セジと少年合唱団 (2009年)

作品総合評価 3点
少年の出番 20%(ほんの端役)
寸評 東北の素朴な農村の物語
【少年映画でない理由】出番が少ない
映画情報など 2009年制作/DVD発売済


■東京藝大映画専攻第三期修了制作作品

東京藝大は、美術や音楽など芸術家を目指す方にとって、国内では最高峰の大学だと聞いています。(聞いています、なんて言葉を使ったのは、科学者、技術者が夢だった私にとって、全く縁の無い世界だったからです。)

もっと高尚?な芸術を研究する東京芸大では、映画なんて軽んじられていたのかもしれません。それが、北野武さん、黒沢清さんなどの有名監督を教員に招き、この数年で非常に力を入れてきた感じがします。

この第3期の修了制作作品の一般公開上映で「よるのくちぶえ」を見て、その出来に驚いた事は、別の記事で書きました。驚いたどころか、最終的には2009年の少年映画大賞・青輝賞の最終優秀作品に選出。

「よるのくちぶえ」以外にタイトルだけ見て気になっていたのが本作品「セジと少年合唱団」でした。映画館では見れませんでしたが、東京藝大で発売されDVDで鑑賞しました。結果としてこれは、少年映画ではありませんでした。

■ストーリー

東京で教科書出版社に勤める成司(島守杏介さん)は、東北で生まれたが、幼い頃に両親が離婚。母と東京に出て新しい父のもとで育った。そんな成司に、生まれ故郷の東北での営業のため、長期出張命令が下った。1人で暮らす実父の家に起居する事になったが、成司は実父に対してわだかまりを押えることが出来なかった。母と自分は捨てられたのだ。

ひょんな事から、近所の3人の小学生と知り合いになり、子供たちから「セジ」と呼ばれて、年の離れた友達のような付き合いが始まった。そんな時、過労で実父が倒れてしまった。

すっかり弱ってしまった実父に、東京から来た婚約者(既に子供を妊娠中)を紹介したり、宮沢賢治の「星めぐりツアー」企画や、子供たちの音楽会を通して、教師だった実父の思いを聞くうちに、わだかまりが解け、父への愛情が芽生えてきた成司だった。

■少年合唱団はどこに

タイトルに「少年合唱団」とあり、いつになったら出てくるのか?と思っているうちに映画は終わってしまいました。強いていえば、3人の小学生が宮沢賢治作詞作曲「星めぐり」を歌ってくれましたが、ここが少年合唱団なのかもしれません。歌は下手とはいいませんが、思い描いていたようなボーイソプラノとは全く違うものでしたので。

基本的にこの映画は、成司とその実父との確執と融和の過程を描いたものであり、出てくる少年たちは、あまり意味のある存在ではありませんでした。タイトルの付け方も問題かもしれません。

■東北地方=宮沢賢治、少しマンネリ

宮沢賢治氏の童話や小説は殆ど全て読んでいます。ですから決して嫌な訳はありません。でも、あまりにも軽く使われると、何だかなあ、と白ける気分を否定できません。特に「星めぐり」のメロディは、どこか、あか抜けない感じで、あまり好きではありません。(尊敬する宮沢賢治氏ではありますが、音楽の才能は?だったのかもしれません)

映画の中で、ほんの少しだけ聞こえてきた「マイ・バラード」こちらの方が合唱曲としては好きです。話は外れますが、私が趣味として鑑賞している日本の少年合唱団のレパートリーの中にも必ず入っています。

■学生映画として。

少年映画ではありませんでしたが、監督、脚本の十文字香菜子さん、脚本は基本をしっかり押えており、今後はきっと活躍されるのだろうと思います。この映画の致命的な欠点をあげるならば、成司を演じた島守杏介さん以外は、演技とはいえないレベルだった事でしょうか。

特に実父役の方と3人の小学生のセリフは、とんでもない棒読み状態。まあ制作時間など制限があったのかもしれず、あまり責めるのは酷でしょうか。同じ修了制作の「イエローキッド」「よるのくちぶえ」とは少し差があったと思います(あくまで私の感想ですが)。しかし、次は頑張っていい作品を作って下さい。






▼イーストエンド劇場へ戻る   ▼第5部トップへ戻る