HOME 愛しの座敷わらし (2012年)

作品総合評価 4点
少年の出番 40%
寸評 小説の感動はどこに。印象の薄い映画。
【少年映画でない理由】出番が少ない事
映画情報など 2012年公開。DVD発売中。(写真は濱田龍臣君)


2012年4月28日、天王寺アポロシネマ8(大阪)にて鑑賞。今年のメジャー邦画作品で唯一の少年映画として期待していた作品がいよいよ公開です。でも例によって、試写会のレビューなどを読んでいるうちに、トーンダウンしてくるのには困ったものです。

萩原浩さんの原作小説を読んだのが、ほぼ1年前。上下2冊の文庫本でしたが、あっという間に読了。内容としては、文学というよりもベタな大衆小説ですが、座敷わらしの子の描写が可愛くて、切なくて、切なくて、ずっと心に残りました。

■ストーリー

左遷されて、東京から東北へやってきたサラリーマン(水谷豊さん)の一家が住むことになった古い民家。ところが家には座敷童子が住みついていた。長男(濱田龍臣君)と、少し惚けの始まった祖母の2人はすんなり童子を受入れるが、両親と姉は、それぞれ自分の抱える悩みのせいで童子を見れない。

しかし座敷童子は福の神。バラバラだった家族が次第に一つにまとまっていく。でもそんな時、東京に戻ることになった。さて童子は。

■薄味、うすあじ、サラサラのスープのような映画

映画としては、ほぼ原作をなぞった脚本で、決して失敗作では無いのですが、どうにも物足らない印象は拭えません。毎朝、パンと一緒に粉末のポタージュスープを飲むのですが、今日は買い忘れて1袋しかありません。仕方ないので家族3人で1袋で3杯作ってしまった、そんな感じの映画です。

濱田龍臣君は重宝されて
(でも大半は添え物として)
■座敷童子の存在感が希薄すぎて

原作小説でも座敷童子は言葉は一言も発しません。それでも特に長男との交流の中で、童子の悲しい素性の一端が現れてきて切なさがつのります。でも映画はその部分をバッサリ短縮。水谷豊さん演じる父親のサラリーマン物語を中心に、イジけた姉、能天気な母親など、登場人物は多いので、まとまりがありません。

少年俳優の濱田龍臣君も出番は多いもののキーマンではないのが残念です。でも濱田君いるとスクリーンがパッと明るくなるような気がするのは私だけでしょうか。やっぱり、テレビ屋さんの作品 と言えば元も子もないのですが、テレビ番組の感覚で作られたのでしょう。それならいっそのこと、連続ドラマにした方が、原作の雰囲気を出せたのではと思います。

座敷わらしを女の子が演じていた事は、そう気になりませんでした。男の子か女の子かが気になるほど役柄に重みがなかったというべきかも知れません。(ちなみに、原作でも明示はされませんでしたが、少なくとも長男にとって童子は男の子であり、弟のように遊びを教えてあげるのが切なかったのですが。)

■「ユタとふしぎな仲間たち」の傑作ぶりを再認識

1974年にNHKで放送されたドラマ。これはたった1時間あまりのテレビ作品なのに、今回の映画よりもずっと作品密度が濃いと思います。座敷わらしを何とオッサン連中が演じていますが、その意味、社会性も素晴らしいものがあります。今回の映画のスタッフの方々は「ユタとふしぎな仲間たち」を見られたのでしょうか。(もちろん全く別の原作ですから、そんなの関係ねえ!かもしれません。)

辛口になりましたが、これは期待が過度に大きすぎたためで、原作も読まず、何の期待もせずに見られたら、よくできたホームドラマだと思います。決して見て損はありません。濱田龍臣君もチャーミングです。

ひとつ、昭和オヤジになって雷を落とすなら、水谷豊さん、女子中学生とは言え、娘に対して弱腰過ぎます。もっとバシっと言ってやらないと。






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