青」は須賀健太君が頑張ってはいましたが、納得できない点(配役)もあり、選外にしました。

■個人賞について

最優秀少年俳優賞は、文句なく広田亮平君でした。これはもう9月頃には決めていたといっても過言ではありません。テレビでも活躍している子役さんですので、演技力には全く問題はありません。神木隆之介君のような「華」はないかもしれませんが、玄人受けする実力派子役ですね。

次に決まったのは、新人少年俳優賞の御厨響一君です。彼は久々に見る「胸キュン」子役さんでした。ここで「新人」とは、その映画で、主演・助演レベルの役を初めて演じた子役さん、と定義しています。(テレビや雑誌モデル暦などがあっても関係なしとします。)

優秀少年俳優賞は、映画ベスト5の作品を演じた少年俳優を順当に選出しました。
「チェスト!」の高橋賢人君は文句なし、「ぼくのおばあちゃん」の吉原拓弥君、彼も掘り出し者(こんな言い方で失礼ですが)でした。映画自体の出来がもう少し良ければ、と残念です。「トウキョウソナタ」の井之脇海君、眼力が素晴らしく、存在感も尋常ではありませんでした。(キネマ旬報 2008年新人男優賞、おめでとう!)

次点の佳作作品の中から、吉岡澪皇君は「アキレスと亀」で北野武さんの幼少時代を演じましたが、北野さんとは似つかない(失礼)美少年ですが、その無表情でシニカルな演技は、やはり北野さんそのものでした。また田中祥平君は「花よりもなほ」に続いて是枝監督作品に登場ですが、存在感が光っていました。

最後に、今年は特別賞としてシニア・ボーイ賞を設定しました。
少年俳優の定義は中学生まで、としましたので、「青い鳥」の本郷奏多君は高校生なので対象外です。でもそれでは自分自身でも納得できず、何とかと思って特別賞にしました。(年齢制限を上げればいいのですが、歯止めが無くなってしまうのも良くないと思い、中学生までという年限は堅持します。)

高校生になっても、少年性(見た目だけでなく、演技から滲み出てくる雰囲気も)を維持して、映画作品に登場した2人、本郷奏多君と吉武怜朗君に拍手を贈りたいと思います。池松壮亮君も「ダイブ!」などで活躍しましたが、既に青年の雰囲気でしたので、今回は外しました。

■最後に

今年は、ミニシアター系作品、地方製作作品の中に少年映画が少なく、狭義の意味の少年映画は本当に寂しくなってしまいました。また、マスコミだけでなく製作者側も少年主役では営業的に苦しいと決め付けて、少年主役作品にも係らず、脇役の有名俳優や少女俳優を使ってプロモーションするようになりました。

神木隆之介君や須賀健太君といったカリスマ的な少年俳優以外、日本のマスコミは、まともに取り上げてはくれません。この傾向は暫らく続くでしょう。どう打破していくか。

海外進出?かな。と言っても日本語しか話せない日本人少年がハリウッドや、韓国映画で主役なんて出来るとは思いません。海外志向の監督さん(是枝監督、黒沢監督など)の作品に出てもらい、海外で注目されるような少年俳優がどんどん出て欲しいですね。特にカンヌなんかは、少女俳優より少年俳優に好感を持たれるような気がしています。(あくまで勝手な想像です。すみません)

海外で好評を得ると、日本のマスコミは取り上げてくれます。(日本のマスコミの低レベルさなんですかね。すみません。独り言です。)今年の「おくりびと」、また「トウキョウソナタ」のように。おかげで井之脇海君も受賞ですし。

色々批判めいた事も書きましたけど、映画が大好きです。映画館に入るとトキメキます。2009年はどんな少年映画に出会えるか、楽しみです。


 

(雑感)2008年キネマ旬報の個人賞選考結果をみて

■キネマ旬報2009年2月下旬号から

青輝賞とは直接関係ありませんが、国内の映画賞の中でも最も古いキネマ旬報が、2008年、どのような選考をしたのか?は大変気になるところです。(2008年はもう第82回にもなる日本で最も古い映画選考だそうです。)

そこで参考になるのは毎年発刊される総決算号。ベストテン選出に参加した全ての審査員の投票内訳が公表されます。ただ、1冊1800円もするので毎年は立ち読みで済ますのですが、今年は思い切って購入しました。

作品ベストテンや主演男優賞などは置いといて、「青輝賞」と重なってくるのは「新人男優賞」だろうと思い、その選出結果を見てみました。

キネマ旬報採点結果


上の表は、キネマ旬報の選考者59名が1人1票を、2008年度新人男優賞、新人女優賞に投票した結果です。

■新人男優賞

男優賞は、井之脇君が順当な感じですが、吉武怜朗君がかなり健闘していたのは意外です。彼が主演した映画「火垂るの墓」は上映館も少なく、話題にもならず、興行的にもお話にならない作品でしたので、ここまで評価されるとは思ってもみませんでした。

井之脇君、吉武君が上位2名を占めた事は、私の「青輝賞」のコンセプトと一致する点もあるので、安心した訳ですが、「青輝賞」最優秀少年俳優賞の広田亮平君に票を投じた方が0名!であった事が残念でなりません。59名も審査員がいる訳ですから、1人くらい「あの空をおぼえてる」と広田亮平君を推す人がいてもいいのでは・・

なお、新人賞に推された16名の俳優のうち、少年俳優では田中祥平君に1票あった事がせめてもの慰めでした。

■新人女優賞

女優賞は、接戦になったようですが、甘利はるなさん。(男優賞が子役だったので、女優賞も子役になったのかと邪推)審査員がそれぞれ、ご自分のお気に入り女優を推薦したのでしょう、新人賞に推された女優は22名と、多彩な陣容が並んでいます。少女子役ではアヤカ・ウィルソン、吉田里琴さんに票が入っています。

ん!ん!吉田里琴さんって!?「あの空をおぼえてる」の妹役の子ではないですか!
確かに印象的な役でしたが、彼女に入れるなら、セットで広田君にも投票してくれればいいのに・・・
兄妹役で出演しながら、前回も妹役の子だけが受賞し、今回は兄が主役なのに、やっぱり妹役に・・・たった1票の差とはいえ、0と1ではかなり違います。

まあいい! キネマ旬報の審査員なんてこの程度ですよ。広田君の演技は後年きっと見直される時がくるでしょう! その時、彼を選ばなかった審査員は後悔しますよ・・・
(今は負け惜しみです。広田君ガンバレ!)

■該当なし これがキネマ旬報の審査員の現状・・いや限界

新人賞の投票結果で気になったのが「該当なし」 なんと10名もの審査員が新人男優賞に該当者なしと判断。女優賞該当なしがたった2名ですから、この差は何でしょう。

(ケース1)新人賞に該当するような男優が本当にいなかった。
今の日本映画界では、若手俳優は女優中心で動いているという意味でしょうか。これは仕方ないですねえ。若い女優が出ていないと興行的に厳しいのは洋の東西を問わないことですし・・・

(ケース2)審査員は新人男優に興味がない。
こっちが心配です。でも実情かもしれません。映画評論家も関係者も、次にブレイクしそうな女優を探すことに血眼なんでしょうか。「俺が彼女を1番先に見出したんだよ〜」なんて自慢するために、女優はしっかり観るが、男優はどうでもいいや・・・

「新人男優って?あんまり興味ないなあ・・カンヌ映画祭で評価高かったって聞いたし、俺は良く知らないけど井之脇海にしとこうか・・」こんな程度で投票した審査員もいるのかもしれません。

来年も新人男優賞に「該当なし」が続出するようなら、キネマ旬報も終りかなあ・・


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