早咲きの花 (2006年)

少年映画評価 6点
作品総合評価 6点
少年の出番 80%(実質主役)
お薦めポイント 戦火に散った幼い友情
映画情報など 2006年公開/DVD発売中


■若い少年少女たちへの鎮魂歌

このレビューを書く2日前、国内最大の大地震が発生しました。まだ被害の全体概要は明らかになっていませんが、大変な災害であることは間違いありません。こんな時に少年映画のレビューなんか書いていていいんだろうか。悩みました。でも、不謹慎かもしれませんが、こんな時であっても、こんな時であるからこそ、普段通りにしたいと考えました。

ただ、どうしても明るい映画を取り上げることは出来ません。ずっと以前に買ったままで鑑賞していなかった本作品のDVDを初めて鑑賞し、戦争と災害という違いはありますが、若い少年少女への鎮魂歌ともいうべき本作品をレビューしたいと思います。

■ストーリー

女性写真家の植松三奈子(浅岡ルリ子さん)は、持病から早晩に失明することを宣告される。目の見えるうちに、一生忘れられないい光景をもう一度目に焼き付けたかった。そこは豊橋市。彼女が幼い頃、疎開した町だった。

豊橋で撮影を続けるうちに、ふとした事で三奈子は若い高校生の男女と知り合いになる。三奈子は若い彼らに触れるうちに、幼い時に経験した悲劇をどうしても彼らに伝えたくなった。

そして物語は昭和18年に遡る。幼い真次(鈴木駿君)と三奈子の兄妹は戦火の東京から親戚をたよって豊橋へ疎開してきた。ひ弱な都会っ子の真次は、当然のように地元の悪ガキに苛められる。

そんな中、貧乏で多子家庭の同級生・達夫(米谷真一君)が病気になった事をきっかけに無二の親友となった。達夫のおかげで真次は町に馴染んでいき、逞しく育っていく。

しかし戦況は悪化。中学生に進級はしたものの勤労動員の毎日。そして終戦まであと1週間という運命の8月7日が訪れた。真次らが勤務する豊川海軍工廠が空襲された。まだ幼い勤労少年、少女を含む2500名以上の尊き命が失われた。そして真次と達夫も命を落とした。幼い三奈子の目の前で。

■豊かな地方都市情緒たっぷり

主役は浅岡ルリ子さんです。そして現代の明るい豊橋の街並みが随所に出てきます。有名な豊橋市公会堂や路面電車も。話は脱線しますが、路面電車が出る映画はそれだけで、私にはポイントUPです。路面電車オタク!

しかし物語の中核をなす昭和のエピソードは、鈴木駿君が押しも押されぬ主役です。映画「少年時代」と殆ど同じような展開が続きます。ただ鈴木駿君。最初にみた時はあまりに貧相な少年なので、ちょっと主役はどうなんだろうか、と危惧しました。

母親は美人、妹(後の浅岡ルリ子さんな訳ですから)は超美少女。その兄なのに、こんなに冴えない感じでいいのかな、なんて不謹慎なことを思った訳です。

洗濯板のような胸、細長い手足、本当に戦争中の飢えた少年そのもの。その少年が必死になって戦時生活を生き抜いていく、その姿に打たれました。最後は、親友の達夫を助けようとして、自分も被弾してしまいます。多分そんな事だろうと展開は読めましたが、DVDを見ながら思わず「早よ逃げんかい」と叫んでいました。(興奮すると大阪弁になります。)

舞台挨拶。ヘアスタイルで少しイケメンに

この真次が、ジャニーズ系の美少年なら、こんなに感動することはなかった。本当に昭和を生きたリアルな少年俳優だったからこそ、ある意味ワンパターンな脚本にも係らず、残るものがあったんだろうと思います。

さて最後に、いつものボヤキです。本作は残念ながらパンフレットを入手しておりません。なので監督やスタッフの裏話などはDVD付録の特典映像しか知りません。

ここに収録されたメイキングやインタビュー。肝心の実質主役の鈴木駿君が全くスルーなのは、どういうことでしょうか。

映画の中で一番頑張ったのに、メイキングもインタビューも殆どなし。監督さん、これはひどいじゃありませんか。と毎回恒例のように思うのです。もう諦めてはいますが、一応書いておきます。





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