マヌケ先生 (2000年)

少年映画評価 6点
作品総合評価 6点
少年の出番 100%(堂々の主役)
お薦めポイント 尾道の町と映画への愛に満ちた脚本
映画情報など 2000年製作。DVD発売中。
(写真は、主役の厚木拓郎君。)


大林宣彦監督の尾道三部作、新尾道三部作は有名ですが、それから漏れているのが本作品。監督は内藤忠司さんで、大林氏は総監督という立場だったからかもしれません。殆ど話題にも上らないのですが、ノースエンド先生からDVDをお借りして、これは尾道と映画への愛に満ちた作品。そして厚木拓郎君への愛も。

近所の人を集めて自作の映画上映会
■ストーリー

映画監督の馬場鞠男(三浦友和さん)が、故郷の尾道へ帰る列車の中で、少年時代を回想する。戦争末期、鞠男(厚木拓郎君)は、不自由な戦時体制の生活の中でも、天真爛漫な少年で、落とし穴を作ったり、尾道の町を駆け回って遊んでいた。

そんな鞠男の夢は映画を作ること。そして町の置屋(芝居小屋かも)にいる病弱な娘の千代子さんへの憧れ。鞠男は手書きのアニメ映画「マヌケ先生」を作り、近所の人を招待する。もちろん目的は千代子さん。でも千代子さんは来てくれなかった。病魔が千代子さんを奪っていったのだ。

鞠男はフィルムを通称タンク山の麓に埋めた。そして再び列車の中。行き詰まった馬場鞠男は、そのフィルムを掘り出すために来たのだが、向かいに座っていた山高帽の紳士は、マヌケ先生だった。

■大林宣彦氏の少年時代を反映した作品

主人公の鞠男は大林監督の分身だと思います。映画作りに行き詰まった監督が、夢いっぱいだった少年時代の原点を求めて故郷に帰ってきた。陳腐かもしれませんが、共感できます。ただ大林作品ですので、一筋縄ではいきません。

自分の作った漫画のはずだったマヌケ先生が、実在化して尾道の町を駆け回ります。マヌケ先生を演じたのは故・谷啓さん。そしてタイムカプセルのように埋めたフィルムへと導いてくれました。映画に映る尾道の町並みは、まだ観光用に整備されておらず綺麗でないのが、逆に情緒があっていい感じです。

そして直接的な表現は決してありませんが、反戦・平和への思いが伝わってきます。これを書いている2017年現在、大林監督は闘病中とのことですが、自由に映画を作れる時代が続くことを願っておられるに違いないのではと思います。

落とし穴を作って校長先生を。戦時中も楽しく
どの作品でも必ず素っ裸にされてしまう厚木拓郎君。
(母親役は南野陽子さん)

■大林監督のお気に入り?厚木拓郎君
厚木拓郎(第1回主演)

1999年から2000年にかけて「あの、夏の日」「マヌケ先生」「淀川長治物語」と3本の作品に堂々の主演をしたのが、わずか10歳の少年(少年と言うより、ただの子供)。薬師丸ひろ子さん、原田知世さん、などの大林監督のお気に入り女優さんと比べても遜色ないかもしれません。

それなのに、この知名度の無さ。美少年とかイケメンでは決してないのですが、どこか独特な表情。もう一人の常連子役だった林奉文さんも同じタイプ。きっと昭和的な少年という事で、このタイプが好きなのでしょうか。

DVDもありますので、皆様、是非一度ご覧になって下さい。

手書きで作ったマヌケ先生のフィルム
マヌケ先生が実体化。故・谷啓さんの熱演






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