散歩する植物 (2019年)

少年映画評価 B+
作品総合評価 B+
少年の出番 約半分(準主役)
寸評 植物になりたい女性と少年。シュールだが快い。
映画情報など 2019年PFFアワード入選作品。配信あり。
写真は(たぶん)井手尊飛君。


PFF(ぴあ・フィルム・フェスティバル)2019の入賞作品。監督は立命館大学の学生さん。30分の短編で、大きな山場も無いのですが、女性監督らしい感性があふれており、温泉につかっているような緩い心地よさ。BSの日本映画専門chで放送されたものを鑑賞。U-NEXTなどでも配信されています。

ラストシーン。少年と女性は念願かなって植物になった。
(まだ人間の部分も残っているが、少年の腕は木に。左は女性の足)

コンビニでバイトする若い女性(立脇実季)。彼女には人間としての夢や希望は無い。ただ植物になりたいそう思って休みの日は植物園などでボーっと過ごす。ある日、植物園で絵を描く少年コウ(井手尊飛)と会った。コウは学校にも行かず、キャスター付きの植木鉢を引いている。この植物は僕の犬なんだ。

それからも女性とコウは会った。一緒に植物なろう。やがてコウのお尻からが生えてくる。コウは厳しい祖父と2人暮し。祖父はコウが女性と会うのを禁止する。コウと会えず寂しい女性は、ある夜、コウを連れ出す。そして木の根元で植物になってしまった。


主人公の女性。言ってしまえばタダの無気力人間。若いのになあ。
年寄りからみるとその一言で片づけられそうです。でもどこか判る気がするのです。いやいや何も自分が若いセンスを持っているなんて言うつもりはありません。

少年コウも同じ。厳格な祖父がいる以外、どんな境遇なのは描かれていません。学校は不登校で、本物の犬を飼うことが許されないのか、植木鉢をキャスター付きの台車にのせて引っ張って歩く姿は、シュールであると同時に哀しくみえてくるのです。

最後に2人は念願が叶って植物になります。これって見方を変えれば心中。男が少女と禁断の恋の果てに心中するように、女性が少年を愛してしまい、永久に一緒にいるために植物になってしまった。もちろん植物だって枯れますけれど。

さて演じた立脇実季さんと井手尊飛君。とにかくセリフが聞き取りにくくて何を言っているのか理解するのに苦労しました。おまけに感情のこもらない棒読み。たぶんこれは演出だとは思います。人間の感情が薄くなってしまった二人を表現するために。

植物園の中で絵を描く少年、航(コウ)と会った。
植物になりたい女性は、なぜかコウに惹かれた。
それからコウと女性はデート?を繰り返す。
歳の差なんて関係なし。コウの笑顔...


女性がバイトするコンビニにやってきたコウ。
人前では笑顔も見せず、素っ気ない。
どこへ行く時も、植木鉢を引っ張っている。
これは僕の犬なんです。


加茂川の河原でデートする女性とコウ。
(この近くに京都市植物園。私も1、2度行ったかな)
コウは散歩を禁止された。祖父が女性を怪しんで。
祖父は女性に「警察に通報する」と警告した。


女性はコウを拉致することに。
既にコウは植物化が進行。歩けない。
木の根元。コウは眠るように植物になっていく。
(最近よく聞く「樹木葬」が頭に浮かんで...)



※後記
人間が植物になる。昔、少女ホラー漫画かなにかで、ブドウの種を捨てるのが面倒で飲み込んだ男。種が体内で発芽して人間を乗っ取ってしまう、そんな話があったと思います。また海外のホラー小説で「みどりの想い」のようなタイトルも。本作は心地よいのですが、植物になるというのは怖い話の方が印象に残っています。

また植物ではありませんが、故ショーケン(萩原健一)がテンプターズ時代の♪エメラルドの伝説という歌。低学年だった私はこの歌が怖くて仕方ありませんでした。湖に君は身を投げた...緑の瞳に僕は魅せられた...自殺した恋人に呪われているようで。ファンの方、すみません。





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