HOMESICK (2013年)

少年映画評価 6点
作品総合評価 5点
少年の出番 60%(準主役の3人組)
お薦めポイント 30歳独身男の人生リスタートと少年
映画情報など 2013年公開/DVD発売予定
(写真は、ころ助役の金田悠希君)


2013年11月2日、第七藝術劇場(大阪)にて鑑賞。

ほとんど話題にもならず、ひっそりと公開されています。10月、11月は少年合唱団の定期演奏会シーズンのため、映画鑑賞はおろそかになりがちなのですが、この日はしっかりと行ってきました。久し振りの第七藝術劇場。観客の入りはこんなものでしょうか。快適に鑑賞。

このまま空を飛べるかな。今なら飛べるかもな。
■ストーリー

主人公は30歳とい微妙な年齢の独身男の沢北健二(郭智博さん)。どうも複雑な家庭で、母親は失踪、父親は勝手に自宅を売って田舎でペンション経営、妹は世界放浪の旅に出たまま帰って来ない。なので自宅で一人暮し。

問題は自宅だ。父親が売却したので、立ち退き期限が迫っている。しかも健二の勤める塗装会社は、社長が夜逃げして倒産。失業してしまった。そんな健二の自宅に、悪ガキ3人組が、イタズラを仕掛けて来る。なぜ健二の家がターゲットになったのか判らないが、次第にエスカレートしてきた。

最初は無視していた健二だが、とうとうキレて反撃開始。悪ガキどもにホースで水をぶっかける。やがて健二と3人に妙な連帯感が生まれ、3人は毎日自宅に上がり込み、遊ぶようになる。3人の中で、ころ助というあだ名の少年(金田悠希君)は母親がいないせいか、健二を慕うようになり、夜遅くまで帰らない。

期限を過ぎても退去しない健二に住宅会社が警告。特に元同級生だった女性社員に「あなたは人間のクズね」と言われ、ショックを受ける。その夜。寂しくてやってきた ころ助に対し、健二は「もう来るな。お前の顔なんか見たくない」とヤケ気味に言ってしまった。幼いころ助も傷ついたのか、翌日からは来なくなった。

しかし健二は立ち上がった。全て清算することを決意し、ダンボールの恐竜も焼却。家を明け渡した。そして、健二は自転車を走らせる。ころ助の住む団地へ

■PFF臭さが抜け切れない

廣原暁監督はPFF(ぴあフィルムフェスティバル)で評価された監督で、2009年の「世界グッドモーニング!!」は私も鑑賞し、非常に印象に残った作品でした。本作は、PFFのスカラシップを受けて、初の劇場公開作品となった訳ですが、よくも悪くもPFF臭さというか、学生臭さというか、実験映画の臭いが残った作品でした。

私自身は、この廣原監督の描く世界や空気感は大好きなのですが、一般の人たちに受けるかどうかは疑問です。観客に媚びた浅薄な大衆映画は不要ですが、もう一皮向けて、画面に緊張感が持続するように頑張って欲しいものです。

悪ガキ3人組
その中の1人、ころ助は寂しい少年だった

■どこかへ行きたい!何かスタートしたい!

「世界グッドモーニング」でもそうでしたが、現状に行き詰った主人公が、どこかへ行きたい、リスタートしたいという強烈な思いが伝わってきますが、結局どこへもいけない。行ってしまったら、ロードムービーになるのですが、その手前で終る。

ちょっと不完全燃焼感があるのですが、逆に言えば、期待感を残して終る。これもなかなか好きな映画かもしれません。3人組の一人、ころ助少年との交流がもう少し描かれていれば良かったのですが、それでも最後の場面が印象に残ります。

この映画を見る少し前の北九州少年合唱隊定期演奏会(2013.10.27)でも聴いた、スピッツの「空も飛べるはず」の世界ですね。但し男女ではなく、大人と子供の世界ですけれど。学生臭いなんて言いましたが、やはりいい映画です。多くの方に見て貰いたい映画です。





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