天まであがれ!! (2006年)

少年映画評価 8点
作品総合評価 5点
少年の出番 100%(主役)
お薦めポイント 鈴木達也君のぶっ飛び演技
映画情報など 2006年公開/DVD発売済


■地方映画の宿命

典型的な地方振興映画でした。浜松の伝統や街並み紹介が半分、ドラマが半分といった感じです。ドラマ部分は、まあそれなりにまとまってはいましたが。

■ストーリー

東京にいた天馬少年(鈴木達也君)は、パイロットだった父を事故で亡くし、故郷の浜松へ転校してくる(本当に地方映画ワンパターンの展開)。浜松の小学校になかなか馴染めないが、ある日、浜松伝統の凧作り名人の老人と出会い、日本一の凧作りをめざす中で、地元に溶け込んでいくが、事件が起こる。

■鈴木達也君

主役は「狼少女」の鈴木達也君。狼少女では、少し気弱な少年役でしたが、今回は転校生ながら気が強いというか、考えるよりも先に行動してしまう「はっちゃけた」少年役です。

冬でも昔ながらの(少し裾は長いけれど)半ズボンで、ちょうど丸で昔のTVドラマの「あばれはっちゃく」の主人公のような少年で、なかなか面白い役でした。

お姉さんにアイドルの佐津川愛美さん、凧作り名人に宍戸錠さんと、しっかりした役者が引き締めていました。この鈴木君含めこの3人だけのシーンは、非常に出来が良かったと思います。

ところが、地元の素人子役が出てくる学校のシーンなどは学芸会以下の出来かな。またスポンサーに吉本興業が入っているせいか、序盤に全く受けないギャグみたいなシーンがいくつかあり、かなり引いてしまいました。

■浜松映画祭

06年6月、映画は浜松だけで公開されました。当時は東京にいたのですが頑張って浜松まで行きました(一泊して浜松観光とセットで)。舞台挨拶もみましたが、宍戸錠さんが貫禄をみせて仕切っていましたね。

鈴木君は、司会のお姉さんの質問に、お姉さんの方へしっかり顔を向けて誠実に回答している姿はいいのですが、やはり沢山来て頂いた観客の方へ顔を向けて応えて欲しかったですね。(その辺はこれから)

さらに同年9月には浜松映画祭というのがあり、何と「狼少女」と「天まであがれ!!」の2本が公開される事になり、幼くして鈴木君が映画祭の主役になってしまいました。

それでまた浜松に寄りました。大阪への帰省に浜松で途中下車。映画祭のオープニングイベントが、ZAZAシティというスーパーの広場みたいなところで始まりましたが、集まったのは僅か数十人程度。(浜松映画祭なのに映画文化が根付いているか疑問。浜松の人は冷たいのかな)

鈴木君が「天まであがれ!!」の横山監督と、続いて「狼少女」の深川監督と、2回連続でトークショーが始まり、興味深く鑑賞しました。深川監督が「鈴木君を見つけたのはこの僕です」と、横山監督を少し挑発していたのが笑いを誘いましたね。(もちろん受け狙いで発言されていたのでしょうが)

また、映画にも出演された地元浜松の町衆の方々でしょうか、揃いの半纏を着た貫禄のある年輩の方々がおられたのですが、トークショーの後、鈴木君が一人でその方々の前にやってきて、ぺこりと挨拶をしたのが印象的でした。きちんと挨拶できるのは子役ながら大したもんだと、感心した次第です。

■その後

「天まであがれ!!」は今年2007年夏に、東京でも下北沢で単館公開されたそうですが、全国公開はなさそうです。(DVDは最近発売されました)私の評価では、作品の出来は「天まであがれ!!」は「狼少女」には遠く及びません。ただ、これは種々の地方映画の制約があったせいで、横山監督の能力とは関係ないと思います。

鈴木君、佐津川さん、宍戸さんの3人だけのシーンは秀逸であり、横山監督には是非もう一度少年映画を撮ってもらいたいものです。





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