星守る犬 (2011年)

作品総合評価 5点
少年の出番 5%(少しだけ)
寸評 死への旅。西田敏行さんの演技が秀逸
【少年映画でない理由】出番が少ない事
映画情報など 2011年公開。DVD発売中。


2011年6月25日、ワーナー・マイカル・シネマズ大日(大阪)にて鑑賞。今回は、おイヌ様映画です。きっかけは本館サイトの掲示板に投稿があり、興味を覚えたからです。もともとイヌが出てくる作品は、なにかTV局の営業戦略に陥るのがイヤで敬遠していました。

苦しい時のおイヌ様だのみ。イヌさえ出しておけば、それなりに客が入る、そんな安易が雰囲気が嫌いでした。今年だけでも、本作以外に「わさお」「犬飼さんちの犬」「ロック〜わんこの島」と4本も。でも、本作を見てみると、いろいろ考えさせられる映画でした。

■ストーリー

北海道で、ある男性(西田敏行さん)と犬の行き倒れ遺体が発見される場面から始まる。映画は時間を遡って、男性と犬の、死出の旅の様子を描写する。同時並行的に、遺体を発見した市の役人である奥津(玉山鉄二さん)が、男の過去を調査しながら、旅をたどっていく。なぜ男は死ぬことを決めたのか。途中でどんな出会いと別れがあったのか。

■犬よりも、老人のロードムービーに心を打たれます

まず、いきなり悲劇の結末が明かされるところから映画がスタート。死んだ男の行程を辿っていく市役所職員が実質的な主役です。なぜ市役所職員が初老の西田さんの人生に興味を持ったのか、動機が明確に描かれてはいませんが、主人公として感情移入はなんとか出来ました。

1.人間にとって真の伴侶は犬だけ。これでいいの?

ネタバレですみません。西田さん演じる初老の男性。長年勤めた工場に裏切られ、妻と娘に裏切られ、行きずりで出会い、いっとき父子のように親切にしてあげた少年に裏切られ、最後に残ったのは犬。

「犬は決して裏切りません。皆さん、人間なんて捨てて、犬を伴侶にしましょう」こんなことを訴えたい映画なんでしょうか。決してそうではないと思います。でも、あまりに救いが見えない。悲しみの先に、青空がみえない、そんなもどかしさが残りました。

2.キャストについて

主役の玉山さん。イケメンですが、あっさりしすぎ。でもこの映画ではそれが適役でした。変に自分の色があると、この映画の主題である西田さんの役が生きてきません。

西田敏行さん。関西ではお化け番組「探偵ナイトスクープ」の西田局長として大人気ですが、その色がつき過ぎていることを懸念していましたが、さすがです。西田さんが出ているだけで、画面が安定してきます。全国区では「釣りバカ日記」のハマちゃん、なんでしょうが、こちらは知りません。

一番、疑問だったのが、川島海荷さんの役。彼女には申し訳ありませんが、この映画のクォリティを低下させている最大の原因のように思います。TVの2時間ドラマならば必要な役かもしれませんが、映画ではどうでしょう。

「客寄せ」の意味しか見出せない脚本。これでは川島海荷さんにも失礼じゃないでしょうか。キネマ旬報のある批評家は、川島さんの役を、主人公の玉山さんが、かつて飼っていた犬の精(=生れ変り)のような存在と解釈していましたが、それにしても脚本が練れていない気がします。

3.行きずりの少年。その後。

海辺で座る西田さんと少年、そして犬。この場面が映画の中で一番好きなのですが、結末は悲惨。この少年、虐待され、食事も満足に与えられていない。そして精神も歪み、犯罪に走ってしまう。そんな厳しい人生で、西田さんとの僅かな時間、子供らしい感情が芽生えたように思ったのですが。

映画では、少年のその後は全く不明。彼が老人の死を知ってほんの少しでも変ってくれれば、この映画の先に青空が見えたのですが。ちなみに、演じた子役さんの氏名はパンフレットでもネットでも判りませんでした。この映画の推薦投稿をしていただいた方によると、平田敬士くんということです。

4.最後に

もう一つ消化不良の感じが残ります。できれば外伝的な続編があればいいのですが。原作は漫画らしいですが、これを読むことも一考します。喰わず嫌いの、おイヌ様映画でしたが、意外にも面白かった。そんな印象です。






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