かあちゃん結婚しろよ (1962年)

少年映画評価 B+
作品総合評価 B+
少年の出番 90%以上(主役)
お薦めポイント 母親に結婚を勧める中学生の少年の優しさ。
映画情報など 1962年、公開。DVD等の発売なし。
写真は主役の謝春国君。


2023年の1月、BSの日本映画専門chで放送。DVDもなく、放送も殆どないレアな作品。人気女優の新珠三千代さんが主役となっていますが、映画は息子である少年の目を通して進みますので、立派な少年映画です。

当時の中学生の寝床。きちんと浴衣を着て寝ます。枕元には教科書と筆記用具。
(質素な生活ですが、なんか豊かに感じてしまう...)

中1の一郎(謝春国)は新潟県の漁村で母(新珠三千代)と2人暮らし。一郎は卒業後、漁師になるか東京へ出るか迷っていた。母に再婚話。一郎も尊敬している漁師の武(田村高廣)なので大賛成。そんな時、死んだと聞かされていた父(伴淳三郎)がやって来た。借金返済のために、母子の住む家を売る事が目的のクソ人間。

学校の教師の力を借りて父を追い返すが、一郎は父を可哀想に思い、武から預かったお金を持って一人で東京へ。父は東京で女性と同棲し、女の子(一郎の妹)までいた。村へ戻った一郎は卒業後は東京行きを決心。台風で武の乗る船が遭難との知らせ。心配で倒そうになる母。しかし武は戻ってきた。一郎はまた決心を変えた。漁師になる。


1962年。東京オリンピックの2年前。日本は急速に成熟し、地方の青少年は夢を追って続々と東京や都会に。本作主役の一郎だってそうです。でも一郎は船も大好で、船長になって海を駆け回りたい。そんな夢も持っていました。そんな夢を知ってか漁師の武は一郎に小さなボートをプレゼント。

モノで釣った訳ではありませんが、武が母と再婚すると知って一郎は大喜び。普通の映画では息子は母離れできず、再婚なんて大反対というのが相場。でも一郎は自分を押さえて、母の気持ちを大切することができる優しい少年。本当に感情移入出来ました。

とは言え東京は見るもの全て刺激的。父の家の隣にいたお姉さんにも圧倒されて。お姉さん役は中山千夏さん。しっかり、ちゃっかりしたところは、後年の「ジャリンコちえ」の声優そのまま。初めてみた妹。お前の兄さんだよと言われてソッポを向く。子供ながらに自分は妾の子と判ったのでしょうか。

それでも一郎の優しさなのか、妹はすぐに一郎になつく。なんと一郎は妹をつれて新潟へ帰ってしまうのは行き過ぎ。掠取誘拐の罪ですよ。無断で東京へ行き、変な女の子まで連れて帰ってきた一郎に母は怒りでカンカン。そりゃそうです。

映画の解説では、新珠三千代さん、田村高廣さんなどの大物俳優ばかり。肝心の少年役の謝春国君の情報が全くありません。氏名から中国系の方でしょうか。ネットでみても判りません。二重瞼のちょっと潤んだ目が印象に残ります。いくつか映画には出ておられるようすので、他作品も機会があれば見てみたい。

親友(右)が家族で東京へ引っ越すという。
一郎は袋に入った餞別を手渡す。寂しくなるなぁ...
かあちゃんが再婚を考えている。
一郎はあの人なら大賛成。かあちゃん思いの息子。


死んだはずの父が来た。クズ人間だと追い返した。
でも一郎は父が可哀想に思えて仕方がない。
意を決して一人で東京へ出た。警官に道を聞く。
(後ろは上野駅でしょうか。歩道橋はその頃から?)


父の仕事はチンドン屋。知らない妹までいた。
(襟は1年B組。でも制服はヨレヨレ。誰かのお古)
最初は警戒していた妹も、すぐに一郎になついた。
船に乗せてやるよ。なんと妹を連れて帰ることに...



(おまけ)父の家を探して歩く一郎。左奥には有名だった「お化けエントツ」
(1964年まで足立区にあったもので、本作の2年後には無くなります。)


※後記
母の再婚相手の武が乗る台風で遭難。てっきり漁船だと思っていたのですが、青函連絡船でした。洞爺丸遭難事故をモデルにしたのでしょうか。武はたまたま違う連絡船に乗っていたので無事だった。そんな設定でした。






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