その日のまえに (2008年)

少年映画評価 5点
作品総合評価 7点
少年の出番 40%(主役の息子兄弟)
お薦めポイント 重松清さん原作、大林ワールド
映画情報など 2008年公開/DVD発売中


2008年11月9日、Movix京都(京都)にて。時おり雨がぱらつく肌寒い秋の日曜日、京都まで行って観てきました。公開2週目にして上映回数が大幅減なので不人気なんでしょう。今日もガラガラでした。色々なサイトで散々に批判されていましたので、全く期待していませんでしたが、意外に拾い物でした。

この作品、大林ワールドを濃縮して詰め込んだ缶詰でした(森永チョコボールの景品「オモチャの缶詰」。あれ欲しかったなあ)。あの〜ええ〜と、そういう訳で、言いたい事が山のようにあります。でも書き出すとキリがないので、ここではサラっと書くだけにしておきます。

花火を見る母と息子たち。右の大谷燿司君、巨泉さんの面影ありますね
■ストーリー

デザイン事務所を営む日野原(南原清隆さん)は妻(永作博美さん)が不治の病で余命僅かになり、2人の息子(大谷燿司君、小杉彩人君)には隠したまま、そっと最後を過ごそうと決意する。そして二人が暮らした町、若かった頃の思い出を訪ねて歩く。

やがて息子たちも、うすうすと気づくなか、青春の思い出とともに、静かに、そして幸せに人生を終えていく

■重松清氏の原作を大林監督は、おもちゃ箱のように演出

重松清氏の小説がベースで話は進んでいきます。これは終始1本筋が通っているのですが、その映像や心象表現は完全に大林ワールドに置き換わっています。ヒロインの永作博美さん、彼女だけはネットでも評価する意見が多かったようですが、熱演はハマリ役でした(彼女はこれ以上言及しません)。問題は南原清隆さん(ナンチャン)です。

南原さん、セリフは素人臭さが耳につきましたが、意外に顔がいいんですよ。男前とかそういう意味じゃなく、味わいのある役者さんの顔をしているんです。最近亡くなられた緒方拳さんを彷彿とさせる感じで、これからお笑いなんか止めて本格的に個性派俳優の道を歩まれたらと思いましたね。

2人の息子役、兄の大谷耀司君、弟の小杉彩人君が非常に良かった。この2人が存在することで映画に深みがあったと、自分は思っています。特に弟の小杉君が本当に可愛くて、こんな息子を残して早折する母親の無念さはどうでしょう。

ただ不自然といえば、兄は既に中学生も後半くらいなのに、父と兄弟の仲が良すぎるのです。
・今時、中学生にもなって父親と弟と3人で狭いお風呂に入りますか?
・中学生にもなって、父親を真ん中にして兄弟が3人で1つのベッドで寝ますか?
でも、こんな親子がいてもいいなあ。

その他、宮沢賢治氏の童話の世界や、いろいろな話が錯綜するのですが「あの夏、とんでろ、じいちゃん」に出ていた子役の厚木拓郎君が大きくなって出ているのです。ストーリーには絡みませんが、何回も何回もシンボル的な役柄で。(大林監督のお気に入りなのかもしれません)

<追記>

兄役を演じた大谷耀司君。実はあの大橋巨泉氏(といっても知らない世代が多いかも)のお孫さんとのことです。マスコミでは全くといっていい程、話題にもなりませんでした。これは大谷君にとっては、いいい事かもしれません。祖父の七光りでちやほやされる事なく、役者として進むならば。(ただ、大橋巨泉氏のブログを読むと、ゴルフ選手を目指すようなことが書いてありましたが。)

しかし昨年(2011年)の映画「奇跡」では、マスコミは樹木希林の孫娘の話題に集中。ひょっとすると主役のまえだ兄弟よりも多いくらい。もちろん彼女の場合は、祖父も祖母も両親も話題の人物ですので、仕方ないかもしれません。(同じ孫でもねえ)





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