ウホッホ探検隊 (1986年)

少年映画評価 6点
作品総合評価 5点
少年の出番 80%(準主役クラス)
お薦めポイント 淡々としながらも味のある兄弟
映画情報など 1986年公開/DVD発売中


干刈あがたさんの原作を丁寧に映画化。もう30年以上昔の作品になりますが、最近、スカイパーフェクTVで何度かリピート放映されています。その昔に原作小説を読んだ事があり、ありふれたホームドラマのような題材でしたが、映画の方が印象に残っています。田中邦衛さんも十朱幸代さんも若かったなあ。

■ストーリー

榎本和也(田中邦衛さん)は、ある企業の研究員で単身赴任中である。妻の登起子(十朱幸代さん)は、2人の息子と3人で暮らしており、彼女もまた雑誌のライターとして仕事を持っている。

ある日、登起子は夫の和也から、大変な告白を受けた。「単身赴任先で愛人が出来てしまった。2人の人生のことを考えると離婚して欲しい」(セリフだけ聞くと、とんでもない「自己中心的な男」ですねえ)

登起子は悩み、長男の太郎(村上雅俊君)と次男の次郎(本山真二君)に打ち明けて相談する。2人の兄弟は、家にいない父に不満を抱きながらも、父の事は大好きだった。

太郎と次郎も悩みながらも、母のことを考えて、離婚に同意する。登起子もこれでふっきれて、3人だけで新たな家庭を築こうとスタートする。そして、けじめのために最後に家族4人で会う事にするが、その席で和也から、またも勝手な告白を受ける。「あの人とは別れちゃったんだ」私に文才がありませんので、このオヤジ!なんて奴だ!みたいになってしまいしたが、実際にはなんとなく憎めない空気なんです。

■単なるホームドラマなんですけど

ストーリーをこうやって文章にしてみると、こんなもの映画する必要もなさそうに思います。しかし脚本は森田芳光さん。後に映画「家族ゲーム」でブレイクする監督です。独特の空気感というか、間合いというか、ピリっとしたキレを感じる作品でした。

2人の息子を演じた少年俳優、何ともいえない味わいがありました。長男を演じた村上雅俊君は、思春期を迎えた中学生。変声わりこそしていませんが、鹿のように細くてしなやかな身体で「成長期の少年」が身体全体からにじみ出ていました。

小説では、長男は時々冷たいナイフ目になって母を見つめる。という記述がありましたが、このナイフ目を小説通りに演じれていたのも立派です。単なる反抗期の少年をステレオタイプ的に演じるのではなく、本当は父も母も愛しているけど照れくさくて。というようなリアルな演技が出来る少年俳優でした。

弟役の本山真二君、小学校低学年ですが、彼も達者な演技でした。幼い、純真な少年という単純な演出ではなく、この年齢の少年の持つ独特な不思議性?をうまく出していました。一見幼いだけみえるけど、実は深い洞察的な目を持っているのでは、と思わせる言動、表情が素晴らしい。

田中邦衛さん、十朱幸代さんという大物俳優だけでなく、キーとなる2人の少年俳優のキャラクター設定や演出に、決して手を抜かず、しっかりと演技指導したのではと思います。そのため、単純なドラマにもかかわらず、余韻が残り、色々と物語がふくらんでいくような印象を残せたのではないでしょうか。

翻って、本年(2009年)の事を考えますと、何本か少年俳優主演の映画が作られましたが、主演ではあっても主役ではなかった作品ばかりでした。少年俳優のキャラクターの掘下げが甘く、ステレオタイプ的な「少年像」しか作っておらず、いくら出番が多くても、何にも残らない。脚本家や監督さんは勉強して欲しいものです。





▼イーストエンド劇場へ戻る   ▼少年映画第3部へ戻る