友よ静かに瞑れ (1985年)

作品総合評価 6点
少年の出番 30%(出番は少ないが、本作品のキーマン)
寸評 沖縄を舞台に、臆病な少年は殻を破れるか。
【少年映画でない理由】出番過少
映画情報など 1985年公開。DVD発売済み。写真は六浦誠君。


少年俳優、六浦誠さんが出演しているのは知っていましたが、チョイ役だろうと思って、これまで見てきませんでした。今年(2016年)になって、BSの日本映画専門チャンネルで何回か放送があり、録画して鑑賞しました。まずキャストクレジットでは、かなり上の方に六浦誠さんの名前があるので、これはと期待。

ラストの悲劇が迫る中、藤竜也さん演じる男についていく少年
■ストーリー

ある中年の男(藤竜也さん)が、学生時代の親友に会うため、沖縄の地方の町へやってきた。友人の経営するラブホテルの場所を尋ねるが、町の住民は返事もしないで、男を迷惑そうに遠巻きにしているだけ。

この地方を牛耳る建設会社が、周辺の土地の買収(いわゆる地上げ)を企画。金やヤクザを使って住民の反対を押し切っていたが、ただひとり友人だけが反対していた。地元の警察も抱き込み、ささいな事で友人を別件逮捕してしまったのだ。

とりあえず友人のホテルに泊まった男は、友人の息子、竜太(六浦誠君)の様子がおかしいのに気がついた。竜太はヤクザに愛犬を殺され、誘拐されて脅されて学校にも行けなくなっている。男は建設会社との対決を決意した。

建設会社の用心棒(肩書きは部長)、ヤクザに襲われながらも警察と会社の癒着の証拠をおさえ、友人の釈放にこぎつけた。男は竜太を釈放の現場に連れて行った。そこで、竜太の父である友人は、思いがけない行動を取った。悲劇となるが、一方事件は解決した。その一部始終を竜太に見せて、男は去っていった。

■手垢のついたストーリーですが、ちょっと違う

悪代官とヤクザに虐げられた村へやってきた浪人、あるいはギャングに支配された西部の町にやってきたガンマン、少年を男にして、またどこへともなく去っていく。西部劇ならシェーン、日本なら高倉健さん、本当にワンパターンなのですが、どこか違うような気もします。

一つは沖縄が舞台であること。1985年製作ですから、今の辺野古騒動はまだ起きていないと思いますが、なんとなく重なって見えるのです。もちろん国策の基地造成と、悪徳業者の開発を一緒にする訳にはいきませんが、地元の住民が対面する問題は同じです。(どちらがいい、悪いをここで書くつもりはありません)

もう一つは、監督が崔洋一さんであること。実は崔監督の作品はあまり見ていませんが、何か一筋縄ではいかないような気がするだけかもしれません。北野武監督の一連のバイオレンス系映画の原点みたいな感じもします。うまく書けませんが、とにかく藤竜也さんがカッコ良かったのは間違いありません。

■六浦誠君

さて少年俳優の六浦誠さん。この頃はテレビドラマに引っ張りだこだった様子です。あの倉本聰氏の「北の国から」にも呼ばれていますし。鬼太郎や、後年の名作ドラマ「少年」もありました。

本作品でも出番は少ないのですが、このドラマの主題を演じるキーマンであると言ってもいい役です。藤竜也さん演じる男、その男の親友である父、二人が命を張って、少年に「男の勇気とは何か」を教えてくれるのが、本ドラマの主題だったと思います。

しかし少年は二人の期待に沿うことは出来たのでしょうか。父は少年に何もしゃべらず、まるで自爆するように逝ってしまいました。男も「お前には失望した」というように去っていきます。

でも、どうやら少年は変わったようです。二人の気持ちを判って、大きな男になっていくのではと思わせるラストシーンでした。

どうでもいい話ですが、本作品で一つ気に入らない点があります。舞台は沖縄で、しかも夏なのに、六浦君の服装が暑苦しいこと。なぜずっと長ズボンなんでしょうね。1シーンだけ半ズボンのカット(右)がありましたけれど。

みんなの写真撮影では明るい表情を
悲劇に顔を背けるが、男に首を掴まれ、見るんだ!





▼イーストエンド劇場へ戻る   ▼少年映画第5部へ戻る