1993年の映画ですが、すっかり忘れていました。掲示板に投稿があり、そう言えば、そんな映画があったなと思い出した次第です。その後、少し前にノースエンド先生から頂いた資料の中に、本作品のチラシがありました。(札幌松竹遊楽館という映画館で、一般1400円という料金が懐かしい)
早速、Amazonで中古VHSビデオを購入。VHSデッキを持っていませんので、知人から借りて鑑賞。同時にDVDにコピーしておこうと思ったのですが、ガードがかかっていて録画できず。仕方なくUSB経由でパソコンに取り込みましたが、映像が乱れて不安定でどうにもなりません。
(なので、本レビューのキャプチャー画像の画質はよくありません)
小学4年生の良二(源啓介君)は、1年前に母を亡くし、父は離婚していないので親戚の家で暮している。母の死から自閉気味な上に、親戚からも可愛がられていない。
良二には15歳年上の兄(緒形直人さん)がおり、良二の境遇をみかねて、一人暮しのアパートに引き取ることにした。自分の殻にこもる良二に「何がしたい?」と聞くと、「スペインのベンポスタへ行って暮したい」
実は生前の母とベンポスタの子供サーカスを見た事があった。母はベンポスタで暮す子供達に感動し、良二に「お前も」と話したことが頭に残っていたのだ。若くて生活も苦しい兄だったが、良二の夢をかなえようと一大決心し、お金を工面して良二をスペインへ送り出す事にした。
良二と兄はスペインへ渡り、現地の日本人通訳(原田知世さん)の助けをかりてベンポスタへ入ることができた。兄が帰国する日、不安になった良二は泣いたが、兄は突き放す。一人になった良二。しかしスペインを始め世界から来た子供たちは、良二を優しく迎えてくれた。
スペイン人少年の親友も出来た。彼の家に招待され、一緒に釣りをしたり、家族の結婚式に呼ばれたり。良二はどんどん明るくなっていった。これらの事を良二は兄に手紙を書いた。何度も何度も。またサーカスの練習も重ね、日本公演のメンバーに加わることになった。1年振りの帰国だ。
仲間と一緒に日本公演にやってきた。兄は会場で良二を待っていた。しかし良二は挨拶しただけで、仲間と去っていく。肩透かしをくった兄は少しがっかり。でもその夜。兄の狭いアパートに良二が一人でやって来た。「ただいま」いきなり泣いて兄に飛びつく。本当は兄に会いたくてたまらなかったのだ。
やがてサーカス公演の日。良二は人間ピラミッドの頂点に立つ見事な演技を披露した。兄に、亡き母に、家族に、素晴らしい演技を見せることができた。
たった10歳で、言葉も通じないスペインへ行き、サーカス団の生活に飛び込むなんて。これは映画の世界だからと思っていたのですが、実際に日本人の子供が何人も所属していたとの事です。
教会の神父様が、恵まれない境遇の子供たちを集めて共同生活を行う組織は、世界中にあるようです。有名なのが、映画にもなったアメリカの「少年の町」。ベンポスタもシルバ神父が創設され、サーカス公演を財源として活動されていたようですが、神父様は最近逝去されたとの事。
しかし、このような「子ども共和国」も、どんどん減少しており、残っている組織はごく僅かになっているとの事です。経営問題でしょうか。子どもへのセクハラなんて嫌な話もあったようです。(ベンポスタ以外の事ですよ!)
本作品の良二には、あまりセリフはありません。小さな声でボソボソと話すシーンが多く、あまり上手とは言えません。しかし源啓介君の表情がずっと印象に残ります。思いつめたような瞳、涙、最後ははじけるような笑顔。
スペインが舞台のシーンでは、まるでヨーロッパの少年映画のようですが、源啓介君はスペインの風景にしっくり馴染んでいるのです。日本的ではあるのですが、やや彫りの深い顔立ちですので、ジプシーの少年といっても通用しそうです。
一方、スペイン人の少年達も美少年揃いでした。みな髪の毛が長いので、少女か少年か判らないのには困りましたけれど。スペインでの友情物語をもう少し多く描いてくれたら、なんて思います。