童謡物語 (1988年)

少年映画評価 6点
作品総合評価 5点
少年の出番 90%(ほぼ主役)
お薦めポイント のどかな風景と童謡
映画情報など 1988年公開/ビデオ発売終了


■吉村昭氏原作小説の映画化

吉村昭氏といえば「戦艦武蔵」「零式戦闘機」「海の史劇」といった歴史小説、戦記小説の大家ですが、こんな児童映画の原作を書いていたとは、今回このレビューを書くに当たって調べてみて初めて気がつきました。原作は「養蜂乱舞」という小説です。関係ありませんが、カンヌ映画祭で最高賞パルムドールを受賞した「うなぎ」の原作も吉村昭氏だそうです。

■ストーリー

養蜂家の有島俊一は、妻の弘子と、息子の覚(雨笠利幸君)を連れて、毎年九州から北海道までお花畑を追って移動する生活をしている。春、長野県の田舎に滞在していた覚は、村の小学校へ転校する。よそ者を受入れない風土のため、覚は学校で孤立するが、同級生の少女、由子とだけは仲良くなる。

彼女は、父が蒸発し、母が働いているため、祖母と二人暮らしだった。父達は、村のレンゲ畑やリンゴ園を借りて養蜂作業を始める。トラックが脱輪して窮地に陥ったところを助けて貰ったりしながら作業を行うが、自然破壊などもあり、思うように進まない。

ある日、養蜂仲間だった男が訪ねてくるが、彼は妻子を捨て、ある女性と蒸発するが、トラブルからその女性を殺害してしまったと言う。しかし、父達の説得で、男は自首することになり、話は一段落する。やがて、覚にも別れが訪れる。せっかく仲の良くなった由子が、家庭の事情で転校する事になったのだ。覚は、由子への思いなどを童謡にして見送ることにした。

■雨笠利幸君

主人公の覚少年を演じたのは、雨笠利幸君です。少しぽっちゃりした感じの少年ですが、映画やTVにもかなり出ているベテラン子役でした。

同じ1988年に製作された宮崎駿アニメの「となりのトトロ」で、声優を演じたそうですので、セリフなどは非常に安心して見ることができる少年俳優だったと思います。

申し訳ありませんが、私は宮崎駿アニメは殆ど観た事がありません。国民的なアニメなんですけれど、少女が主役ばかりみたいで。「火垂るの墓」は何度も見ていますが、これは宮崎作品ではありませんでしたか。

TV番組では「思いっきり探偵団覇悪怒組」のメンバーの1人として出ていたのを覚えています。ちょっと地味な感じでしたけど。

■文芸的な児童映画について

80〜90年前半にかけて、結構このような児童映画が製作されたようです。「マタギ」(82)、「次郎物語」(88)、「タスマニア物語」(90)、「仔鹿物語」(91)など。

これらの作品は、本当に地味な内容ですが、しっかりと演技力のある子役とベテラン俳優が脇を固めており、サラっと作られているように思います。

最近では、動物を主体にした映画は何本も作られていますが、主役が少年俳優から、少女や女優に変わり、動物をダシに感動や涙の押売り(少し言いすぎかな)になっているようです。

おかげで、これらの映画は結構、興行的にいい数字を出すようです。もう「童謡物語」のような地味な原作モノは、製作されることはないかもしれません。一旦、化学調味料で刺激に強い料理に慣れてしまうと、天然のままの味付けというのは、口に合わなくなるのと同じ。





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