星めぐりの町 (2018年)

少年映画評価 5点
作品総合評価 5点
少年の出番 90%(主役の1人)
お薦めポイント 無口・無表情な少年がほんの僅かに見せる笑顔
映画情報など 2018年製作。DVD発売中
(写真は震災トラウマ少年役の荒井陽太君)


2018年に公開された数少ない少年映画の1つ。星めぐりの町と聞いて最初に思い浮かぶのが宮沢賢治「星めぐりの歌」。東北を舞台にした映画だと思ったのですが、全く関係のない愛知県豊田市の地元映画

東北大震災でトラウマを負った少年の物語。やはり最後は宮沢賢治につながっていきます。愛知県なのに東北大震災に便乗した作品だったのか。こんなことを書くと被災地の皆様には本当に申し訳ありません。

そんな事はさておいて、心に傷を負った少年を受け入れる役を演じた小林稔侍さんの演技は本当に心が休まります。世の中、小林稔侍さんのような人ばかりだったらどんなに平和でしょうか。

幼い女の子を見て...震災で亡くなった妹を思い出して泣く少年。そっと寄り添う男
(妹への感情は宮沢賢治の世界かもしれません)
■ストーリー

愛知県豊田市で手作り豆腐屋を営む島田(小林稔侍)のもとに、警官が政美という少年(荒井陽太)連れてやってきた。少年は東北大震災で家族を全て失って親戚や施設をたらい回し。島田に少年を預かってほしいと。実は少年は島田の亡き妻の遠い親戚にあたるとの事だった。島田は少年を預かることを決意。

少年は何もしゃべらず自分の殻に閉じこもったまま。そして大きな音やちょっとした揺れに反応してパニックに陥る。全く扱いにくい。これではたらい回しも当然。しかし島田は根気よく接する。島田が精魂込めて作る豆腐は大人気ですぐに売り切れ。島田はこの豆腐作りから販売まで少年を同行させる。なにも何も押し付けはしない。

そんなに島田に少年は少しずつ心を開く。豆腐作りにも関心を示す。やがて少しだが手伝うようにもなった。良かったと思った頃、地震が愛知県を襲った。そんなに大きな地震ではなかったが、少年はパニックを起こし山へ逃げた。みんなが大騒動する中、島田だけは少年を信じて帰ってくるのをじっと待っていた。

■鳴くまで待とうホトトギス

ストーリー自体は本当によくある話。陳腐といってもいいかもしれません。でも小林稔侍さんの人間力?でしょうか。心が暖まる話になっています。子供を信じて「鳴くまで待とうホトトギス」。強制はしない。しかし放任ではない。自ら気づいて貰うための働きかけ。

そうは言っても教える側が口先だけの人間だったら、いつまで経っても鳴いてはくれません。身を以て教える。まあ簡単ではないでしょう。今の日本は即戦力、自己責任などと「鳴かぬなら殺してしまえホトトギス」の社会になっているような気がします。

こんな社会をリードしていると、これを言った織田信長のように身内から暗殺されてしまいますよ...(また余計な事を書いてしまいました)

少年役の荒井陽太君。最初はクソガキにしか見えなかったのですが、最後は感情移入して本当に可愛い少年。ルックス的には純日本風というか、戦国時代の絵巻物に描かれた小童という感じです。

腑に落ちない点もいくつか。まず少年を遠い親戚へ預けるなんてのは、施設職員とかケースワーカーの仕事だと思ってました。警察官が連れてくるものですかね。またこの警察官もまるで吉本新喜劇に出てくるような駐在所の(老いぼれた)お巡りさん。ちょっとリアリティが足りません。

遠い親戚である男の家へやってきた
隅っこに座って下を向くだけ...
妹の形見のガラスの雪だるま
(これだけが少年の心を休めてくれるのだろうか)


男は豆腐の移動販売に少年を連れていく
(何も言わない。ただ自分の働く姿を見せるだけ)
少年は豆腐作りの作業場を掃除しだした
(少年も何も言わない。褒めてほしい訳でもない)


バイクの後ろに乗せて貰って初めてみせた笑顔
(バイクはこの家に同居している娘が乗せてくれた)
地震でパニックになり逃げた少年が戻ってきた
(男の胸にすがりつく。もうだ丈夫だ...)






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