アイヌモシリ (2020年)

少年映画評価 8点
作品総合評価 7点(劇的な要素はないけれど静かで心に染み入る)
少年の出番 100%(完全な少年映画)
お薦めポイント アイヌの血を引く少年の鋭い眼差し
映画情報など 2020年製作。BD/DVD未発売。
(写真は下倉幹人君)


2019年にアイヌ新法(アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律)が成立。2020年にはウポポイが開館。アイヌの方々への関心が広がってきました。新型コロナウイルス騒動がなければ観光客も急増していたかもしれません。

そんな中で本作はひっそりと公開。ホームページでみた主役の少年。鋭い視線が頭を離れません。アイヌの少年が主役の物語なんて私には初めて。日本でヒットを狙うならば少女を主役にすべきところ。
(※アイヌモシリの最後の「リ」は小さな「リ」になっています。アイヌ語で北海道を指すとの事。)

死んだアイヌの人が暮す村へ続くという伝説の穴があった。少年は死んだ父を見た...
■ストーリー

主人公は14歳のカント(下倉幹人)。母は阿寒湖アイヌコタンで土産物店を営む。父は1年前に亡くなった。カントはアイヌを格別には意識しないようにしていた。ある日、亡父の親友だったデボ(秋辺デボ)にアイヌの伝説が残る山に連れていかれた。そこで檻に入った1頭の仔熊を見せられ、お前が世話をしろと。カントは喜んだ。

大切に世話するカント。そこへ思いもかけない事を知らされる。アイヌの祭りイヨマンテを数十年振りに復活。その祭りで仔熊を向こうの世界へ送る(殺す)のだ。反発するカント。しかしアイヌの人々にとってイヨマンテの持つ意味。また亡父の思いを知るうちに...

■イヨマンテ

2020年のNHK朝ドラ「エール」は作曲家の古関裕而がモデル。その楽曲の中の♪イヨマンテの夜はちょっとしたブームに。壮大でロマンチックな印象でしたが、実際のイヨマンテとはこんなお祭りだったのですね。仔熊を殺すとは...映画でも動物愛護の観点から反対意見もありました。

でもちょっと。近年各地で熊の被害が発生しており、最終的には駆除(殺害)されています。それとどこが違うの? イヨマンテであの世に送る熊は仔熊。それも可愛がって可愛がって育てた仔熊でないといけないそうです。これは確かに育てた少年にとっては残酷。

仔熊は可愛がって貰ったという記憶だけを持って神の世界に行くそうです。殺された記憶は忘れて。それでまた人間の世界はいい所だと思って帰ってくる。この辺りの事はよく判りません。間違っていたら申し訳ありません。

■とにかく少年の目が素晴らしい

主役の下倉幹人君。カントは本名。特に美少年という訳ではありませんが、強い目力と顔が本当に魅力的。14歳という大人一歩手前の色気もたまらないのです。映画の半分近くはカント少年の大写し。監督さんやカメラマンもそれを意識したのだと思います。

しかしごく普通の中学生。バンドのボーカルをやっていて歌もなかなか。ボソボソっと喋るセリフも本作では印象に残ります。そして何よりも礼儀正しい。ひとりで朝食の後、手を合わせて「ご馳走さま」。こんな中学生が本当にいたら日本も捨てたものではありません。

北海道の阿寒湖アイヌコタンで暮す中学生。
(アイヌ特産や土産物店がならぶ観光地)
母と一緒に進路懇談。カントはこの町を出たいと。
(母親役はカントの実の母親。音楽関係の仕事を)

カントは同級生とバンドをやっている。
(ごく普通の中学生。歌もなかなか)
亡父の親友デポに連れられて行った山の中で。
檻の仔熊と出会った。デボはこれが目的だった。

仔熊の可愛さに一目惚れしたカント。
毎日世話を始めた。檻の外には出せないけれど。
イヨマンテで大切な仔熊が別世界へ。
カントは成長した。顔つきが厳しくなって...


※後記
こんな話を聞きました。アイヌ民族は先住民でかつては北海道から沖縄まで。大陸から渡来人がやってきて日本の真ん中を占領。アイヌ民族は南北の端っこに追いやられたとか。南方系、北方系の違いはあっても沖縄とアイヌの方々は確かに似ている気がします。顔の彫りが深い。ヨーロッパ系も入っているのでしょうか。本作の秋辺デボさんなんかは完全に欧州系の顔立ち。







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