リアル 完全なる首長竜の日 (2013年)

作品総合評価 6点
少年の出番 5%(少年時代と亡霊)
寸評 少年時代の事件がトラウマ
【少年映画でない理由】出番が少ない事
映画情報など 2013年公開。BD/DVD発売中。
(写真は、亡霊少年役の柴郁織君)


乾緑郎氏のSFミステリー小説の映画化。公開時は本作品の存在自体も知りませんでしたが、ノースエンド先生の部屋の番外編で取り上げられ、少年の出番は少ない事は判っていましたが、DVDをレンタルして鑑賞しました。

SFミステリーとしてはよく出来ており、2時間以上の作品なのに長さを感じる事なく鑑賞。特に前半はのめり込んでしまいました。さすがにクセ者の黒沢清監督作品です。それでもラストが甘い。ここはもっと厳しいものにして欲しかった。 (原作はどうか判りませんが)

エレベーターのドアが開くと、全身ずぶ濡れの少年の亡霊が・・(これは怖いかも)
■ストーリー

人気漫画家の淳美(綾瀬はるか)はスランプから自殺を図り、命は助かったものの昏睡状態となって1年。ある研究所で人の意識に入る装置(センシング)を研究しており、夫の浩市(佐藤健)は治験者となり淳美の意識の中に入る。淳美は昏睡の中でもスランプに陥り、浩市に昔自分が描いた首長竜の絵を持ってきて欲しいと切願する。

センシングの副作用として浩市は見知らぬ少年の幻影に悩まされる。しかしセンシングを繰り返すうち浩市の意識は逆に混乱をきたすが、やがて衝撃的な事実を知る。それは昏睡しているのは浩市自身で、センシングで接触してきたのが淳美だった。漫画家も浩市だ。そして首長竜にこだわるのも自分の潜在意識だった。

15年前の出来事を思い出した。浩市(青木綾平)はリゾート開発事業の父と一緒にある島にやってきた。小学校で淳美と仲良くなるが、島の少年モリオ(柴郁織)はそれが気に入らず、何かにつけ浩市をイジメる。ある日、海の中で浩市に襲いかかったモリオだが、浮標のロープが足に絡まり、溺れて流されてしまった。

モリオの死は自業自得であるが、浩市は罪の意識から、この出来事を首長竜の仕業として心の中に封印した・・しかし大人になった浩市が悩まされた少年の幻影(幽霊)はモリオだったのだ。

■画面から伝わる緊張感とイライラ感は、本当にリアル

妻を昏睡状態から救おうとする若い男。イケメンの佐藤健さんですから、感情移入し易いはずなんですが、どうも落ち着かない。なぜかこの男の言動にイライラする部分があるのです。佐藤さんの演技力の欠如?いや決してそうではありません。逆に演技力があるからこその不安定感だと思うのです。

観客を安楽椅子に座らせ、お気軽に映画を見せてくれるような監督さんではなく、観客を不安定な岩の上、異臭のするゴミ置場に追いやって、ある意味のリアル感を味わせてくれるのだろうと思います。ネタバレはしませんが、その割にラストはハリウッドばりのハッピーエンド。浩市はやはり死なないと。

■少年俳優

トータルの出番は僅かなのですが、前半から少年の幻影(亡霊かも)が効果的に登場しますので、少年映画ファンとしてはかなり期待させてくれました。しかし後半のタネアカシの場面はあっさりしすぎ。

モリオ役、少年時代の浩市役を演じた少年俳優の氏名も判りません。ノースエンド先生の原稿から柴郁織君、青木綾平君の二人と判明しましたが、もう少しくらい配慮してくれてもいいのに。まあミステリーとしてはよく出来ていますので、未見の方はレンタルでも。(ネタものですので、1回見てネタが判ったら、もう見なくていい作品かもしれませんけれど)

博物館の廊下でも少年の幻影が・・
故郷の島の海岸。海の中から少年が・・


少年時代の浩市は首長竜の絵を描いた
(青木綾平君は「にいちゃんのランドセル」で好演)
少年モリオが操縦する船に乗った浩市
(あの世へ向かうはずだったのに・・)


少年モリオの悲劇。(浩市を襲ったが、ロープが足に絡まって溺れてしまう)






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