14歳 (2007年)

作品総合評価 7点
少年の出番 20%(チョイ役)
寸評 エゴと甘えの中学生日記
【少年映画でない理由】出番が少ない事
映画情報など 2007年公開/DVD発売済(写真は染谷将太君)


PFF(ぴあフィルムフェスティバル)で才能を認められた監督が、制作から公開まで支援を受けるスカラシップというシステムで作られた作品。

見終った後に、イヤ〜な気分が抜けないストーリーでした。もちろん、暗い中にも、終盤はうっすらとした光明も見えるのですが、なぜ、お金を払ってこんな嫌な気分にならないといけないのでしょうか、という疑問が残りました。

■ストーリー

14歳の時に放火の罪を疑われ、教師の背中を刺した女子中学生の深津と、それをみていた同級生の男子中学生の杉野。年月が過ぎ、深津(並木愛枝さん)は更生して教師になり、杉野(監督の廣末哲万氏が演じる)は測量士となり、物語が始まる。

深津のクラスはいじめが横行しているが、深津はそれを処理できないどころか、自身も精神科に通う始末。ある日、クラスの生徒が起こした暴力事件に杉野が巻き込まれ、二人は再開する。杉野はひょんなことから、深津のクラスの男子生徒の雨宮(染谷将太君)のピアノを教える事になるが、全く気が乗らない。

深津のクラスではいじめが陰湿化し、生徒も教師もエゴ、甘え、逃避と、目も当てられない状況になる中、杉野もピアノを教える雨宮少年に酷い言葉を投げつけて陵辱する。雨宮少年は傷つき、杉野に復讐を企てるが、逆に杉野にコテンパンに暴行を受ける。しかし杉野は少年が憎くて暴行したのではなかった。

■染谷将太君

14歳というタイトル、またポスターではありませんが、染谷君が廣末さんに胸ぐらを掴まれているシーンがよく使われていましたし、クレジットには並木愛枝さん、廣末哲万氏に続いて3番目に染谷将太君が載っていましたので、主役クラスではと大変期待していました。

しかし、フタを開けてみると、ほんのチョイ役でした。女性教師と廣末さんの話が主体で、14歳の出演者では女生徒達がメイン。彼女らのエゴや陰湿さには、演技である事が判っていても参りました。(女性不信になりそう)

一方、染谷君は何とも大変な役。言葉で精神的に陵辱を受け、最後は肉体的にも暴行を受けますが、これが迫真の演技で、床に叩きつけられた時なんか、相当痛かったのではと思います。少年が痛めつけられるSM的なシーンがお好きな方には、良かったのかもしれません。私は暴力シーンだけは全く苦手です。

■監督が主演すると

監督でありながら主演した廣末さんですが、自分で自分をカッコいい青年や、正義の味方として描くのはテレがあるのでしょう。一見、エゴを持った嫌な男性のように演出していますが、やはりどこかクールにカッコ付けている臭いが漂ってきて、鼻につく所があります。

これは北野武監督と同じようなモノを感じます(妬みかもしれませんが)。しかし映画監督としての廣末さんには能力を感じます。2時間ずっと画面に緊張を維持し続けた手腕は見事だと思います。この作品で平成19年度芸術選奨 文部科学大臣新人賞を受賞されたとの事。

■しかしながら結論的には

この映画を少年映画と認定する訳にはいきません。出てくる人物がみな、自意識過剰、エゴ、甘えに支配されており、それらの人物が織り成す、イビツな「中学生日記」だと思います。上記のように新人賞を受賞するなど評価が高い作品である事は認めますので、次の廣末作品がどのように変わるか、期待したいと思います。

補遺(ご冥福)
この映画のパンフレットを読み返してみて、ドキュメンタリー映画監督の佐藤真氏が論評を寄せている事に気づきました。「阿賀に生きる」「エドワード・サイード OUT OF PLACE」など秀逸なドキュメンタリー映画を作られましたが、惜しくも昨年逝去されました。うつ病による自殺のような報道がありました。この「14歳」の嫌な後味とオーバーラップしてなりませんが、冥福を祈ります。






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