はだしのゲンPART3 ヒロシマのたたかい (1980年)

少年映画評価 5点
作品総合評価 5点
少年の出番 100%(主役)
お薦めポイント 主役を演じた原田潤君の歌とダンス
映画情報など 1980年公開/DVD発売中
(写真は、ゲンを演じた原田潤君)


実写映画の第3段。これで3部作は一応終了。原作マンガは、まだまだ先がありますが、映画化される見込みは無さそうです。ところで、このレビューを書いている時(2013年8月)「はだしのゲン」閲覧規制問題がマスコミを賑わせています。

私は原作を読んでいませんので、何も言うことはありません。きちんと全部読んだ方々が、色々なことを言うのは、いいと思うのですが、全く読みもしないマスコミや政治家の方々(反対派も賛成派も)が、それぞれのプロパガンダだけで、決め付けつけるのは考えものです。この問題はここまで。

オープニング。原田潤君が女の子を従えて歌とダンス
■ストーリー

被爆から生き残った元(原田潤君)、母(丘さとみさん)、弟代りの孤児、隆太(林泰文さん)、赤ん坊の妹、の4人のもとへ、予科練に出征していた長男(桜木健一さん)、疎開していた次男(大栗清史さん)が帰ってきた。

広島にも進駐軍がやってくる。「男は全員キンタマを取られる」との噂に怯えた元と隆太は、陸軍の武器庫跡地から拳銃をみつけ、いざとなったら身を守るため、拳銃を隠す。食糧難で母の乳が出ず、栄養失調の妹。元と隆太は、浮浪児仲間と一緒になって米軍倉庫から食料を盗み出す。

しかし、いつの間にか、戦争帰りの軍人2人(ヤクザ)が、浮浪児たちのボスになっており、元たちが命がけで盗んできた食料を横取りされる。これに怒った元は、ヤクザに怒鳴り込むが、逆に半殺しの目にあってしまう。隙をみて逃げた隆太は、隠してある拳銃を持って、元を助けに行き、ヤクザ2人を射殺!してしまった。

わずか7歳にして殺人犯になってしまった隆太。もう元たちの家には戻れない。そのままヤクザの世界に入る。(凄い話ですね。警察は全く機能せず。)その後も、赤ん坊の妹が誘拐される事件が起る。なんとか帰ってくるが、原爆症で栄養失調の妹は1歳を迎えることなく、この世を去ってしまった。泣き崩れる元と母。ここで映画は終る。

■当時の人気子役・原田潤君がフィーバー!

これまでの2作は、今一つ、ゲン少年が主役というわりには、扱いが軽いというか、どこか線の細さを感じていました。ところが本作では、当時の人気子役(ドラマ「熱中時代」で主題歌を歌うなど)だった原田潤さんを起用し、まるで人気アイドル並みの扱いとなりました。

オープニング。「戦争なんかキライだよ!」との叫び声とともに、原田君の主題歌で始まります。女の子のダンサーを従えて。これが「はだしのゲン」と何の関係があるの?との疑問も。しかし映画の内容は原作に忠実です。人気子役にも係らず、頭を剃って丸坊主の熱演でした。

ただセリフは、常に叫ぶような口調でしたので、演技力があるのかは不明です。(原作マンガがそんな調子だったので、仕方ないかもしれません)そして圧巻は最後の歌。妹の友子へ捧げるバラード

友子の「友」は友だちの友。友だちが沢山できるようにと、僕が付けたんだ。なのに死んでしまった。ともこ、ともこ、ともこ、と泣き声で歌い上げるのです。小学生が。演歌歌手の森進一さんも顔負けの歌唱力です。これにはビックリ。

■その他のキャストについて
わずか7歳で殺人犯に

もう一人印象に残ったのは、隆太役の林泰文君。この子に殺人をさせるか(はあ〜)。林泰文君と言えば、大林宣彦監督に見出され、大林ファミリーの重要な一員として数多くの大林作品に出ているのですが、その前にこんな役を演じていたのですね。

その他、テレビ番組で見た事のあるような子役さんが大勢出ています。今回は「子役様」扱いで、前作までのように、いきなり裸になるようなシーンはなく、子供の人権も大切にしているようです。

大人の俳優で、一番違和感があったのは桜木健一さん。17歳には見えません。頭も丸刈りにせず長髪のまま。旧海軍は長髪でよいとの話を聞きますが、それはあくまで偉い人の話。予科練は全員丸刈りです。(実際に予科練に行かれたという方の話を聞いたことがあります)

母役の丘さとみさん、前作の宮城まり子さんよりは、合っていたと思いますが、やはり1作目の左幸子さんがベスト。父親役も第1作の三國連太郎さんにはかないません。その他、タモリや故・赤塚不二夫さんは単なる話題作りだけでしょうか。これは第2作も同じ。もうちょっと真面目に作って欲しい気もします。

最後に気になるのは、次男役を演じた子役さん。主人公のすぐ上の兄なのに、あまりに影が薄い。ちょっと可哀想な感じです。演じた俳優さんは、大栗清史さんだと推定しているのですが、もし間違いであれば、掲示板へでもご指摘下さい。

これで実写映画のレビューは終りですが、TVドラマ版も、どこかでレビューを書ければと思っています。





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