太秦ヤコペッティ (2013年)

作品総合評価 5点
少年の出番 30%(主人公の息子)
寸評 荒唐無稽なバイオレンス映画。
【少年映画でない理由】暴力表現
映画情報など 2013年公開。DVD等未発売。


2013年6月6日、第七藝術劇場(大阪)にて鑑賞。

ところで皆様、ヤコペッティってご存知ですか?イタリアの映画監督で、1970年代に「世界残酷物語」など、いわゆるグロに近い、実録・残酷もののドキュメンタリー映画を作ってヒットしました。私もいくつかを見た記憶がありますが、嫌な気分しか残りませんでした。

一方、太秦(うずまさ)とは、京都の地名。有名な映画村のある辺り。太秦ヤコペッティとは、京都の残酷物語なんだろうなあ、と漠然とした先入観はありましたが、全く予習していませんでした。

この日は、大阪市内へ出張があり、17:00には終了。そのまま帰るのも勿体ないので、阪急電車で十三へ行き、久し振りの第七藝術劇場へ。平日夕方なので空いていて快適でした。映画を見るまでは。

■ストーリー

主人公は、百貫省二(和田晋侍さん)という男。妻の佐奈(キキ花香さん)、息子の茂男(小沢獅子丸君)と3人で、狭い文化住宅に住んでいる。省二の夢は、巨大な磁石を使って家を建てること。巨大な円盤状の磁石を空中に浮かせるものだ。(原理不明。上の写真をご覧あれ)

そして夢を実現するため、仕事も辞めた。円盤の磁石は出来た。土地もある(この土地も怪しい。他人の土地かも)。家の壁は、牛皮で作る予定だった。ある晩、省二は、どこかの牛をナタで殺し、皮を剥ごうと悪戦苦闘しているところを、警察官に見つかってしまった。(牛殺しのシーンは、かなりグロなので注意)

この警察官の小早川(北原雅樹さん)が、もう一人の主人公。警察官なのに気も弱く、腕力も弱い。しかし変な正義感だけは持っている。勤務が終ると、公衆トイレの個室に籠り、所轄管内にいる悪人連中のリスト作りに熱中している。さっさと逮捕すればよいのに、怖くて出来ないのだ。

小早川は、省二の「牛殺し」を見逃す代りに、悪人の闇討ちを依頼する(必殺仕事人の世界ですね)。省二は引き受けた。約束通り殺しはせず、半殺しで留めた。それを見ていたのは妻の佐奈。佐奈は異常性格のSだった。

夫が半殺しにした悪人を、後でこっそりと残酷な方法で殺してしまった。殺人の快楽を知った佐奈は、次々と殺人を重ねていく。(血みどろ、スプラッター)やがて、省二の「磁石の家」も完成に近づいた。さて結末は。

■ヤコペッティの意味は

イタリアのヤコペッティ監督の映画は、未開民俗の残酷な風習や、自然界の弱肉強食のドラマを、血みどろのリアリズムで描いたものでした。これは当時、世界で大人気のディズニー映画が描く、作り物の自然を題材にした作品を皮肉ったものと言われていました。

本作品も、残酷系という点は共通かもしれませんが、リアリズムに関しては説得力が全くありません。京都という、一見はなやかな都市の裏の闇を描きたかったのでしょうか。映画の中で、普通の中華料理店の店主が、実は中国系マフィアのボスで、悪事の限りを尽くしている。そんな事実があるのでしょうか。

■一方で、ほのぼのとした家族

バイオレンス、スプラッター、ナンセンス、グロテスク、そんな言葉ばかりが浮かんでくる本作品ですが、一方で、主人公の家族には、ほのぼのとした空気も流れています。その空気を作り出しているのは、幼い息子を演じた小沢獅子丸君の存在でした。

そんなに美形ではありませんし、セリフもたどたどしい感じですが、いるだけで、ほっとする空気を持っています。両親とも、何らかの暴力的な性格や行動をする中で、子供は無邪気なままなのが救いでした。子供まで暴力的に描くのであれば、もう見る気はせず、途中退出していたと思います。

キャスト紹介によれば、小沢獅子丸君は、その名が持つ雰囲気通り、大衆演劇の子役として、幼い頃から舞台に立っていたそうです。アクロバットなどが得意とのことですので、もう少し動きのある演出があれば、印象的だったかもしれません。

いずれにせよ、もう少し明るい映画に出て欲しいものです。






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