さようなら、ごくろうさん (2016年)

少年映画評価 6点
作品総合評価 5点
少年の出番 70%(主役ではありません)
お薦めポイント 学校の怪談をちょっと捻った話
映画情報など 2016年製作。PFF2017に入選
(写真はりょうた君。)


第39回PFF(ぴあフィルムフェスティバル、2017年)のコンペティション部門に選出された17作品の一つ。今や日本の少年映画といえば、若手監督やインディーズ系作品しかない状況で、その中の最高峰イベントがPFF。しかし最近のPFFには、少年俳優が出演する作品がなく残念に思っていました。(少年映画は作られているのでしょうけれど、予選突破しない)

第39回は本作品と「こどものおもちゃ」(別途レビュー予定)の2本に少年俳優が登場。東京会場のプログラムはこの2本が同じ枠で上映されるため、重い腰をあげて東京まで行ってきました。PFFは東京の後、京都や神戸でも開催されるので、それを待つのもアリですが、早く見たかったので。

怪異な夜が明けた。気がつくともう朝。警備員室で寝ていた。老人はどこにいるの・・
■ストーリー

ある過疎の町の小学校。長年働いてきた警備員の老人(あらい汎)が解雇された。老人は教師たちとも親しかったが、自動警備システムを導入したためだ(まあ人件費削減)。しかし老人は解雇された後も深夜に学校へやってきてボランティアで見回りや掃除をしている。それをよく思わない主任教員は、もう学校に来ないよう注意する。

そんなある夜、少年(りょうた)が学校にやってきた。体育のテストのために、こっそり鉄棒の逆上りを練習するためだ。誰もいないはずの校舎で光が点滅。不思議に思った少年が校舎の中に入ると、元警備の老人がいた。忘れ物?と聞かれ、思わず給食袋と答えた。一緒に探しているうちに大雨が降ってきた。

家に帰れないので警備員室で休憩させて貰うが、校舎で大きな物音がする。老人と一緒にその音のする方へいくと・・椅子や机が踊るように動き出し、そして老人までもが変身してしまった・・

警備員室で寝たので遅刻
(今日は鉄棒のテスト)
■さようなら、ごくろうさん、誰に対して・・

昔の学校には小使いさん又は用務員さんと呼ばれる方(大抵は年輩のおじさん)が1日中いて、学校の掃除やら修理、見回りなどをしていたと思います。この映画では夜勤の警備員ですが、長年勤めてきて先生方からも頼りされていた老人。当然、その老警備員への感謝の言葉だと思ってました。

違うのです。学校は昼間は先生や生徒で賑やかですが、夜は誰もいなくなります。ましてや過疎地の小学校。昼間でも生徒は少なくなり、やがて廃校となってしまいます。そんな学校そのものが寂しがって怪異を起こしており、老警備員が学校を慰めていたのでした。そして最後に感謝も。

少年は「学校にお化けがいるの?」老人「みんなそんな事を言う。違うんだよ。学校だって寂しいんだよ」こういう視点の怪談(といっていいか判りませんが)はあまり無かったかもしれません。そして最後。廃校になって荒れ果てた校舎から、周囲の誰もいない寂れた荒地の様子がドローンによる空撮で終わります。

■短いけれど、そつの無い演技

老警備員を演じたあらい汎さんはパントマムを主体とした舞台活動をされておられるベテラン俳優。哀愁を帯びた老人がいきなりピエロに変身、エネルギッシュな動きに驚かされました。そしてりょうた君。セリフは少ないけれど、その眼差しが印象的でした。

PFF資料には記載されていませんがネットで検索すると、坂上忍さんのタレント事務所に所属と思われます(間違っていたらすみません)。そうだとしたら、きちんと基本は出来ている子役さんだと思います。

実は今回、りょうた君は私のすぐ隣の席にいました(ご家族と一緒に)。汎さんご夫妻とは会話までしました。しかし両者とも、映画が終わるまで出演者とは気づきませんでした。

PFFアワードのチケットは毎回30分前からの販売のみ。私は1時間前に来たところ、販売まで順番に待つ席が出来ています。私は4番。2,3番に汎さんご夫妻がおられました。芸術家っぽい老紳士だとは思っていましたが、まさか本作品の主役だったとは。(映画関係者くらい特別招待席があってもいいのに)

深夜の学校で物音が。老人と一緒に見回るが
大雨が降ってきた。帰れない。警備員室へ

■監督インタビュー

映画終了後にPFFの女性(いつもの偉い方)による監督さんへのインタビューがありました。(今回は3作品上映ですが、1作品だけ監督さんの都合で上京できず、インタビューなし)

監督の城真也さんは、あの是枝裕和氏が指導する早大映像製作実習の学生さんとの事。若いというか初々しい感じで、PFFの女性の鋭いインタビューにタジタジ。誰もいない学校でいきなり自動警備システムが作動し、監視カメラには椅子などが動き出すシーンを撮りたかったそうです。

監視カメラのシーンって・・あの人気ホラー「ほんとにあった!呪いのビデオ」シリーズでもう使い古された手法じゃないですか。もしかして映画製作者は下衆なホラービデオなんて馬鹿にして見ないのでしょうか。それは勉強不足ですよ。作り物と判っていてもあのシリーズは面白いのに。

話がそれました。色々突っ込み所はありますが、43分という短い時間でよく作られた作品だと思います。会場出口で、本日の作品に1票だけ投票して下さいとの事で、少し迷いましたが、本作品に投票しました。(「こどものおもちゃ」も力作で子役も熱演でしたがセリフに難点。これはこの作品のレビューでまた書きます。)

遅刻したので、大急ぎで体操服に着替える
(昨晩の練習のおかげで逆上りのテストは成功)
りょうた君。PFF上映後、会場ロビーにて。
(携帯写真なのでピンぼけ、顔も写っていません)






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