2014年 青輝賞


少し復活の芽が見えてきたと喜んだ2013年でしたが、2014年は残念ながら、また低調な
年になってしまいました。

数多くのミニシアターや独立系の映画館が壊滅し、少年映画というよりも、映画文化全体
の壊滅の危機に陥ったといっても過言でありません。


海外では少年映画も多数製作されているようです、国内へ配給されることも激減しました。
海外作品部門の発表を復活しますが、あくまで参考とさせて頂きます。



2014少年映画大賞「青輝賞」・発表

2014年青輝賞・作品賞
ショートホープ 全編を貫く、少年の暗い眼差しが本当に印象的でした。

2014年青輝賞・少年映画ベスト5
1.ショートホープ 救いのない暗い世界の果てに、最後は光が見えます。→ review
2.僕はもうすぐ十一歳になる。 淡々としたストーリー展開の中で、少年の成長が垣間見える。→ review
3.もういちど 落語の世界を映画化。貞吉少年が本当に爽やかで健気!→ review
4.ハロー!純一 少年群像劇映画。主人公の純一が大活躍。→ review
5.チャリンコ レクイエム 学生映画の短編ですが、往年の名作「シェーン」を彷彿させる佳作→ review
 次点(佳作1作品) 瀬戸内海賊物語

2014年青輝賞・最優秀少年俳優賞
福崎 那由他 (12) 「もういちど」での爽やかな演技とその美少年ぶりにやられました。

2014年青輝賞・優秀少年俳優賞
竜跳 (12) 準最優秀少年俳優賞。とにかく眼差しの強さが素晴らしい。
濱田 響己 (12) 僕はもうすぐ十一歳になる。透明感のある演技が印象に残ります。
加部 亜門 (10) ハロー純一。子役歴が長いだけに、本当に安定した演技力はさすが。
鈴木 双嵐 (13) チャリンコレクイエム。芯の強い少年役を好演。(年齢は推定)

2014年青輝賞・特別賞 (シニア・ボーイ賞)
吉井 一肇 (15) ゲームセンターCX THE MOVIE。コミカルな演技を熱演しました。

2014年青輝賞・海外少年映画ベスト5(参考)
1.MUD マッド アメリカ映画。14歳、危ない年齢の少年の魅力。→ review
2.リアリティのダンス チリ・フランス映画。ホドロフスキー監督の渾身の1作。→ review
3.とらわれて夏 アメリカ映画。思春期の少年の思いが伝わる。→ review
4.天才スピヴェット フランス・カナダ映画。天才少年のロードムービー。→ review
5.6才のボクが大人になるまで アメリカ映画。12年間にも及ぶ少年の実成長記録。→ review

 

2014年少年映画大賞「青輝賞」・総評

■2014年最優秀作品賞「ショートホープ」

2014年は本当に少年映画が少なく、もうこの「青輝賞」の意味がなくなるのでは、なんて危惧していました。結果的には、何とかベスト5を選定できるだけの数がぎりぎりあったかな・・というところです。

最優秀作品賞は「ショートホープ」。本作品の対抗馬になるような作品が、残念ながら見当たらず、今年は迷うことはありませんでした。これはある意味寂しいことです。どれにしようか、困った、困ったと迷うほど、少年映画を見たいものです。(選ぶどころか、皆無になる方が現実的で・・怖いです)

「ショートホープ」について、レビューでは、一部の登場人物の設定に疑問を投げかけましたが、全体的には、ここ近来ないような、純度100%の少年映画でした。少し暗い内容ではありますが、いったい主人公の少年はどうなっていくんだろうか・・そんな焦りみたいな感情に包まれました。

主役を演じた竜跳君については、個人賞のところで述べますが、彼の眼差しが、ずっと印象に残ります。本当に少年俳優・竜跳君のための映画であるといって過言ではありません。

残念なのは、上映映画館が僅かしかないこと。本サイト客員のノースエンド先生の住まわれている札幌では、結局上映もされず。DVD化の情報もありませんので、本当にもったいないことです。なんとかDVD化されることだけは祈って止みません。

数ある国内の映画賞やランキングの中で、スポンサーにとらわれず、作品性で評価されると言われている「キネマ旬報」ですが、昨年度大賞の「あかぼし」は、キネマ旬報審査員が一人も見ていませんでした。

こんな情けない審査員しかいないなんて、と思っていましが、2014年映画ランキングには、数名ですが「ショートホープ」をランクインさせる審査員がいましたので、昨年よりは少しマシになりました。

くだらないメジャー作品ばかり上映しているシネコンで、1スクリーンくらい、こんな映画を常時上映するような英断をする経営者はいないのでしょうか。


■2014年少年映画ベスト5について

昨年2013年は久し振りに佳作作品が多くあり、ベスト7として枠を拡大したのですが、本年2014年は、またベスト5に逆戻り。しかもこのベスト5が、この年の少年映画の全て。たとえれば、入学試験で全員合格みたいなもの。(定員割れになるよりはマシか・・)

1位は、「ショートホープ」
(最優秀作品賞は自動的に1位となります。しかし逆に1位だからといって最優秀作品賞にはなりません。)

2位は、「僕はもうすぐ十一歳になる。」
昆虫採集が趣味だった10歳の少年と父。ある日突然、父が昆虫採集を止めるという。その意味が分からなかった少年が、ふとした日常のことから生命の大切さを理解する・・・こう書けば、少しキレイ事ですが、全体に緩い雰囲気で起承転結も少ない作品ですが、それが妙に心地よく、これも正真正銘の少年映画でした。「ショートホープ」以上に上映館は少なく、日本国民には幻の作品(大げさ?)になってしまいました。

3位は、「もういちど」
1位、2位はミニシアター系というか、ほぼ幻の作品状態ですが、本作品はシネコンでも上映されました(イオンシネマ系列の少数館)。落語の話ですので、主役である落語家の林家たい平さんの独壇場かと思っていたら、貞吉少年役の福崎那由他くんが大活躍。これも素晴らしい少年映画でした。ただ、映画の内容的には、もう一ひねり、二ひねり欲しかったところです。ちょっと健全過ぎますが、いい作品には違いありません。

4位は、「ハロー!純一」
本作品もシネコンで上映され、DVD同時発売(しかもそのDVDが安い!)というミニキャンペーンまであったのですが、興行的にはダメだったようです。映画冒頭の約10分の長回し、意欲的演出らしいのですが、これが大失敗。少年映画ファンの私でさえ切れそうになりました。見終わってみると結構いい作品だっただけに、冒頭部分の失敗が痛い。再編集したディレクターズカットDVDが欲しいところ。

5位は、「チャリンコ レクイエム」
これは、上映館云々以前の学生映画で、イベントでしか上映されません。大阪の中之島映画祭でたまたま出会った作品、おまけにDVDまで入手。学生映画とは侮るなかれ、青年と少年の関係が、往年の名作西部劇「シェーン」を彷彿させる佳作でした。ちなみこの第12回中之島映画祭のグランプリを受賞。大阪の観客の見る目は大したもの。これも何とか大勢の皆様に見て貰えるような環境ができないもでしょうか。

次点ほか
「瀬戸内海賊物語」を次点に入れましたが、これは基本的に100%少女映画です。少年俳優も出演しますが、その扱いは残念としか言いようがありません。同様に「円卓 こっこ、ひと夏のイマジン」も少女映画ですが、少年子役も活躍するそうです。でも見ていません。(DVD等で鑑賞し、判断が変わればまた来年度に修正します)

「ゲームセンター CX THE MOVIE」は、ゲームが主役ですが、なかなか面白く、成長した少年俳優の吉井一肇君も出演するのですが、やはり少し年長との判断で、少年映画のカテゴリーには入れませんでした。

あと残念だったのが、上映館がなくて見れなかった作品。「池島讃歌」、「あの日、ぼくらの大脱走 TWILIGHT FILE X」の2作品は、今後鑑賞できれば、また何らかの形で補遺する予定です。


■2014年個人賞について

最優秀少年俳優賞は、福崎那由他君
作品賞に選出した「ショートホープ」主演の竜跳君と、どちらを選ぶか本当に悩みました。作品では「ショートホープ」が1位なのですが、少年俳優としての魅力という点で、3位の「もういちど」の福崎那由他君が大逆転した形になります。最後の落語のシーン、本当にハラハラしながら見ていたのですが、きちんと演じ切りました。何か目に涙が見えたような気がするのです(実際には流していません)。それほど大熱演でした。この後、ミュージカル「黒執事」にも出演し、そのDVDも見たいところです。

優秀少年俳優賞は4名

竜跳(りゅうと)君。「ショートホープ」での堂々の演技は本当に立派でした。昨年の亜連(あれん)君と同じ、スターダストプロモーションの所属の少年俳優で、芸名も同じよう系統。とにかく少年とは思えない眼差しの強さが印象に残ります。セリフがやや単調だった事、父親が俳優の河相我聞さんで、映画出演には、その影響があったかもしれないこと、を勘案して、最優秀賞ではなく、準最優秀賞にしました。素質は素晴らしいので、是非また主演作品にめぐまれて欲しいものです。

濱田響己君。「僕はもうすぐ十一歳になる。」で、透明で純粋な感じの少年を演じました。舞台挨拶も聞かせていただきましたが、映画そのままの透き通るような声で、でもしっかりした受け答えに好感が持てました。なんとかメジャー系の作品に出演して全国区の少年俳優になって欲しいものです。

鈴木双嵐(そら)君。「チャリンコ レクイエム」で、ちょっとクセのある少年役を印象深く演じました。ずっとツンツン不機嫌な顔ばかりでしたが、最後の笑顔が印象に残ります。彼の情報は全く無いのですが、濱田響己君と同じように、なんとかまた別の作品での活躍を見たいものです。

特別賞は、吉井一肇さん
2011年の「エクレール お菓子放浪記」では、素晴らしいボーイソプラノと達者な演技で、中国で主演男優賞を受賞するなど、話題になりました。それから3年以上が経ち、思春期真っ只中の少年に成長。本作品では、ゲーム好きな中学生をちょっとコミカルに大熱演。ユニークな個性派の役者さんとして、大人になっても俳優を続けて欲しいものです。


■その他雑感。例によって「キネマ旬報」から

今年もまた「キネマ旬報」の2014年の映画を総括した決算号を読みました。審査員が選んだ全ての映画作品の一覧表と、新人男優賞の投票結果が気になるところです。

「ショートホープ」の選評で少し書きましたが、本年はマイナー作品も少しは見た審査員もいるようです。「僕はもうすぐ十一歳になる。」もほんの少しですが票が入っていました。(昨年の「あかぼし」も一人くらいは見て欲しかったのですが)

とはいえ、映画をろくに見ていない審査員、完全に素人同然の審査員も多いような印象は変わらず。結局スポンサーの影響を受けているのか、誰もが見るようなメジャー系の映画が上位に来るのは同じです。

新人男優賞は、東出昌大さんがだんトツでしたが、2位は該当者なしで、なんと9票も。3位は3票が数名並びますが、竜跳君に3票入っていたので、まだ救いはあるのかもしれません。「渇き。」で大熱演の清水尋也さんには、たった1票だけ。作品の評価が低いので仕方ないかもしれません。

毎年ボヤいているのですが、相変わらず新人男優賞「該当なし」が非常に多いのです。新人女優賞「該当なし」はたった1人だけ。新人賞というのは、将来性を見るために、審査員としては最も関心が高い賞だと思うのです。なのに簡単に「該当なし」としてしまうのは、映画に、ましてや男優には全く愛の無い方が審査員をされているのでしょうね。来年こそは「キネマ旬報」を読むのは止めたいところです。


■2014年海外作品ベスト5(参考)について

昨年2013年度は、海外作品を選ぶ事を中止しました。あまりに、海外の少年映画で国内に配給される作品数が減ったからです。決して作られていない訳ではありません。でも、やはり海外作品に全くコメントしないのは寂しいので、本年2014年度は暫定的に復活することにしました。

なぜ暫定的かといえば、今度は私(管理人)が、せっかく国内配給されたにも関わらず、見逃した作品も多く、ベスト5というには不正確かもしれないからです。たとえば非常に評価の高かった「悪童日記」はとうとう鑑賞できませんでした。そんな訳で、参考としてみて頂ければ幸いです。

1位は、「MUD マッド」(アメリカ映画)
少年と逃亡者の男の交流。アメリカ的なストーリーなのですが、どことなくヨーロッパ映画の薫りもあり、非常に気に入りました。せっかく国内配給されましたが、上映館も少なく、全く話題にもなりませんでしたが、DVDは発売されていますので、未見の方は是非ともご覧になって下さい。

2位は、「リアリティのダンス」(チリ・フランス映画)
異才の映画監督であるホドロフスキー氏の少年時代を回想した作品。少年役のイェレミアス・ハースコビッツ君が、なんともいえず印象的で、彼の表情にやられました。ただ映画的には暴力描写がひどく、後半は少年映画ではなくなったのが残念です。

3位は、「とらわれて夏」(アメリカ映画)
脱獄犯と少年の交流。1位の「MUD マッド」と全く同じようなストーリーですが、こちらはホームドラマ的な内容で、暴力表現もなく安心して見れました。少年映画としては2位の「リアリティのダンス」よりも上なので、悩みましたが、ややパンチ力に欠けるので3位にしました。でも差はありません。これも好作品です。

4位は、「天才スピヴェット」(フランス・カナダ映画)
天才少年がアメリカ大陸を横断するロードムービーなのですが、フランス映画なんです。天才少年役のカイル・キャトレット君は、実際にも天才少年らしく、これまた素晴らしい演技でした。おもちゃ箱をひっくり返したような3D映像も楽しく、これも必見作品ですよ。

5位は、「6才のボクが大人になるまで」(アメリカ映画)
1人の少年を7才から19才まで、12年間も撮り続けた話題作で、本年2014年の米国アカデミー賞にも多数ノミネートされました(結果は助演女優賞のみ受賞)。主役のエラー・コルトレーン君の頑張りに賞をあげたいのですが、彼自身はあまり評価されていないようなのが残念です。米映画にしては長時間なので、じっくりDVDで見るのもいいと思いますよ。



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