うまれる ずっと、いっしょ (2014年)

作品総合評価 6点
少年の出番 −%(幼い子供は切ない・・)
寸評 ドキュメンタリーとしては秀逸。
【少年映画でない理由】ドキュメンタリー
映画情報など 2014年公開。DVD/BD未発売。


たまたま映画館から持って帰った本作のチラシ。あまり期待せずに、映画館へ出かけました。もちろん少年映画ではありません。ちょっと反則だな、と思える演出のドキュメンタリー作品ですが、涙腺がゆるみます。多くの皆様に見て欲しいと心から思います。

■ストーリー

ドキュメンタリーなのでストーリーというのもなんですが、ごく簡単に紹介。登場人物は、3組の家族。

1家族目は、両親と5才の男の子。母は子供が2才の時に今の父と再婚した。でも男の子は、それを覚えておらず、本当の父親だと信じており、父の事が大好きだった。また父親も血のつながっていない息子を心から愛している。

母に新しい生命が宿った。父にとって待ちに待った、血のつながった本当の子供だ。ここで男の子に「自分は本当の父親でない」と告白する事にした。でもなかなか出来ない。息子はショックを受けるだろうか・・やがて意を決して息子に告げる。

2家族目は、長年連れそった妻を病で無くした夫と、その娘や孫たち。本当に深く愛していただけに、夫の悲しみは時が経っても消えない(本当に、男なのにメソメソと)。娘たちは心配するが、やがて少しずつ立ち直っていく。

3家族目は、染色体の異常で、1才まで生きる確率は10%未満という難病の男の子と両親。両親の深い愛情に育まれて、危篤状態に陥りながらも、奇跡的に回復し、七五三を迎えるまでに。厳しい病状の中で時折り見せる、はじけるような笑顔が心に染みてきます。

■いい人ばかり

出てくる3組の家族。本当にいい人ばかり。演出なのかどうかはおいといて、見ている方は、自然と心が明るくなります。<変にリアリズムを追求するあまり、厳しい、汚い、辛い現実をこれでもか、これでもかと描く社会派ドキュメンタリーもいいのですが、見ている方は負のエネルギーを貰ってしまいます。

特に1家族目のお父さん。血のつながらない息子にあれだけの愛情を注げるとは、本当に脱帽です。実はお父さん自身も、血のつながらない父親(しかもアメリカ人)との確執を乗り越えて育ってきたとのこと。

5才の男の子も切ないのです。お父さん大好きで、今はいわば相思相愛の関係ですが、やがて成長し、あるいはお父さんの本当の子供との関係など、どうなっていくのでしょうか。

難病の男の子。申し訳ありません、告白します。この子は、映画の中で亡くなっていくのだとばかり思っていました。子供の死ほど、ショックな場面はありません。もう涙の準備をしていたのです。それどころか、それを期待する自分もいました。本当に恥ずかしい事です。

でもネタバレになりますが、そんな悲しい事はおこらず、しっかりと生きていてくれます。本当によかった。心から良かったと思っています。不埒な事を考えた事は忘れてしまって。

何かの記事で読みました。闘病記というジャンルの書籍がたくさんありますが、書いた著者もしくは対象の病人が死んでいる場合でないと、出版社は拒むそうです。生死で売上げが違うのです。大衆なんてそんなもの。他人事であれば、不幸は大きければ大きいほどいいんでしょう。

血のつながらない父子でもこんなに幸せ
この満面の笑顔。もらい泣きしそうです

■しかし現実問題として、お金がなければどうでしょう

いい人ばかりと書きました。でも、ここへ登場する3組の家族。皆さん経済的余裕がある方ばかり。余裕という程ではなくても、少なくとも困窮状態の方々ではなさそうです。

例えば、夫婦合わせて年収が200万円に満たない世帯、年金収入しかない高齢者世帯。もし、この作品に登場している家族の方々が、そういう境遇だったらどうでしょうか。「いい人」になれているでしょうか。

いくら貧しくても、新しくうまれた「いのち」、亡くなっていく「いのち」が大切にされるような人間社会。そんな社会があるとは信じられない気がするのです。これも、私の心が貧しいからかもしれません。

なにか支離滅裂なレビューになってしまいました。こんな事を考えさせてくれるのも、この映画のおかげです。地味なドキュメンタリーですが、是非とも見て頂きたい作品です。






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