Little DJ (2007年)

少年映画評価 7点
作品総合評価 5点
少年の出番 95%(主役)
お薦めポイント 神木君の少年期末期の静かで深い声
映画情報など 2007年公開/DVD発売済


■神木隆之介君の少年時代最後を飾る作品

幼い頃からTVや映画に出演し、子役の中でもカリスマ的な人気を誇ってきた神木隆之介君。この映画の撮影は、変声期に入り、顔の輪郭もたくましくなった14歳くらいでしょうか。少年俳優として最後の主役作品かなと思っていました。

■ストーリー

映画は、あるラジオ局の女性デイレクターの回想で始まる。スランプに陥った彼女は、少女時代に入院していた少年の事を思い出した。野球少年だった高野太郎(神木隆之介君)は、試合中に倒れて病院へ。検査の結果、白血病であり、親戚が勤める海辺の病院へ入院する。

当時、病名は告知されず、太郎は気楽な療養と思っていた。退屈しのぎに病院内を探検していると、放送設備を備えたスタジオを発見。勝手に入り込み、ディスクジョッキーの真似事を始めた。そこへ院長先生がやってきた。太郎の病気を知っている院長先生は、スタジオを使って院内放送をする事を許可した。

太郎は、院内のリクエストを募り、趣向を凝らしたディスクジョッキーを始めた。最初はそれを煩く思う患者もいたが、次第に太郎の誠実な話ぶりに、みんながファンになっていく。そんなある日、事故で少女(福田麻由子さん)が入院してくる。この少女が、冒頭のラジオ局ディレクターだった。

太郎と少女は同じ病室(思春期なのに男女同じ部屋?)。二人は急速に親密になっていく。しかし運命は残酷で、そんな幸せも長くは続かない。ある日、太郎は自分のカルテを見てしまい、不治の病である事を知る。太郎は沈み込むが、ある決心をする。

ある日、少女と太郎は病院を抜け出して映画を見る。太郎は自分の決心を伝えようとするが出来ない。そのまま歩いているうちに嵐に合い、雨宿りのまま一晩を過ごす2人。一方、太郎の家族は大騒動だった。翌朝、太郎は戻るが、容態が悪化。とうとう帰らぬ人となった。

最後の場面は、大人になった少女が、位牌を拝んだ後、太郎の部屋へ入れて貰い、当時のままの遺品の中から、ある葉書を見つけるのだった。それは。

父の背中で
■神木隆之介君

神木君に関しては、ここで何も言うことはありません。この作品でも、子役として完成された(され過ぎた)演技力を発揮しており、集大成と言ってもいい演技だったと思います。特に、彼の声の出し方が素晴らしかった。力まず、投げやりでもなく、静かな迫力あるセリフは心に染み入ってきます。

またビジュアルも14歳という年齢では、見る角度によっては、もはや少年らしさの無い容貌になってしまう筈ですが、カメラの人が頑張ったのでしょう。どの表情も素晴らしく映りのいいカットばかりでした。そんなに素晴らしい神木くんなのに、残念な作品でした。

■なぜ凡作になってしまったのか。

誤解のありませんよう、本作は失敗作とか駄作では、決してありません。平均点はクリアしておりますので、未見の方はDVDで是非ご覧いただくようお願い致します。ただ「神木君の少年期最後の主演作品」と私が勝手に決め付けているのですが、その期待が大きすぎただけに、失望も大きかった訳です。

たまき役の福田麻由子さんの問題。彼女は太郎より1歳年上の少女役ですが、容貌もセリフも演技力も、年上には見えません。あまりにも軽すぎるのです。浮ついているのです。神木君のせっかくの静かな迫力が、彼女の存在で消えてしまうような感じがするのです。

あ、これは福田麻由子さんを責める訳では決してありません。この役はミスキャストじゃないかと思っているだけです。彼女はすごくチャーミングで可愛く、守ってあげたい可憐な少女役が似合うと思います。「年下の男の子」がテーマですから、ある程度お姉さんに見える少女、例えば成海璃子さんなどが良かったのではと思います。

そもそもラブストーリーは必要でしたでしょうか。神木君1人に徹底的に焦点を絞った脚本にして欲しかった。原作があるのですから、変えるのは無理かもしれませんが。

もちろん、ちょっと憧れるような少女がいるのは必要ですが、神木君にトレンディドラマのような愛だの恋だのを演じさせれるのは、却って不自然だと思うですが。死ぬ事がわかると、あの年頃ならどう思うのでしょうか。恐怖、大人になってやりたかったこと、なりたかった職業、父母のこと、友達のこと。

病院の屋上で。野球少年だった。でも少年同志の友情については一切描かれず

そんな事が全部できなくて、短い人生の幕を下ろしてしまう少年。この葛藤をモチーフにした方が、感動したように思います。ラブストーリーなんかは、これから青年になる神木君は、腐る程演じるのでしょうから、少年期最後の作品は、少年性を追求して欲しいのが本音でした。

いつも人の作品にケチばかりつけるのは気が引けます。監督さんもスタッフさんも一生懸命、いい作品を作ろうと大変な努力をされているのに、申し訳ございません。最後にもう一度。色々書きましたけれど、本作は少年映画として素晴らしい作品である事には間違いありません。





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