ぼくが命をいただいた3日間 (2015年)

少年映画評価 6点
作品総合評価 5点
少年の出番 100%(貫禄の主役)
お薦めポイント 出演者の中で出色の演技力、若山耀人君
映画情報など 2015年製作。DVD発売中。
(写真は、主役の若山耀人君。)


吉本興業が協賛する第7回沖縄国際映画祭(2015年)で上映された作品。映画の製作も吉本興業とテレビ東京。良くも悪くも吉本興業の影響が大きい(毒された)映画です。

吉本興業が地方映画の製作(中短編が主体)を支援し、若手監督の発掘や少年俳優の起用も多かったことなど、これは本当に素晴らしい事だと思いました。一方で吉本興業のお笑い芸人を強引に映画に出演させることは、プラスの側面もありますが、圧倒的にマイナスの方が大きかったのではと思います。

本作品では、NHKを中心に売れっ子だった少年俳優の若山耀人君が堂々主演の中編映画ですので、大いに期待していました。上映機会が殆どなかったのですが、2017年になってDVDが発売されて、念願の鑑賞が叶いました。

祖父の生活ぶりに、都会っ子の悠介は戸惑うばかり
■ストーリー

小6の悠介(若山耀人君)は、冬休みに父の故郷へ一人で行かされる事になった。生まれて以来、父の故郷には行った事がなく、そもそも父方の祖父母の存在すら知らなかった。「なんで僕ひとり・・」と不満を漏らしながらも父の故郷へ向かった。

祖父(でんでん)はぶっきら棒で、とっつきにくいが、祖母(松原智恵子さん)は優しい。でも祖母が精一杯作ってくれた田舎料理を悠介は食べる事が出来ない。そんな事お構いなしに翌朝、祖父は悠介を農作業に連れていく。チキンが食べたいという悠介のために、飼っていた鶏の首を切るが、悠介は目を背けるだけ。

もう東京へ帰りたいと電話で父に泣きついた時、近所の美少女(平祐奈さん)と遭遇する。彼女の力強い言動に励まされ、食べるという事がキレイごとではないと気づく。同時に生き物への感謝の意味も。それに気づくと祖母の料理が素晴らしいものに思えてきた。せっかく祖父に寄り添えるようになった時、祖父は倒れてしまった。

(ネタバレ:悠介の父は祖父と喧嘩して断絶状態。祖父が余命僅かになり、祖母が「せめて孫の顔だけでも」と懇願し、悠介を一人で祖父母の元にやったのだった)

■目新しさのないストーリーだけに演技力が必要

食肉に関する欧米のドキュメンタリー映画、また邦画の「ブタがいた教室」など、社会教育的なテーマの作品は数多くあるだけに、どのように味付けしているのか気になりましたが、オーソドックスな内容(悪く言えば無策)

主役の若山耀人君と、祖父役のでんでん氏は合格点の演技でした。特にでんでんさん(言いにくい・・)の存在感は出色です。この人は「お笑いスター誕生」でデビューしたのを見ていましたが、まさかここまで演技派俳優になっているとは。

若山耀人君は子役なのに貫禄が違います。メイキングを見ていると、撮影の場の中心にいつもいて、監督さんの方が影が薄いくらい。それだけに脚本としては、もう一ひねり欲しかった。山で遭難しかかるなんてのは定番ですけれど。一つくらい事件のエピソードがあれば。(少年映画に欠かせないお風呂シーンも無し。これはどうでもいいですれど)

やってきた父の故郷。コンビニなんて一切ない
田舎の料理は食べれないし、腹へったあ
(この映画の目玉は田舎料理。私にはヨダレが出そうなほど)

■映画を台無しにした人

これは書きたくないのですが、でんでん氏と対照的な方が吉本興業の坂田利夫さん。いったいなぜこの方を出演させたのでしょうか。沖縄国際映画祭は、コメディー要素がある作品を対象としているため、コメディ担当として、吉本興業の芸人さんが出演しているのだろうとは思います。

吉本興業の芸人さんでも演技力の優れた方は数多くおられますので一概には否定しませんが、坂田利夫さんは、どうころんでみても「吉本新喜劇のアホの坂田」以上でも以下でもないのです。坂田さんの芸風自体は味があるのですが、映画に使うものではないと私は思うのです。

台無しにしたなんて、心苦しくもキツイ事を書いてしまいましたが、どうしてもそう思わざるを得ません。地方映画に投資される事は素晴らしいと思いますが、ここまで自社の芸人を押し付けるのは、逆効果では・・

「鶏を押さえておけ」祖父は大きなナイフを・・
「何するんだよ〜可哀想じゃないか」
近所の美少女。彼女にも辛い過去があった。
(この美少女の祖父が坂田利夫さんとは・・)


メイキングより。若山耀人君はなぜかテンション高し
撮影終了。でんでん氏と若山耀人君






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