風の又三郎 (1957年)

少年映画評価 6点
作品総合評価 5点
少年の出番 100%(名作映画)
お薦めポイント 傷だらけのフィルム。でも美しい白黒映画。
映画情報など 1957年公開/DVD発売中


言うまでもなく、宮沢賢治氏の代表的作品。誰でも知っている国民的な小説の一つだろうと思います。過去に実写映画化されたのは、戦前の1940年、今回紹介する1957年の2回だけ。

1989年に「風の又三郎 ガラスのマント」という作品がありますが、これは宮沢賢治氏とは別作品と考えますので、除外しています。詳細は、レビューをご覧下さい。

■ストーリー

もう、言わずもがな、でしょうけれど、ごく簡単に紹介します。岩手県のある村に、高田三郎(久保賢さん※後述)という不思議な少年が転校してきた。三郎が何かすると、必ず風が吹いてくる。村の子供たちは、彼のことを「風の又三郎」と呼んだ。

同学年の嘉助は、三郎の事が気になって仕方がない。ある日、三郎や子供たちは、競走馬の牧場へ行った。馬を怖がる三郎。それを見た嘉助がはやしたてる。三郎は反発し「それじゃ競馬をしよう」と提案。みんで馬を走らせるうちに、嘉助と三郎の馬が、柵から逃げ出してしまった。馬を探すうちに雨になり、森に迷った嘉助。どうしよう。

もうろうとなった嘉助の目に飛び込んできたのは、ガラスのマントを着て空を飛ぶ三郎の姿だった。そして、三郎と馬が現れた。助かった。短い夏が終り、二百十日の台風がやってきた。三郎のことが気になる。次の日の朝、学校へ行くと、もう三郎はいなかった。

■東映児童映画
復刻版DVD(東映ビデオ)

本作品は、東映児童映画として、主に学校や公民館等で上映されたとのことです。50分足らずの低予算映画ですが、この時代の映画は、撮影、脚本、音楽が本当にしっかりしています。

しかし残念な事に、フィルムの保管などは雑に扱われたようで、この作品のDVDに収録された映像も傷だらけです。戦前の作品でも、商業映画なら、ずっと美しい映像が見られるのですが。この東映児童映画シリーズは、他にもかなり製作されたそうで、できれば全シリーズをDVD化して欲しいものです。

■又三郎を演じた久保 賢さんとは

当時「久保賢」という芸名で子役デビューしていましたが、後に、山内賢さんと芸名を変更されました。惜しくも故人となられましたが、二枚目俳優の山内賢さんです。

さすがに、若い頃の山内賢さんの映画などは、全く知りませんが、あの「はっちゃくシリーズ」の先生役は記憶に残っています。でも、この又三郎役の少年に、あの先生の面影がありますかね。
(※追記)惜しくも山内賢氏は2011年にお亡くなりになられたとの事です。

■昭和の時代考証の参考に。

原作の風の又三郎は、大正末期から昭和初期の物語ですが、本映画が撮影されたのは1957年(昭和32年)。出演している子供達のヘアスタイルは、その当時のものと考えていいのではないでしょうか。

全員丸刈りですよ、又三郎でさえ。私の持っている風の又三郎のイメージは、少しカールした巻毛風のヘアスタイル。しかも天然で少し赤みがかっている、ヨーロッパ風少年でした。なので、この又三郎の丸刈りには違和感がありました。戦前1940年製作の映画もそうですが。これは仕方がないのですかね。そういう時代でしたから。

この平成の時代になって、戦前戦後が舞台の映画が作られますが、子役が普通に長髪にしています。バリカンで刈上げた、いわゆる「坊ちゃん刈り」ならまだしも、平成丸出しのツンツンヘアーでは、やはり興醒めです。本作品を見て勉強して下さいね。

もう一つは、川で泳ぐシーン。当時は水着なんてないですから、泳ぐ時は、当然下着で泳ぎます。下着は褌が標準。ごく一部のハイカラ(死語ですね)な子供が、白いパンツ(トランクス風)をはいている程度。

何と、全く下着をつけない子も当り前にいたようです。裸でも恥ずかしがる様子は全くありません。これが普通だったのでしょう。ただ、子供たちの姿が、あまりに自然でリアル過ぎて、宮沢賢治作品の持つファンタジー性とかけ離れてしまった感じも受けます。

裸シーンなど不要ですので、出来れば、又三郎の服装とヘアスタイルをもっとカッコ良くして欲しかった。(私のわがままですので、無視して下さい。)





▼イーストエンド劇場へ戻る   ▼少年映画第3部へ戻る