赤目四十八瀧心中未遂 (2003年)

作品総合評価 8点
少年の出番 5%(ほんの少しでも印象的)
寸評 映画は力作。尼崎の下町が抜群。
【少年映画でない理由】出番が少ない
映画情報など 2003年公開/DVD発売済


2010年9月19日、キネカ大森(東京)にて鑑賞。秋の3連休。今回は鎌倉で少年合唱団のコンサートを鑑賞するのが主目的で東京に前泊。鎌倉にも泊りたかったのですが、観光シーズンなので避け、東京でも神奈川に近い大井町に。

大井町駅のコインロッカーに荷物を預け、1駅電車に乗って大森。駅前の西友5F、インド料理店で昼食バイキングをさっと済ませ、本作の鑑賞です。このキネカ大森はもう何回も来ていますが、西友はいつも閑古鳥が鳴いている感じです。5Fの飲食店フロアもよく利用するだけに、閉店とかにならないよう、頑張って欲しいものです。

■ストーリー

生島(大西滝次郎さん)は、まだ若いのに人生に挫折感を抱き、東京から尼崎の下町に流れてきた。陽の当たらない狭いアパートで、一日中、焼鳥のクシ刺しのバイトに明け暮れていた。そこで刺青の彫り師の愛人の綾(寺島しのぶさん)と出会い、一目惚れ。

綾は、ヤクザや得体の知れない連中にも囲われるているが、生島は逢瀬を重ねるうちに、綾から外の世界へ一緒に行こうと持ちかけられ、二人は三重県にある赤目四十八瀧へ向かう。そこで自殺するためなのか、よく判らないまま、幻想の世界をさまよう事になる。

■やや難解な文芸作品

本作品は2003年公開でキネマ旬報2位、また寺島しのぶさんが、日本アカデミー賞など主演女優賞を総ナメにするなど、評価の高い作品でした。今回は寺島しのぶさんがベルリンで銀熊賞を受賞したこともあり「寺島しのぶ特集」としてリバイバル上映されたものです。

私も題名くらいは知っていましたが「心中未遂」なんてタイトルなので、あまり興味もなく、詳しいストーリーも知らないまま、今回初めての鑑賞でした。見終わった時、古き昭和の文芸映画の匂いを久し振りに感じました。ちょっと暗くて、男女の激しい色情があって、先の見えない焦り、地味だけれどズシーンと来るものが。

しかし時代設定は昭和ではなく、ほんの10年前、阪神大震災の5年後との事です。なのに、なぜこんなに古めかしく感じるのでしょうか。それは、尼崎のせいなんでしょう。映画の舞台になった阪神尼崎駅近くのゴチャゴチャとした下町、いや貧民街か。
(ちなみに、現実の尼崎市は、整備されて綺麗な街ですよ。この映画では戦後すぐの闇市みたいに撮られていますけど。)

東京から流れてきたインテリ学生くずれ(新人俳優の大西滝次郎さん)の視線で描かれていますが、いわゆる私小説を映画化したため、主役のキャラクターは見えてきません。寺島しのぶさん、モツ焼屋の女将(大楠道代さん)の2人の女優の存在感が抜群。彫物師役の内田裕也さんのインパクトも絶大でした。

ところで少年俳優も3人登場します。正確には2人と1体というべきですが。映画の冒頭と最後に出てくる虫捕網を持った少年は、主人公自身の子供時代の幻影なんでしょうか。少年のマネキン人形。老夫婦が、震災で亡くなった少年の分身として連れて歩いています。非常にリアルな少年人形で、艶かしい感じさえします。(「オーマイキー!」というマネキン映画を思い出しました。)

そして、主人公と同じ尼崎のボロアパートに住んでいる晋平(榎田貴斗君)という少年。彫物師と同じ部屋に住んでいますが、息子なのか孫なのか素性は判りません。この晋平少年、なかなか印象的な役どころで、楽しめました。もうちょっと出番があってもよかったと思います。

2時間40分の大作でしたが、映画館のスクリーンに集中することが出来ました。こんな映画こそ、ワイドサイズのスクリーンで見れて本当に良かった。皆様、特に尼崎近辺にご在住で、まだ見ておられない方、必見ですよ。






▼イーストエンド劇場へ戻る   ▼第5部トップへ戻る