ひそひそ星 (2015年)

作品総合評価 7点
少年の出番 0%(なんと少年の声だけ)
寸評 園子温らしからぬファンタジー。私は好きです
【少年映画でない理由】出番が僅かな事
映画情報など 2015年公開。BD/DVD発売中。
(写真は少年声の正体)


大手メジャー寡占が続き、どんどんレベルが低下する日本の映画監督の中で、異彩を放つ園子温監督。私はまだ園作品を見た事がありませんでした。それというのも、彼の作品に少年俳優が登場することがまず無かったからです。

ところが、本作品のキャストを見ると、神楽坂恵さん、遠藤賢司さん、に続く3番目に、今密かに注目している少年俳優の一人、池田優斗君の名前があるではありませんか。

異彩の実力派監督にとうとう少年俳優が登場するのかと期待を抱き、楽しみにしていました。ただ予告編を見ても少年らしい人物が一切登場しないのが一抹の不安。映画チラシには「地球ひとつ、郵便配達物81個、ぼくひとつ、鈴木洋子ひとつ」とあり「ぼく」がいるんだろうと思っていました。しかし不安は現実に。

■ストーリー

ごく簡単なストーリー。舞台はずっと先の未来。人類は衰退してごく少数になり、代って人工知能ロボットが世界を運営していた。主人公は宅配便会社に務める鈴木洋子(神楽坂恵さん=園子温監督の夫人)。彼女もまたロボットだった。

彼女の業務はレンタル宇宙船(昭和の木造アパート型)に乗り、宇宙各地にひっそりと生きる人間に宅配便を届けること。配達完了まで20年近くかかる。この宇宙船を制御するのは、やはり古ぼけた人工知能コンピュータ。コンピューターは「少年の声」で鈴木洋子に語りかける。「ぼくは決めたよ」

木造アパート型宇宙船。玄関は神社造り
海辺のタバコ屋(謎のタバコ銘柄が)

■所感など

そうなんです。コンピュータの声を担当しているのが池田優斗君。それでもどこか最後に池田君本人が登場するのではないかと期待しながら見ていたのですが、残念でした。チラシの「ぼくひとつ」の意味、1人ではなく1つだったのですね。でも池田君はセリフが達者で、声も少年ボイスなので文句はありません。

さて映画の出来なんですが、私は大好きです。この世界観、ムード、画面、なんとも言えず落ち着くんです。でも、大半の人は退屈で寝てしまうだろうと思います。最先端の宇宙船なのに、4畳半のアパートと水の漏れる流し台。ガスで沸かすお茶。感情を抑えた神楽坂恵さんの演技も絶品でした。
(故・星新一氏のショートショートに、大金持ち老人が宇宙船内に同じような部屋を作り七輪で魚を焼く話があり、それを思い出しました。)

宅配便の送付先は、人間がひっそり暮す宇宙の隅っこの惑星。福島県の被災地がそのロケ地。人のいない荒れ始めた商店街、津波の爪痕が残る海岸。本当にどこか他の惑星のように見えてくるから不思議です。1番気に入ったのは、海辺のタバコ屋さん。そのガラスケースに展示されたタバコ。私も欲しくなりました。(私は吸いませんけど)

その他、遠い未来の世界のはずなのに、今買収で話題のシャープの洗濯機、既に会社が無くなった三洋のオープン型テープデッキ、Panasonic乾電池、Sonyのテープが実名で登場。これら家電メーカーの後援でもあるのかもしれません。
(追記)本作品にも、生身の少年俳優がワンシーンだけですが、1名出演しておりました。申し訳ありません。






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