ルート225 (2005年)

作品総合評価 5点
少年の出番 90%(準主役ですが)
寸評 日常に潜む異次元ワールド。意外にも爽やかでした。
【少年映画でない理由】完全な少女映画
映画情報など 2005年公開。DVD発売中。
(写真は、弟役を演じた岩田力君)


これは、多部未華子さん主演の少女映画との認識で、ずっとスルーしていました。しかし弟役の岩田さんが、いい味を出しているとのレビューも多く、機会があれば見ようと思っていました。

そんな時、大阪は日本橋にある中古DVDショップで、超安売りの中古DVDを見つけて購入したのは1年前。最近になってやっと鑑賞しました。予想通りの内容でしたが、それなりに楽しめました。今回のレビューはあっさり目で。

■ストーリー

主人公は中学2年生の田中エリ子(多部未華子さん)。1つ下の弟ダイゴ(岩田力君)、両親の4人家族。郊外の1戸建住宅に住み、どこにでもいる、ごく普通の家族だ。ある日の夕方、エリ子は母から、帰りの遅いダイゴを迎えに行くように言われ、何の気なしに家を出た。これが両親を見た最後になるとも知らず。

ダイゴは近くの公園にいた。学校でイジメに会い、落書されたシャツをカバンに入れて。エリ子は、情けない弟に舌打ちしながらも、一緒に帰り始める。しかし、いつも歩く道なのに家にたどり着けない!やがて海岸へ出る。海なんて近くにないだろう!町名だっておかしい!パニックになりながら歩くうちに、やっと自宅が見えてきた。

やれやれ。ただいま〜っ。あれ?誰もいない。どうなってんだ?どうやらここは別次元の世界。両親はいないが、自宅も、街も、学校も、友達もそのままだ。いや微妙に違う!なんと小学生の時に死んだ少女が、この世界では生きていて中学生になっているのだ。

姉弟は元の世界に戻るため、次々と涙ぐましい努力を始める。しかし結果は伴わなくても、姉と弟は互いに2人の絆を強め合っていく。

■典型的な、ジュブナイル版アナザーワールドもの

ストーリーは本当によくある話。昔のNHK少年ドラマシリーズ(謎の転校生、タイムトラベラーなど)や、近くではNHK教育の天才テレビくんの中のドラマ(これと比較するのは気の毒かもしれませんが)などと同じようなもの。しかし、さすがに映画ですので、非常に丁寧に作られています。

予算が無かったからかもしれませんが、変な特撮やCGを使わず、日常のドラマのように淡々と撮っている事に好感を覚えます。それと主役の多部さんの透明感がマッチしていて、あっさりですが、十分楽しむことが出来ました。

■さて、少年俳優のこと。

岩田力君の最初の登場シーンは、公園で一人ブランコに乗っているところ。ランニングシャツ1枚で、太った背中を見せています。なんだ、裸の大将じゃないですか。(パンツ一つで放浪した画家の山下清氏を芦屋雁之助さんが演じていました。知っています?)

ちょっとなあ〜、なんて大変失礼なことを思いながら見ていましたが、確かに、なかなかいい味を出しています。身体に似合わず気の弱いところが、妙に好ましく思えてきます。演技やセリフもしっかりして安定感があり、そういう意味では、いいキャスティングかもしれません。

しかし多部未華子さんと姉弟というのはどうでしょう。似ているなんて書いているレビューもありましたが、これは言葉の綾としか思えません。

■大女優・多部未華子さん

DVDの特典映像は、多部未華子さん特集でした。監督さんやスタッフ全てが、彼女に気を使っている事がありありと見えています。やはり少女俳優とはいえ、大物なんでしょう。弟ダイゴ役も、多部さんを引き立てるようなキャスティングにしたのだろうと思います。

ただ、多部未華子さん自身は何かを持っている事は確かです。メイキングを見ていると、大した努力をしなくても、自然体の演技で光っているように思います。また監督やスタッフに愛されるのも、天性のものかもしれません。

これは多部さんに限らず、女優さんに共通するものかもしれません。一方、少年俳優が主役の映画なのに、監督さんのインタビュー等を見ると、少年俳優に対して、ものすごく冷たい感じを覚える事も多々あります。ただ往々にして、そんな監督さんの映画の出来はよくありません。

主役と心中するくらいの熱心さで取り組む。そのためには、おだてるだけでなく、時には厳しい鉄拳?を飛ばしたって構いません。おっと「ルート255」とは違う話になってしまいました。この映画はここまで。






▼イーストエンド劇場へ戻る   ▼第5部トップへ戻る