夏少女 (1996年)

少年映画評価 6点
作品総合評価 5点(終盤が荒唐無稽...)
少年の出番 90%(少年目線で物語は進行。なので出番は主役並み
お薦めポイント 8月6日の悲劇。鎮魂の精霊流し
映画情報など 1996年製作。2019年初公開。BD/DVD未発売
(写真は少年役の藤岡貴志君)


ネットで「夏少女」という本作品の話題を見ました。事情があって23年もお蔵入りだった作品のネガが見つかり、今年(2019年)の夏に初上映されると。しかしタイトルが少女ですから、正直言ってあまり興味はありませんでした。また東京のポレポレ東中野だけでの上映と思っていましたので。

予告編には少年も出演。しかも大阪の十三にある第七藝術劇場の上映予定を見ると、ポレポレ東中野と同じ日に上映開始じゃありませんか。なにせ公式サイトがなく全国上映予定などは不明。Yahoo映画検索である程度は判りますけれど。お近くの映画館で上映していれば是非ご覧になって下さい。

毎年8月になると原爆や戦争の悲劇を描いた作品(最近はアニメが多い)が上映されます。どうしても女性や少女の話が多くなるのは仕方ありません。戦争は一番弱いものたちを犠牲にするからです。

ほら、あそこに女の子がいる。ノボルは指差すが、左の先生には見えない。
■ストーリー

瀬戸内海の小さな島で暮す少年ノボル(藤岡貴志)は12歳。母(桃井かおり)は島々を回る郵便船の船長。父(間寛平)は港の食料雑貨店の店番。母は決めていた事があった。ノボルが12歳になった夏、広島へ連れて行き、父は被爆者、母は被曝2世(祖母のお腹で被爆)である事を伝えようと。

広島の精霊流しの日。ノボルは両親から聞いた。そして見知らぬ老婦人から原爆瓦を貰った。その翌日から一家に不思議な事が起こり始めた。赤いワンピースを着た少女の幽霊が見えるのだ。父は広島で見殺しにした同級生の美少女だと思い込む。母は原爆症が怖くて中絶した女の子(ノボルの姉)だと思い込んだ。

ノボルはすぐに少女と親しくなった。父は見殺しにした罪悪感から白血病が悪化して亡くなった。母も中絶した罪悪感と恐怖から少女を拒絶。しかし母性が打ち勝ち少女を胸に抱く。最初は一瞬見えるだけだった少女は常在化。ノボル、幽霊少女、母の3人で不思議な生活が始まった。

■少女は誰だったんだろう...

ノボルと幽霊少女の会話。君の名は。 よく覚えてないの。ええ?自分の名前なのに...
たぶん原爆で亡くなった複数の魂が宿った少女ではないでしょうか。少女を見る人の思いが強い魂が表面に現れてくる。父には同級生、母には中絶した水子。ノボルにはなんだろう(映画冒頭で知った少女の霊かも)

そして最後に残ったのは母が中絶した長女の魂。少女の身体には原爆のケロイド。中絶は戦後ですからケロイドが残っているのはおかしいのですが、これは誰か別の魂のもか。生きていればノボルの姉で13歳くらい。なんと幽霊少女は初潮を迎えました。(少女の初潮を処置する女性。映画では定番シーン)

■少年はなんとなく影が薄い...

映画は全て少年目線で進行します。その意味では主役の一人、夏少年なんですが、やはり影が薄い。でも演じた藤岡貴志君はなかなかの美少年。夏少女役の美少女、矢崎朝子さんと並んでも見劣りしません。東京の劇団の子と思ったら、子役は全員地元の子らしいのです(他の子供たちもルックスレベル高い)

1996年ですが2,3割の男子はまだ短いショートパンツ。でもノボルはステテコ風ハーフパンツ。それも着た切り雀で同じものばかり。最悪なのは父の葬儀。参列するクラスの男子は制服半ズボン(中国四国地方の小学校の多くは最近まで昭和風の制服)なのに...

父の葬儀ですよノボル君。フォーマルスーツは無理でも制服半ズボンでしょう。どうしてステテコ風ハーフパンツなの...と映画には関係ないところに突っ込みを入れてました。

■桃井かおりさんは熱演.寛平ちゃんは...

桃井かおりさんは広島人に見えませんが、さすがは女優さん。違和感はありません。間寛平さん。私は吉本の中では好感を持っていますが、本作はミスマッチ。寛平ちゃんは何を演じても新喜劇のかんぺーちゃんでしかありません。救いは中盤で亡くなる役であること(えらい言い方や...ごめんなさい)

精霊流しの日に貰った原爆で溶けた瓦
(こんなもの持って帰るか...)
ノボルは熱を出した。左端は同級生の女子
(ノボルまで原爆症か!恐れおののく父)


赤いワンピースの少女が現れた。
(見えるのはノボルと両親の3人だけ)
あの子は私が殺した子よ。取り乱す母...
(それを聞いたノボル。母ちゃん人殺しなの?)


父は亡くなった。少女,母,ノボルの奇妙な生活。
(左奥のノボルは影が薄くなってしまった...)
映画チラシから。ノボルは左下の隅っこ...
(プログラムもなく、印刷物はこれだけ。)


※後記
本作品の画像は予告編しかありません。予告編にも主役の一人なのに少年はほんの数カットだけ。ですので画像は貧弱で申し訳ございません。映画のチラシに上映方式:BDとなっていましたので、BDやDVDはすぐに作れるように思います。是非とも発売がある事を期待するばかり。
原爆のお話は少女や女性が多いと書きましたが、少年のお話の代表作が「はだしのゲン」シリーズ。これも是非ご覧になって下さい。






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