バッテリー (2007年)

少年映画評価 6点
作品総合評価 6点
少年の出番 100%(主役)
お薦めポイント 林君のピッチングフォームは迫力満点。
映画情報など 2007年公開/DVD発売中


先日(2013年6月)、鎗田晟裕君が出演するミュージカル「作者をせかす六人の主人公たち」のレビューを書きましたが、鎗田君が出演した映画「バッテリー」のレビューを、まだ書いていないことに気がつき、遅ればせながらですが、書くことにしました。

■ストーリー

主人公は、12歳の少年、原田巧(林遣都さん)。リトルリーグで豪腕投手として全国大会準優勝。しかし病弱な弟の青波(鎗田晟裕君)の療養のため、母の実家である岡山県へ引っ越してきた。

この地で、キャッチャーの永倉豪(山田健太さん)と知り合った。これが運命の出会いだった。巧の速球を初めてキャッチできる捕手がいたのだ。二人はすぐに親友に。地元の中学に入学し、野球部に入部する。飛びぬけた技量を持つ巧であるが、真っ直ぐで、やや寛容性に欠ける性格ゆえ、先生や先輩と衝突を繰り返す。

そして、とうとう先輩部員からリンチを受ける。この暴行事件の発覚で、野球部は活動停止となってしまった。この処分に納得できない監督の戸村先生(萩原聖人さん)は、無断で、県の強豪中学野球部と練習試合を設定した。巧のピッチングを期待してのことだった。

しかし練習試合で、巧は速球を投げる事が出来ない。捕手の豪を信用できないのだ。超中学級と言われる4番打者にホームランを浴びてしまった。しかしここで、無断試合を聞いて駆けつけた相手中学の監督が試合を中断させる。巧と豪の信頼関係は崩れた。巧には消せない記憶があった。小学生最後の決勝戦。剛速球で三振を取ったが、捕手が後逸し、その間にランナーがホームイン。

エラーをした捕手は責められた。彼は一生傷つくだろう。豪にはそんな思いをさせたくない。しかし巧は間違いに気づく。豪はそんな弱い人間ではない。二人の信頼は戻った。そして練習試合の再開も決まった。今度こそ実力を見せてやる。そんな時に弟の青波が入院することになった。さあ、試合はどうなるのか。

■女性が書いた「スポ根もの」ですが、爽やかです。

原作は、あさのあつこ氏の人気小説。残念ながら私は未読ですが、根強いファンが大勢おられるそうで、脚本は本当にしっかりしています。

バッテリーと言えば、漫画「巨人の星」の星飛雄馬と伴宙太、「ドカベン」の里中智と山田太郎の関係を思い出しますが、これら男性作家(漫画家)の作品と、あさの氏の作品は、微妙に違いがあります。

男性作家の力点は、あくまで野球の勝負であり、バッテリー間の友情はその道具の一つでしかありません。一方、本作品では、野球の勝負よりも、バッテリー間の友情(もう少し進んだBLかも)に力点が置かれているように思います。男性視点で見れば、野球という部分で、やや物足りないかもしれません。

■出演者の熱演には感動しますが、違和感も

公開当時に鑑賞したにも関らず、本作品のレビューをなかなか書けなかった理由の一つに、出演者に関する違和感があります。中学入学を控えた12歳の少年たちが主人公と聞いていましたので、期待して観たのですが、随分と年長の方ばかりだったこと。

主役を演じられた林遣都さん。体形はスレンダーなのですが、顔も声も高校生にしか見えません。言葉にいい表わせないのですが、林さんには、少年性を感じないのです。そうではなく、昔の日活、東映などのニューフェイス(私もよく知りませんけれど)としてデビューしたような、大人の華やかさを感じます。

でも運動神経と野球。特にピッチングフォームの素晴らしさは必見です。全速力で走るシーンの美しさも素晴らしい。12歳という設定でなければ、彼が最適のキャストだったと思います。

豪を演じた山田健太さん。彼も味があるのですが、どう見ても高校生ですね。同級生少女役を演じた蓮佛美沙子さんも、どう見ても中学生には見えませんでした。この辺り、演技力を求めると、年齢が上になるのは仕方ないのかもしれません。

■鎗田晟裕君のデビュー作品

さて、この作品が映画デビューとなった鎗田晟裕君ですが、ひたすら可愛いだけでした。あまり活躍の場がなく、病弱という設定が本当に残念でした。顔も身体も小麦色の健康そのもの。お風呂場の窓から声を出すシーンも腕白少年そのもの。なので、病院のベッドで寝ているシーンには違和感を覚えます。

ただ野球のシーン。これはいけません。これまでキャッチボールというものをしたことが無いのでしょうね。肘が上らない、完全なお嬢さん投げでした。私が子供の頃は、こんな投げ方をする子供は殆どいなかったのですが、今はサッカーしかしないのでしょう。

鎗田君のシーンで一番印象に残るのが、兄の巧がリンチを受けて帰って時、玄関で無言で見つめる鎗田君の目。何か別人のような表情でした。但しこのシーンは進展せず、このカットだけ。もう少し兄弟の無言の会話、心の会話シーンを入れてくれればよかったのですが。

お風呂の窓から笑顔で
暴行を受けて帰ってきた兄。見つめる弟

それにしてもいい表情をします。映画公開当時、関西ローカルのテレビ番組で映画の紹介がありました。コメンテーターの一人の勝谷誠彦さん(自ら「少年好き」を公言する評論家)の発言が印象に残ります。

(他の出演者から「林君は勝谷さんの趣味でしょう?」と聞かれて)「いや、俺は、弟役の方がいい!」と断言。何がいいのかは知りませんが、きっと光るものを感じられたのでしょう。鎗田さん、今はどうされているのでしょうか。いい俳優さんになって欲しいもの。





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