MAZE(南風) (2006年)

少年映画評価 6点
作品総合評価 6点
少年の出番 100%(主役)
お薦めポイント 鯨を見ながら召される少年
映画情報など 2006年公開/DVD発売中


■高知県を舞台にしたご当地・少年映画

いわゆる地方の町おこしに映画を利用するのか、それとも逆に、お金のない制作者が地方予算や人的支援を期待して映画を作るのでしょうか、この手の映画が毎年作られます。今年も鹿児島県が舞台の映画「チェスト!」がありました。どれも全くワンパターン。どうしてこんなに似た作品ばかりになるのでしょうか。

しかしながら、このワンパターンは嬉しいパターンなんです!なぜか少年が主役で、派手さはありませんが、昔ながらの少年映画が楽しめるからです。

■ストーリー

交通事故で両親を失った少年裕太(大沼健次郎君)は、高知県に住む祖父の弦次郎(蟹江敬三さん)に引き取られる。(地方映画のお決まりパターン) 裕太の両親は、弦次郎の反対を押し切って駆落ちして結婚したため、弦次郎から勘当されており、孫の裕太と会うのは葬儀の日が初めてだった。

そんな複雑な感情を抑えて、弦次郎は裕太を立ち直らせようと愛情を注ぐが、裕太はなかなか心を開かず、学校でも孤立しで苛められる。事故以来、水を怖がる裕太に、弦次郎はとうとう荒料理に出る。漁船で沖へ連れて行き、海へ放り投げてしまう。

元々は水泳の得意であった裕太は泳ぎを思い出し、祖父の弦次郎にも、学校の友達にも徐々に心を開きはじめ、幸せな生活を取り戻したかに見えた。そんな時、また不幸が襲う。実は裕太は幼児の時に骨肉腫に罹り、一旦は治癒していたのだが、それが再発してしまったのだ。

弦次郎は「なぜこんな小さな子供に次々と不幸が襲いかかるのか!」と嘆きながらも、しっかりと裕太を見つめ、彼が大好きな鯨の姿を見せるため、死に瀕した裕太を船で連れ出していく。

■主役少年を演じた大沼健太郎君

最後は難病で亡くなっていく少年を見事に演じきりました。特に目を引く美少年ではありませんが、自然体で肩の力が抜けた演技でしたので、ワンパターンのストーリー展開とはいえ、映画に没頭することができ、最後はかなり感動しました。

この映画は東京は銀座のシネパトスという古い映画館で、東京公開の封切日に観ました。半地下構造の映画館入口では、20人程のささやかな列が出来ており、それに並んでいると、大沼健次郎君もやってきました。最初は全く判りませんでした。

その辺にいる全く普通の子供でしたので、観客の一人にしか見えませんでした。この映画関係者と思われる人が話しているのを聞いて、この子も関係者かな、と疑問を抱きながら館内へ。東京公開日という事で舞台挨拶が行われましたが、舞台に現れたのは先ほどの少年でした。舞台の上で改めてみると、小さくても役者というオーラが見えたのは不思議です。

■蟹江敬三さん

舞台挨拶の続きですが、有名俳優の蟹江さんも舞台に立たれましたが、そのお姿もよく見れば、先ほどの入口の列で見かけていたのでした。非常に地味な服装をされておりましたので、同じ目線で見た時は、蟹江さんと気がつきませんでした。でも、さすがに舞台の上では大物俳優のオーラ(これは本当)が溢れていました。

映画の中でも、蟹江さんのような演技派の俳優が一人おられるだけで、ストーリーがピシっと引き締まっており、ともすれば学芸会風になってしまいそうな素人少年映画には不可欠なキャストだと思います。しかしながら、蟹江敬三さんも映画で主演クラスは、この「MAZE」が初めてとの事らしいです。まだまだ頑張って渋い演技を見せて欲しいものです。

(追記)
残念ながら蟹江敬三様におかれましては、2014年に逝去されました。ご冥福をお祈りいたします。このところ、本サイトでも、こういう訃報を書くことが多くなりました。生きている限り寿命は宿命ですが、寂しいものです。





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