蛇のひと (2010年)

作品総合評価 7点
少年の出番 15%(少年時代の回想のみ)
寸評 少年時代の暗い影が不幸を招く。
【少年映画でない理由】出番が少ない事
映画情報など 2010年公開。DVD発売中。(写真は桑代貴明君)


衛星放送WOWOWで放送されたテレビドラマですが、劇場公開もされていますので、ここでは映画として、取り上げます。本作品は、DVDにて鑑賞しました。

ちなみに、2012年の年末から、管理人もようやくWOWOWに加入。有料なのは財布に厳しいものの、質の高い映画やドラマが、ハイビジョン高画質で放送されています。なんで、もっと早く加入しておかなかったのかと後悔の念さえ(WOWOWさん、よいしょしておきますので、視聴料下げてくださいね。)

■ストーリー

ある商社の部長が自殺。同時に課長の今西(西島秀俊さん)が失踪。今西は約1億円の横領の疑いが。会社は今西の部下の三辺(永作博美さん)に調査を命じる。(素人のおばちゃんOLに、こんな大事件の捜査をさせますかね?)三辺が調査するうち、今西と関わった人間が、なぜか不幸になっている事を知る

今西の少年時代の生家は由緒ある義太夫の家元。しかし、ある事件で今西以外は死去。今西と幼馴染だった男(板尾創路さん)に少年時代の凄惨な話を聞くことになった。小学生の今西(桑代貴明君)妾の子だが、父である師匠に弟子入りし、めきめきと才能を発揮するが、正妻の子である兄(久野雅弘さん)や、兄弟子からは、激しい苛めを受けることになる。

今西が唯一、心を許せるのが、同じ年の弟子(大塚智哉君。後の板尾創路さん)だった。ここから、今西の黒い復讐が始まる。それは綿密に計算されたものだった。才能を隠して下手に振る舞い、師匠の信頼を失う。跡継は兄に決まったも同然。ところが兄の初舞台の日。付け人だった今西は、兄を騙し、舞台の時間を伝えない。幕が上る直前、なんと、兄の代りに今西少年が登場。

師匠は驚くが、大勢の客を前に、後には引けない。なんと今西は完璧な義太夫を披露する。観客の万来の拍手の中で、遅れてやってきた兄は唇を噛み締めるだけ。そして惨劇が起った。将来を悲観した兄が、父である師匠、母、弟子たちを次々と刺し殺し、最後に自殺する。なぜか今西少年には手を出さない。(これはちょっと納得できません。自分を貶めた張本人に、まず刃を向けるのが普通だと思うのでが。)

少年時代の今西には、蛇のこころが棲みついていることを知った三辺。そのまま東京へ戻る。やがて、三辺の婚約者の会社に、今西がいることが判る。さて、どうなるでしょうか。

■別物語である少年時代回顧編

サスペンスドラマとして高評価を得ている本作品。脚本的には、やや疑問な部分もありますが、主演の西島秀俊さん、永作博美さんの熱演もあり、非常に見応えのあるドラマになっています。

少年時代の回顧シーンは20分もありません。しかし、この回顧シーンは別ドラマと言っていいほど、密度の濃いものを感じました。まあ少年俳優が主役ですから。

そして何と言っても桑代貴明君。関西弁の拙さはありますが、それを補って余りある存在感。目、セリフ、そして手足の長い肢体。どれを取っても少年俳優の絶頂期としての美しさに見惚れました。せめて、もう30分くらい、桑代君の出番があって欲しかった。これはゼイタクでしょうか。

修行する少年。後ろは大塚君。
廊下掃除する桑代君。半ズボンから伸びた脚が美しい

■もう一人。忘れてはいけません。大塚智哉君。

本作における桑代貴明君については、子役や少年俳優ファンのサイト等で語り尽されているといっても過言ではありません。しかし、共演していた大塚智哉君については、全くと言っていいほど顧みられることがありません。

幼い頃からテレビに出演し、少年俳優として輝いている桑代君と比較されてしまうと、どうしても地味に見えてしまいますが、彼には彼の魅力があります。この映画でも十分に発揮されていました。

ちょっとエキゾチックな顔立ち

映画「大阪ハムレット」で、女の子になりたい少年を演じた大塚君。そのままの延長線上のような雰囲気が、義太夫の世界の中で、うまくマッチしています。(同じ「大阪ハムレット」組の久野雅弘さんも、やや可哀想な役柄でしたが、熱演でした。)

桑代君と大塚君のコンビ。桑代君が意思の強い男性的なキャラに対し、大塚君はどこか女の子のような雰囲気。これは非常に面白く見れました。このコンビで長編映画を作ってくれたら最高でした。日本では需要も無いので無理かもしれませんが。

それにしても、大阪の少年俳優は、どうしても仕事に恵まれません。かつては関西製作のテレビ番組、少年ドラマも多くあったのですが、経済基盤の低下はどうしようもありません。橋下さん。大阪都構想もいいですが、文化や芸術の面で、もっともっと関西を復権して欲しいものです。






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