海炭市叙景 (2010年)

作品総合評価 8点
少年の出番 20%(全5話の1話)
寸評 少年俳優の出番が少ないのですが、見応え十分の大作
【少年映画でない理由】出番が少ない事
映画情報など 2010年公開/DVD発売済
(写真は、印象的だった小山燿君)


2011年1月8日、シネ・ヌーヴォー(大阪)にて鑑賞。

仕事始めでやや疲れた心身に、この成人の日を含めた3連休は助かります。なるだけ有意義に使おうと映画鑑賞する事に(私にとって映画鑑賞は有意義なんですよ)。北海道や東京では昨年から公開中ですが、ようやく大阪で封切になった「海炭市叙景」を見ることにしました。

年末にみた「ヘヴンズストーリー」と今回の「海炭市叙景」の2本は、少年映画でなくても見たい作品としてマークしていました。いそいそと大阪は九条のシネ・ヌーヴォーへ。(大阪のミニシアター文化は、ここと第七藝術劇場の2館だけ)。初日とあって結構混んでいました。

■ストーリー
北国の架空の都市、海炭市(函館市がモデル)を舞台に5つの哀しい物語が交差する。造船所をリストラされた兄と妹、立ち退きを迫られる老婆、路面電車の運転手、プラネタリウムの職員、若いガス営業店の社長と息子の少年、それぞれが寂しい北の街で生きている。

■北の街。なぜ惹かれるのでしょうか
北の街を走る路面電車

予告編はなく、熊切監督、谷口美月さん、加瀬亮さん、など出演者のコメントがビデオ上映され、本編の開始。ヘヴンズストーリーは9話でしたが、本作は5話の連作形式。独立した話ですが、各話とも出演者は微妙につながっています。

そして最終話で、実はこの5つの話が同時進行していた事が明らかになります。夜の路面電車の中と外に出演者全員がさりげなく揃います。この辺りは下手をすると作為的な脚本が鼻につくのですが、本作はうまくまとめています。

ただ、5話を通して強いメッセージ性があるのか、というと、これは残念ながらインパクトはありません。どの話も物悲しく、切ないのですが、それに対して明確な結末は描かれていないので、ハリウッド映画のような起承転結を好む方には、頼りない映画だろうと思います。

私は生まれが西日本のため、北海道など北への憧れみたいなものがあり、観光都市ではない函館市の町並み、特に路面電車をみているだけで心が躍りました。でも、こんなショボい街に描かれて、函館市の観光関連の方は不満かもしれませんね。私は魅力いっぱいでしたけど。(そういえば、昨年みた映画「ACACIA」も函館が舞台で、路面電車がロマンチックでした)

小山燿君

ところで、熊切和嘉監督といえば映画「アンテナ」。やはり加瀬亮さんが主演でしたが、木崎大輔君という少年俳優もインパクトがありました。本作品は少年俳優は一切期待していませんでしたが、本作品の小山燿君は思わぬ拾い物をした気分でした。(出番は少ないですよ。)

3話の主人公はプラネタリウムの管理人(小林薫さん)。そのプラネタリウムに毎晩のように通ってくる少年役。黒いランドセルを背負っていましたが、最初は女の子かと思っていました。そして4話の主人公・加瀬亮の息子役として再登場。継母から虐待を受けていますが、父からは溺愛されている少年。もうちょっと出番が多ければよかったのですけど。

家に帰って映画のチラシをよく見ると、小山君がアップに。全く気づいていませんでした。知っていればもっと期待していたのに。例によってパンフレットには何の紹介もありません。ネット検索すると、東京の児童劇団等の子役ではなく、地元の素人さんとの事。(難しい字で名前のよみ方もよく判りません。ごめんなさい。)

この映画の主演女優の位置づけで、第1話に登場する谷口美月さん。彼女の少女時代に雰囲気が似ています。チラシを見た時、別に谷口さんと勘違いした訳ではありませんが、なぜか少年俳優という認識がありませんでした。因みに全くの蛇足ですが、谷口さん、ちょっとポッチャリ気味になって、本当に可愛い女優さんに変身しています。

原作者の佐藤泰志氏は残念ながら自殺されたとの事ですが、どうしても原作が読みたくなり、Amazonで発注していますが、品薄との事です。一見メリハリのないストーリー展開ですが、こんな雰囲気の作品が大好きです。できれば続編を見たいですね。皆様も、お近くの映画館で上映されていれば、是非ご覧下さい。






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