チャリンコ レクイエム (2013年)

少年映画評価 7点
作品総合評価 6点
少年の出番 90%(準主役)
お薦めポイント 往年の西部劇「シェーン」のようなラスト
映画情報など 2013年公開/DVD発売(自主販売のみ)


第12回中之島映画祭が2014年のゴールデンウィークに大阪の中之島で開催されました。193もの応募作品から選ばれた12作品が上映されますが、事前にネットで調べたところ、少年俳優が登場するのはこの「チャリンコレクイエム」だけでした。

本作品の上映は5月4、5日。中之島映画祭は3日からですが、会場へ行き、DVD販売テントをのぞくと、なんと本作品のDVDを販売しているじゃありませんか!それも、たった500円!

迷わず購入し、自宅に帰って早速鑑賞しました。40分余りの作品ですが、いやいや、なかなかの出来です。(関係者の方には申し訳ありませんが、中之島中央公会堂での本上映は、都合により行けない事になりました。)

■ストーリー

エレキギターを背負い、バイクに乗って田舎道を走る若い男。何の説明も無いが、どうやら放浪の旅に出ているようで、小さな神社の軒下で夜を過ごす。朝になり、男が歯を磨いていると、自転車に乗った少年がぶつかってきて、川へ落ちてしまう。怒る男。反抗する少年。すったもんだの末、男は少年の家へ上がり込む。

少年の名は淳平(鈴木双嵐君)。両親を事故で無くし、祖母と2人暮し。いや、もう一人兄がいた。大学受験に失敗し、精神が不安定になり引き蘢っている、厄介な奴だ。男は、淳平の祖母の話を聞き、好意に甘えて、この家で少しの間、過ごすことになった。引き蘢りの兄をとっちめたり、淳平の世話を焼こうとしたり。

淳平は、男に心を開かず、納屋で何かを一生懸命作っている。その秘密が判った。その昔、家族全員で旅行した時に見た「あの美しい夜空の星をもう一度見たい」と言った祖母の言葉。淳平は、その星空を再現するプラネタリウムを作ろうとしていたのだった。

それを知った男は淳平の作業を手伝うが、プラネタリウムが完成する前に悲劇が起った。祖母が過労で倒れ、そのまま帰らぬ人となってしまったのだ。

■ちょっとカッコ悪い「シェーン」

往年の名作西部劇「シェーン」をご存知でしょうか。日本で言えば「渡り鳥」とか「また旅」シリーズ(と言っても判らないでしょうねえ)のようなもの。簡単に言えば「宿無し渡世の男が、普通の家庭にしばらく滞在し、そこの奥さんや子供に慕われながらも、最後は去っていく」そんなものです。

西部劇や時代劇に出てくる渡世人は、優しくてイケメンで、しかし誰にも負けない凄腕のカッコいい男です。本作の若い男は、イケメンでもなく、ドジばかりで、全然カッコ悪かったのですが、だんだんとカッコよくなってきて、最後のシーンなんかは「シェーン」顔負けでした。

ラストシーン。バイクに乗って去っていく男。後ろを振り返りもしない。
「シェーン、カムバ〜ック」少年はもちろん叫びませんでしたけれど。
■素晴らしい学生映画
少年らしいスレンダーな体

本作品は、日本大学芸術学部の平成24年度卒業制作として、角屋拓海監督により製作された作品とのことです。これは毎回思うのですが、学生映画のレベルの高さ。テレビ局が大金を出して製作する商業映画に比べると、映画の規模では話になりませんが、その芸術性というか、志の強さは、全く逆です。

上映機会が無いのが残念とはいえ、ネットをよく調べると、今回の「中之島映画祭」のような学生映画上映会は各地で開催されており、本作品「チャリンコレクイエム」も何回も上映されているようです。

もちろん学生映画ですから玉石混淆で、大半はレベルの低いものかもしれませんが、本作品のような一定のレベルに達した作品が、こんな映画祭だけでなく、一般のシネコンや衛星放送、DVDで、もっと広く皆様に知って頂けたらなあと切に思う次第です。

余談ですが、日本大学芸術学部関係のツイッターを閲覧していますと、元少年俳優の池松壮亮さんがツイートしておられ、映画関係の勉強をされていたんだなあ、と頼もしく思ったりしています。

■不思議な魅力を持つ少年俳優

最後に、本作品で淳平役を演じた鈴木双嵐君(どう読むのかは判りません)ですが、最初はとっつきの悪い感じがしました。しかし、表情をうまく変えながら、どことなく切ないような、甘酸っぱいような、いい雰囲気を見せてくれました。

自転車を漕いでプラネタリウムの電源に
少し別人のような柔らかい表情





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