渇き。 (2014年)

作品総合評価 4点
少年の出番 40%(一応少年ではありますが)
寸評 半分ホラーのスプラッター映画
【少年映画でない理由】暴力表現、主題が少年でない
映画情報など 2014年公開。DVD未発売。


役所広司さん主演のバイオレンス映画である事くらいしか知りませんでした。あの映画「告白」の中島哲也監督作品ですので、少年映画ではないだろうし、全く関心はありませんでした。

ただ「告白」にもチョイ役で出演していた清水尚弥さんの弟、清水尋也さんが結構キーマン役で出演していることを知り、ただそれだけの理由ですが、鑑賞しようと思った訳です。う〜ん、今ひとつでした。

■ストーリー

粗暴な捜査で事件を起こし、警察を辞めた元刑事の藤島(役所広司さん)は、妻子にも逃げられて一人暮し。そんなある日、元妻から、娘の加奈子(小松菜奈さん)が行方不明になったと連絡を受けた。美少女で成績優秀だった娘の足取りを追ううちに、娘の裏の姿が見えてきた。加奈子の机から覚醒剤が見つかったのだ。

一方、映画は3年前の話が並行して展開する。中学生のボク(清水尋也君)は、酷い苛めにあう毎日だった。そんなボクを救ってくれたのが、学校一の美少女加奈子だった。加奈子は危ない連中と付合っており、その連中が苛めグループを排除してくれたのだ。

加奈子に恋をしたボクは、危ない連中のパーティに誘われて出かけたが、そこで薬物を飲まされた上、陵辱されてしまった。加奈子に騙されたのだ。3年後、失踪した加奈子の周りで何件もの殺人事件が起きる。

藤島は警察の後輩から情報を得ながら捜査するが、どうもおかしい。単なる覚醒剤密売事件ではない。やがて財界、ヤクザ、警察幹部まで絡んだ児童売春組織の一端が見えてきた。さて加奈子は見つかるのでしょうか。3年前のボクはどうなったのでしょうか。

■とにかくバイオレンス、血しぶき

映画の7割は、役所広司さんの暑苦しい顔のアップといって過言ではありません。元刑事が娘の足取りを追うだけのドラマなら、もっと静かな物語でもいいのに、これでもか、これでもか、と暴力シーンの連続です。どちらかと言えば、役所さんがボコボコにされるのですが、そこは映画のお約束で、スーパーマンのように不死身です。

映画の後半は殺人シーンのオンパレードで、血しぶきが舞いますが、B級スプラッター映画を見ているようで、非現実すぎて、かえって陰鬱さは感じません。(井筒和幸監督の「パッチギ!」なんかの方が、リアルな暴力シーンで嫌でした)

■突っ込み不足のエロス表現

本作品は、闇の売春組織がキーになっていると思うのですが、そこがぼかされているのです。私は事前にネタバレサイトを見ていましたので理解できたのですが、何も知らないと訳が判らないかもしれません。

社会的に地位のある層へ、少女たちを斡旋する組織があり、刑事の娘・加奈子は、この組織を暴露する行為に出たために抹殺されようとしていた訳です。もう一つ大きな事項が。売春するのは少女だけではないのです!少年だって売春させられてしまうのです。

加奈子の最初のボーイフレンドは自殺するのですが、どうもこの売春組織と関係ありそうですし、本作品のボクがされたことも、もう少し表現しないと、ボクの存在意義が見えません。

壮絶ないじめ。清水君の表情が・・

とうとう全裸にされて。さすがにアニメ表現

■清水尋也君について

さて、本作品でボク(なぜか一人称)を演じた清水尋也君ですが、思った以上に出番も多く、役所広司さん、ヒロイン小松菜奈さんに続く、堂々3番目のキーマンといっていいでしょう。

中島哲也監督のインタビューを読むと「オーディションで(小松菜奈さんの他に)清水尋也さんに出会って、初めて本作品の旅に出ることが出来ると思った」とありますので、監督が清水さんを非常に評価しているのだと思います。

少し残念な事は、映画の中の清水尋也君は、いつも血まみれで、普通の顔のカットが殆ど存在しないこと。(お兄さんの尚弥さんと同じように)服を脱がされたり、アニメですけれど全裸にされたりと、どうもM的な演出ばかりされているのが、可哀想といえば可哀想。

しかし彼は大人びて見えます。撮影時は14歳くらいだろうと思うのですが、中学生には見えず、高校生にしか見えないのです。兄の尚弥さんの方が童顔かもしれません。逆に言えば、尋也さんの方が、男らしい感じですので、将来は女性にモテるイケメン俳優になるように思います。

私見をいえば、私はどちらかと言えば、兄の尚弥さんの方が中性っぽくて、好みではあります。それはさておき、これだけ映画の中でキーマンで、熱演しているにも関わらず、やはり世間は冷たいものですね。

■映画プロモーションでの清水さん外し

これは最近の日本映画ではいずれも同じですので、今さらぼやいても仕方ないのですが、映画の舞台挨拶、インタビュー記事、パンフレット等では、少年俳優のことがスルーされています。3番目のキーマンですので、一言くらい記事にしてくれてもいいのに、残念なことです。

DVDかBDには、メイキング映像が特典としてつくと思うのですが、出来ればその際には、数分でも清水君のインタビューがあることを期待しています(買うかどうかは判りませんが)。映画全体の評価はかなり低そうです。「中島監督の汚点作品になる」とまで書かれていますが、そこまで酷くはありません。できれば鑑賞して欲しいものです。






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