四万十川 (1991年)

少年映画評価 7点
作品総合評価 7点
少年の出番 95%(主役)
お薦めポイント のどかな四万十川の自然
映画情報など 1991年公開/ビデオ発売終了


■戦後まだ貧しかった時代

「戦後」という言葉がまだ抜けない昭和30年代初頭、豊かな自然に育まれながらも、貧しいくらしの中で、成長していく少年の姿を描いた佳作。

■ストーリー

高知県の四万十川沿いで小さな食料品店を営む家族。父親は生活のために出稼ぎに出ているが怪我をして入院する。主人公は5人姉弟の次男篤義(あつよし/山田哲平君)彼は子猫を可愛がるやさしい少年。

その優しさが災いするのか、小学校では苛められる立場。しかしクラスの中で一番苛められている少女、千代子には同情以上の想いを持っている。

ある日、クラスの中で物が無くなり、千代子に濡衣をかけられた時、篤義少年は自分が盗ったと身代りになるが、その行為が、実は千代子にとっては屈辱的だと言われて、落ち込む。

また、別の苛められっ子の親友が、苛めた相手に復讐した時も共犯の濡衣をかけられるが、やはり親友のことを思って一緒に罰を受けたりもする。

そんな時、篤義少年が最も慕う姉の朝子が、村を出て町へ働きに出ることにショックを受ける。さらに台風で川が氾濫したり、父親が再度出稼ぎに出るなど、別れを通して、篤義少年は一つ一つ成長して大人になっていく。

■山田哲平君

主人公を演じたのは山田哲平君。少しタレ目で朴訥な感じの山田君は、この映画の主人公になるために存在していたのか、と思うほど適役でした。

いつも憂いを帯びた目をして、何かに悩んでいるような容貌は、貧しい家庭の中で健気に生きる少年そのもでした。しかし一瞬でもいいので、子供らしく心の底からの笑顔も欲しかった。

同じ年に、映画「仔鹿物語」にも主演しており、こちらも田舎で暮らす少年の役でしたが、やはり同じように笑顔の少ない少年でした。

演技はしっかりしており、子役といいながら安心してみれる立派な俳優さんでしたので、成人された後はどうしているのでしょうか。いい俳優になっているといいのですが。

■元祖、昭和少年ものブーム

この「四万十川」が作られた前後には、昭和の戦前から戦後を舞台に、少年が主役の映画が何本か作られました。

既にレビューを書いた「少年時代」「白い手」など、他にも名作小説の映画化「次郎物語」「泥の河」などがあります。(本サイトでもレビューしています。)

どれも決して派手な作品ではないですが、じっくり腰を落ち着けて「少年」をしっかりと撮っており、今からみると少年映画の全盛時代だったのかもしれません。今また、昭和モノが撮られていますが、「三丁目の夕日」がヒットしたことの、二匹目のどじょう狙いや、単なるノスタルジー的な感じがします。

また。少年が真の意味で主役である作品が少ないのも不満です。「狼少女」は良かったですけれど。昔のように地に足のついた脚本でしっかりした少年映画を撮ってほしいものです。





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