武蔵野S町物語 (2012年)

少年映画評価 6点
作品総合評価 5点
少年の出番 100%(堂々の主役)
お薦めポイント はじけるような笑顔の横山幸汰君。
映画情報など 2012年公開/DVD発売中


2012年12月15日、自宅にてDVDで鑑賞。

新作の少年映画は、基本的には映画館で鑑賞したいのですが、残念ながら、それは贅沢ともいえる状況となりました。もはやミニシアター系や独立系の映画を上映してくれる映画館は一握り。地方で製作された地味な映画など、その土地へ行く以外に見る方法がありません。

幸いにしてDVDを発売してくれる映画もあります。そこで本年度内に公開され、DVDで鑑賞した作品も映画鑑賞日記で書くことにしました。本作品のDVDは、映画の公式サイトから、直接注文して求めたものです。

■ストーリー

映画は埼玉県志木市の夏祭りのシーンから始まる。初老の夫婦(宮崎美子さんと大杉漣さん)が町を歩いている。歩きながら子供時代を回想するという形で進行する。

昭和30年になったかならないかの時代。健一(横山幸汰君)は、今日もクラスの仲間と秘密基地で遊びに明け暮れていた。シベリアからの(最後?の)帰還者が町に戻ってきたり、まだ戦争の影も残している。

一番の親友が病気になった。日本脳炎だと噂され「絶対に側へ寄ってはいけない」と親に言われる。結核や伝染病の患者は、忌避すべきものとして差別される時代だった。幸いにして親友は無事に快復して退院。

大酒飲みで暴力を振るうオヤジに虐待される少年への同情、クラスで一番、足の速い少女への憧れ、不気味な黒マスクの男など、様々な人物が登場するが、特に大きな事件もなく、物語は淡々と進んでいく。

現在と回想が交差しながら進むが、次第に状況が判ってくる。健一は成長して、足の速かった同級生少女と結婚し、子供を生み、孫も生まれ、そして生涯を終えたのだった。

■地方製作映画の課題

いわゆる「町おこし映画」ですので、多くを期待するのは酷だと思います。資金も時間も限られた中での製作ですので、多少のアラは目をつぶるくらいの大人の対応が必要です。

今やローカル映画のキング?ともいうべき大杉漣さん。やはり大杉さんがいるだけで和みます。そして映画が引き締まってみえます。志木市の町を歩くシーンは、テレビの旅番組みたいで、それなりに興味深く見ることができました。

昭和時代の回想部分は、画面の色調を暗くして古臭い印象を出そうとしている努力は認めます。でも服装、髪型、時代考証など、もう少し頑張って欲しいところ。当時の小学生男子の9割以上は丸刈りか、短い刈上げのはず。シベリア帰りの男性の髪型も違和感だらけ。

「Always三丁目の夕日」のようなセットやCGは無理だと思いますが、せめて服装や髪型くらいは頑張って欲しかった気もします。

■少年俳優たちのがんばり
昭和少年、佐藤詩音君

本作品の主役は横山幸汰君。人懐っこい笑顔が可愛く、なかなかの熱演でした。しかし本作品で一番凄いと思った子役は、貧乏少年役の佐藤詩音君。さすがにテレビドラマで場数を踏んでいるだけに、他の子役達とはレベルが違いました。

おまけに服装も髪型も昭和30年の少年そのもの。これもプロ根性?(ひょっとして髪型は他のドラマ等の役作りで丸刈りにしていたのかもしれませんが)子供たちだけのシーンは、学芸会に毛の生えた程度になりがちですが、佐藤君のおかげで、何とか見れたと言っても過言ではありません。

DVDには地元での公開初日の舞台挨拶がほんの少し収録されています。主役の横山幸汰君は、映画とはかなり印象が異なっていますが、映画のトップクレジットを背負った責任も感じているのでしょうか。是非今後も活躍して欲しい。

よく見ると、映画のクレジットの2番目は佐藤詩音君。やはり彼の実力をスタッフの皆様は判っておられるのですね。2人とも、もう1〜2年して少年俳優として熟してきた頃に、同じような映画に出てくれることを切望します。

また少し辛口気味になりましたが、それでも本作品のような少年映画を作って下さった関係者の皆様には大々感謝です。





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