エクレール お菓子放浪記 (2011年)

少年映画評価 8点
作品総合評価 5点
少年の出番 100%(堂々主役)
お薦めポイント 吉井一肇君の素晴らしいボーイソプラノ。
映画情報など 2011年公開/DVD発売中
(写真は素晴らしい声の吉井一肇君)


2011年6月19日、テアトル梅田(大阪)にて鑑賞。全くノーマークの作品でした。当サイトと相互リンク先の「ハローキッズJP」さんのサイトに紹介があったのは知っていたのですが、少年俳優が脇役でちょっと出ているんだろう、くらいに思っていました。

だって、エクレアですよ、お菓子放浪記ですよ。女性が主役の映画だって思うじゃありませんか。雰囲気としては、蒼井優さんみたいな個性派女優のイメージがするじゃありませんか。

ところがフタをあけてみると、200%少年映画でした。ハローキッズさん。信用してなくてごめんなさい。(※追記。ハローキッズさんはサイトを閉鎖されてもう何年も経ちます。復活を望んでいるんですけれど)

フサノに引き取られた孤児アキオ
■ストーリー

昭和18年、孤児のアキオ(吉井一肇君)は、盗みが原因で感化院(児童保護施設)に入れられる。そこで厳しく指導されるが、ある日、聴いた「お菓子と娘」という曲が忘れらない。

戦後、フサノ(いしだあゆみ さん)に引き取られるが、彼女に孤児への愛がある訳ではなく、単なる丁稚扱い。そんな中で、アキオは夢だった、お菓子エクレールの事が忘れられず・・

インタビューにて
■最初は失敗作かと

映画が始まってしばらくは、こりゃ失敗作品だと思いました。なんだ、このご都合主義の脚本は。子供向けテレビ番組?いや高校の映画部が作ったって、もっとマシな脚本を書くんじゃなかろうか。

父母の顔を知らず、感化院で育った少年が、感化院を出て、波乱万丈の生活を送る訳ですが、何の説明もなく、次から次へと面倒を見てくれる人が現れます。こんなに人生は甘いものじゃないはず、なんて思ってしまいます。

映画館の小僧になった場面では、かの名作「ニューシネマパラダイス」、浮浪児のリーダーは「オリバー」など、古今東西の映画で見たようなシーンが出てくるのはご愛嬌。先が読めるベタベタの展開なのですが、だんだんと映画の中に引き込まれ、最後のシーンなんかでは、不覚にも涙が出てしまいました。

■美しいソプラノボイスにやられました

それもこれも、主演の吉井一肇君の熱演が全て。いや正確に言えば、吉井君の少年ボイスにやられたのでした。吉井君の風貌は、はっきり言って少年っぽくはありません。肩を怒らせ、足を開いて立つ姿は、まるで石原裕次郎さんか高倉健さんのような、ふてぶしいツラ構え。なのに口を開けば、天使のように透き通った声。このギャップがたまりません。

最後のシーン、ここだけネタバレで申し訳ありませんが、のど自慢大会で素晴らしいボーイソプラノの歌唱を披露してくれます。もちろん優勝。(音楽的に優れているかどうか私には判りません。)

それもそのはず。吉井君はミュージカル「レ・ミゼラブル」など舞台でも活躍されている子役さんだそうです。今は話題の加藤清史郎君も演じているそうですので、是非一度舞台を見てみたいもの。

その他の俳優さんで目だったのは、やはり、いしだあゆみさん。かつての超美人女優がこんなお婆ちゃん役を。しかも性格の悪い欲張り婆さん。でも憎めないんです。あの細い身体で倒れた時なんかハラハラしてしまいました。存在感はハンパではありません。

少しだけですが、太賀さんも出演。出番は少ないものの、なかなか印象的でした。こういう昭和時代の物語には本当にぴったりの役です。

孤児たちを演じた子役も素晴らしい
■最後に

震災を受けた東北が撮影の舞台だったそうです。関係者の中に被害者もおられたのかもしません。でも、こうして映画が公開されて、本当によかったと思います。決して完成度が高い作品とは言えませんが、主演の吉井少年の生き方は、常にポジティブ、前向きで、テンションも高い。これだけでも見る価値は十分にあると思います。是非、映画館へ足をお運び下さい。

毎度の蛇足ボヤキです。700円でパンフレットを買いました。この映画を救っているのは主演の吉井君。なのに、プロダクションノートには吉井君のキャスティングの記述は全くなし。大物女優いしだあゆみさんへの配慮はあるのですが。このあたり残念です。

※嬉しいニュースです。本作は中国で最も権威のある映画祭「第20回金鶏百花映画祭」の外国映画部門で、吉井一肇君が最優秀男優賞を受賞。史上最年少で。(中国の方々の評価の方が素晴らしいじゃありませんか)





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