ぼくのおばあちゃん (2008年)

少年映画評価 7点
作品総合評価 6点
少年の出番 70%(ほぼ主役)
お薦めポイント おばあちゃんと少年の涙の交流
映画情報など 2008年公開/DVD発売済


絵本が原作の心温まる小品。「ぼくのおばあちゃん」いかにも子供の作文のようなタイトルですが、洋の東西、今昔を問わず、おばあちゃんという響きはノスタルジックなものです。よく似たストーリーやお話はあるかもしれませんが、ここでは現代文明の道具(ビデオ)が薬味を効かせています。

■ストーリー

村田智弘(岡本健一さん)は住宅販売セールスマン。ある日のマイホーム商談で、老父を老人ホームに追いやって自分達だけのマイホーム相談が。智弘は喜ぶが、ふと頭をよぎったのは優しかったおばあちゃん(菅井きんさん)のこと。ここから話は子供時代へとスリップ。

幼児時代の智弘伊澤柾樹君)の父は病気がちで、母は看病のため、智弘の世話はおばあちゃんの役目。やさしくて、何でも知っていて、そして芯は昔の武士のようにしっかりした、素晴らしい女性だった。<智弘とおばあちゃんは恋人同志のように、いつも一緒だった。

やがて父は病死。中学生になった智弘(吉原拓弥君)は思春期に入りおばあちゃん離れしていたが、ある日、おばあちゃんが癌で、余命が僅かであることを知る。おばあちゃんを自宅で看取ることを決意した智弘は、おばあちゃんが寂しくないよう、昔の思い出写真を貼ったり、懸命に介護をする。

当時高価だったビデオカメラが商店街のくじ引き景品である事を知り、商店街の知り合いを回って抽選券を集める。しかし全部ハズレ。おばあちゃんの姿を記録しようと、どうしても欲しかったのに。当選したのは同級生の少女(神様は残酷ですなあ)。でも少女は智弘にビデオを譲ってくれた。そしておばあちゃんの最後の時を。(この少女は、後に智弘の妻に)

ここで現代に戻り、智弘は久し振りに実家へ。おばあちゃんの遺品を見つめるうちに、見た事のないビデオテープを発見。それには、おばあちゃんが智弘の目を盗んで、こっそり遺言のように記録したメッセージが録画してあった。(それは都合が良すぎるのでは)そのメッセージを見た智弘は泣き崩れる。

舞台挨拶にて
■中学生を演じた吉原拓弥くんの熱演に大きな拍手です!

主役は菅井きんさん。これはもう文句のつけようがありません。はまり役です。大人の智弘を演じた岡本健一さん、幼児時代を演じた伊澤柾樹くん、この2人も良かったとは思いますが、吉原君の熱演の前には少し影が薄いでしょう。

こんなに優しくて、真剣に介護してくれる孫に最後を看取られたおばあちゃんは、ある意味幸せです。まあ現実的には、こんな中学生はいないでしょうけれど。

もう、本当に、吉原君はこの映画の実質的主役でした。なのに、パンフレットやプロモーションでの扱いの軽さは、どうなんでしょう。上の写真左側は、この映画のチラシ(ポスターもDVDも同じデザイン)ですが、吉原君がどこにいるか判りますか?

右上の片隅に、虫眼鏡で見ないと分らないほど、自転車を押す小さな学生服の姿があるだけなんですよ。これでは可哀相ですね。まあチラシやポスターなんかどうでもいいでしょう。映画を見れば、吉原君の活躍は自明ですから。是非皆様もレンタルでも結構ですので見て下さい。ちょっと優しい気持ちになれるのではと思います。

■ちょっと蛇足〜当時の体操服

まあ、どうでもいい話なんですけど。20年くらい前の中学生が体操服にスパッツを履いているのはどうでしょう。ちょっと時代的に合わないのでは、と思います。と思っていたら、別の映画「おっぱいバレー」。ほぼ同じ時代の中学生役の少年俳優達の中に吉原君もいて、当時にふさわしい体操服を着ていたので、安心しました。この辺のちょっとした演出や服装にも気を使って欲しいものですね。


(補足)鑑賞時の映画日記から

2008年12月20日、テアトル新宿(東京)にて鑑賞。月曜の朝1番に東京で仕事があるので日曜前泊でいいのですが、土曜から東京に入りました。(東京の汚い空気も離れると恋しくなるものです。)せっかくなので、大阪ではまだ上映していない「ぼくのおばあちゃん」を観ました。

新宿は靖国通り沿い。どんどん古い映画館が無くなる中、テアトル新宿はしっかり残っています。ここは好きな映画館の一つ。最前列の席を指定したのですが、今日は開始前にトークショーがあるとのこと。原作者、脚本家、主演の岡本健一さんの3名が出演されるのですが、その割には席はガラガラです。

私はよく知りませんが、岡本健一さんといえば、女性達が群がる超一級のアイドルだったと思っていましたが、最近では少し露出度が減っているのでしょうか。(それでも席の前の方は、ファンと思われる女性が占有。男性である自分は浮いていたかもしれません。)この映画のプロデューサーが司会となり、3名へのQ&A形式のトークショーは15分ほどで、あっさりと終了です。

さて、映画の出だし部分は今一つでした。これは失敗かなと思いましたが、子供〜少年時代の回想に入った時点で、映画に引き込まれました。

結論。今年ベスト3に入る少年映画でした。この映画の実質の主役は、主人公の中学生時代を演じた吉原拓弥君です。いやあ〜彼は素晴らしい演技です。泣かされました。ちょうど声変りに入りかけた年代の、柔らかい笑顔、泣き顔、優しい眼差しが、本当に魅力的でした。おばあちゃんを演じた菅井さん、彼女をまるで恋人のように介護し、そして最後を看取る中学生、こんな優しい少年は現実にはいないでしょうね。

ネット等の情報によれば、撮影について吉原君は「監督に厳しく指導されてメゲた」という感想を漏らしているようですが、その厳しさは確実に成果となって現れています。監督さんの単なるイジメだったのかも知れませんが、厳しく指導して貰うことは、いいことだと思います。

ここまでは映画を褒めてきましたが、吉原君のパート以外は、出来は今一つかもしれません。大人になったサラリーマンを演じた岡本健一さんも熱演は認めますが、サラリーマンに今一つ現実感がありません。(カッコ良すぎて地に着いていない。凡人サラリーマンの僻みですけど。)

少し残念なのは、パンフレットもポスターも、実質主役の吉原君の扱いが小さいことです。(無視されているのか?とさえ思いました。)菅井きんさんと吉原君の交流部分だけなら、今年1番の感動作品になったかもしれません。でも文句を言っても仕方ありません。この映画を作ってくれた方々に感謝です。





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