消しかすの花 (2020年)

少年映画評価 A+
作品総合評価 A
少年の出番 100%(短編ですが堂々の主役)
お薦めポイント 静かな作品。子供でもこれだけの演技ができるとは
映画情報など 2021年東京青春映画祭グランプリ他、受賞多数。
(写真は陣 慶昭君)


八王子ShortFilm映画祭を皮切りに、おおぶ映画祭、東京青春映画祭、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭など次々と出品されおてり、なんとか見たいと思っておりました。2021年10月の京都国際映画祭のオンライン上映でついに鑑賞することが叶いました。

たった18分の短編ですが、主役の陣 慶昭(じん よしはる)君と少女役の松瀬吹蕗さんの二人の目だけの演技にやられました。説明的なセリフは全くなし。目と表情だけで子供でもこれだけの演技が出来る。日本映画の若手監督のこれからの活躍に期待。

イツキと前の席の少女。ふだんは口も聞かなかった。でも少女はイツキを助けてくれた。
(微妙な感情の交差を、二人の子役は素晴らしい表情で演じていました)

小4のイツキ(陣 慶昭)はテスト中に消しゴムのカスでふざけているところを先生に注意された。イツキは「やったのは自分だけでない」と友達の名前を先生に言ってしまった。次の日。イツキが登校すると机の上には大量の消しかす。イツキは黙って掃除。それが毎日続く。嫌がらせだった。

ある朝、机の上には消しかすを丸めて作ったネコがあった。次の日は星、音符と続く。誰だろうと朝早く登校したイツキ。前の席の少女がイツキの机にばらまかれた消しかすを丸めていたのだった。イツキは翌朝さらに早く登校して消しかすを丸めて花を作り、少女の席に置いた。二人の間に会話はない。でも...

 嫌がらせも大変なことで。もっと他に力を使いなさいよ

嫌がらせをしているのはイツキと仲の良かった友だちばかり。先生にチクった裏切行為とはいえ小学生の友情なんてこんなもの。しかし毎朝毎朝、早く学校に来て消しゴムをこすって大量のかすを作るなんて。消しゴムももったいないし、労力も大変。暇なガキどもですなぁ。

でもイツキは悩みながらも登校。毎朝黙って机を掃除します。このあたりは大したもの。休み時間のドッジボールではイツキがターゲットにされますが、それでもメゲずに参加。これを見ていた前の席の少女がこっそりとイツキの味方になってくれました。(下手すると自分もイジメの対象になるのに...)

 消しかすの花とは

イジメられる前から、イツキは花壇の隅に咲いた小さな花が好きでよく見ていた。それを冷やかされたりしながらも。でもある朝、連中が消しかすを作っている現場を見たイツキは、腹立ちまぎれにその花を踏みつけた。何回も何回も。

次の日。登校したイツキは窓辺で牛乳ビンに活けられた花を見つけた。イツキが踏みつけた花だった。(植物は結構強いのですね。踏みつけられたくらいでは..) 前の席の少女はいつも朝早くきて窓辺の花の世話をしています。彼女がしてくれたのでしょう。

それをみて今度はイツキが消しかすで花を作り、少女の席に置いたのでした。有難うの意味を込めて(もっと深い意味もあったのかも)。二人がこの後どうなっていくか...まあ子供ですから。彼女は無口でクラスでも目立たず、友だちもいないのかもしれません。そんな彼女がイツキを助けてくれました。

18分でこれだけをまとめるのは本当に大変です。邦画メジャー作品はどれもダラダラと2時間近くありますが、本作品を少しは見習って欲しい。


イツキは花が好きだった。花壇の隅っこの小さな花。
女みたいと冷やかされ。そんな様子を彼女も見ていた。
テスト中ふざけていたら、先生に注意された。
これが不幸の始まり。でも大切な事を知るきっかけでも...


机にぶち撒かれた消しゴムのかす。気持ち悪ぅぅ...
(でもこれだけカスを作るのはご苦労な事で)
休み時間のドッジボール。イツキは集中的に狙われた。
(仲間はずれにされるよりはいいのか...)


朝早く教室へ来てみると、イジメ連中が集まって
消しゴムをこすっていた。イツキは走って教室を出た。
ある日、消しかすを丸めた星が置いてあった。
(消しかすを集めて何かを作るの、私もやりました)


別の日。教室へ来てみると前席の少女がいた。
彼女が作ってくれてたんだ...
イツキは消しかすを集めて花を作った...心をこめて。
彼女はその花を手に取った。


おまけ。東京青春映画祭でW受賞の快挙!
最優秀男優賞の陣君とグランプリの小池匠監督。


※後記
短編作品はそれだけでBDやDVDには出来ないでしょう。でも何とか他の作品と一緒でもいいのでメディア化して欲しいところです。いい作品はBDやDVD画質で手元に置いておきたいものです。(BSやCSでハイビジョン放送でも構いません)







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