半径3キロの世界 (2012年)

少年映画評価 7点
作品総合評価 5点
少年の出番 100%(短編ですが主役)
お薦めポイント 亡き母の思い出を探す少年
映画情報など 2012年公開/DVD等なし(写真は飯島幸大君)


2013年3月28日、梅田ガーデンシネマ(大阪)にて鑑賞。

若手映画作家育成プロジェクト(ndjc)の、2012年度製作5作品が1週間限定で上映。その5本の中に、少年映画と思われる作品が2本あることを知り、頑張って出かけました。その1本が、本作品です。

■ストーリー

主人公は小学生の一輝(飯島幸大君)。病気で母を亡くし、父と二人で暮しているが、まだ母への思いをひきずっている。実は、母は脳死状態で、心臓などの臓器を提供したのだった。提供に同意した父の事も、心の底では許せない気持ちが残っている。

日本では、臓器提供者(ドナー)の家族と、臓器受領者(レシピエント)間で個人情報のやり取りはない。しかし、仲介者を通じて文通は出来る。一輝は、母の心臓を提供された女性と文通を始めた。

手紙の中で、女性が養蜂を始めた事を知り、一輝は驚いた。母親も養蜂家だったからだ。母の心臓が生きているのではないだろうか?いても立ってもいられなくなった一輝は、女性を探し出す事を決意。養蜂家の電話番号を調べ、片っ端から電話をかけたり、訪ねて行ったり。当然、父は反対する。父に叱られた一輝は、家を飛び出した。

実は身近なところに、その女性(谷口美月さん)はいたのだ。彼女は、一輝がドナーの息子だと気づいたが、何も言わない。ただ半径3キロの世界で一心に働く蜜蜂の話をするだけ。一輝も判った。蜜蜂のことも。母親の思いも。心臓提供を受けた女性の思いも。そして父の思いも。

■30分の世界

このndjc2012は、全て1本30分で作られています。30分というのは、かなり難しい時間ですね。これをうまく使えるかが、監督の腕の見せどころでしょう。本作品は、まあまあ、というところでしょうか。脳死と臓器移植という重いテーマを背景にしていますが、それを説明するようなセリフは、思い切ってカット。

その点は良かったと思います。蜜蜂の「半径3キロの世界」というテーマが、今一つ、すんなりとは判りません。なので、やや感動が薄い感じが残念です。ただ、本作品を救ったのが、主役の飯島幸大君。監督へのインタビュー記事を見ましたが、飯島君の演技をかなり気に入っている様子です。

寒い季節、撮影は短期間で行われたのでしょう。服装はニット帽にマフラー、青いジャケットだけ。もっと他の衣装も見たかったのですが、こればかりは予算上も厳しかったのでしょうね。ややポッチャリで、幼い感じかなと思いましたが、眼光は鋭く、声もやや低い。あの映画「狼少女」の時の鈴木達也君に、そっくりでした。

■あの映画のパクリか

さて、映画で気になったシーン。一輝少年が、母の心臓を移植された女性を探しまわるシーン。電話帳から番号をリストアップし、片っ端からかけていく。住所をチェックして、大きな地図にマークしていく。

どこかで見たなあ。映画「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」そのままですね。これで、タンバリンでも持っていれば完璧です。でも、決して嫌味ではありません。あの作品へのオマージュなんだろうと思います。

30分ですので、やや消化不良の感じは残りましたが、いい作品でした。飯島幸大君を使って、もっと長編作品を撮って欲しいものです。





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