丹下左膳 百万両の壺 (2004年)

作品総合評価 6点
少年の出番 40%(幼いけれどキーマン)
寸評 往年の名作を忠実にリメイク
【少年映画でない理由】年齢が低いこと
映画情報など 2004年製作。DVD発売中。
(写真は武井証君)


片目、片腕の凄腕サムライである丹下左膳は子供の頃から知ってはいましたが、TVで映画が放送されていても全く見もしませんでした。どちらかと言えばチャンバラ系は嫌いでした。一方でドラマ的にはほぼ同じ構成の西部劇は大好きで、シェーン,荒野の七人、リオブラボーなんかの古典はよく見ました。(マカロニウエスタンは今ひとつでしたけれど)

さて本作の基になったのは1935年の「丹下左膳餘話 百萬両の壷」(山中貞雄監督)で、丹下左膳シリーズの最高作、いや日本映画の中でも傑作の一つと言われているそうです。そんな事も知りませんでした。例によってノースエンド先生からの紹介で鑑賞しました。幼い武井証君が活躍していると聞いて。

爺ちゃんから貰った薄汚い壺。これが形見になった。
(武井証君は幼いながらも熱演ですが、ヅラがあまりに不自然。もうちょっとメイクさん何とか...)
■ストーリー

丹下左膳(豊川悦司)は刺客に襲われながらもある任務を果たしたが、右目と右腕を失った。その後は妻と矢場(表向きは射的場、裏は賭博っぽい店)で浪人暮らし。一方、ある奉行の次男(野村宏伸)は、お家に伝わる財宝のありかを塗リ込めたこけ猿の壺を知らずにクズ屋に売り払ってしまい、その壺を探すのにやっきになっていた。

その大事な壺はひょんな事から貧乏ソバ屋の孫,ちょび安(武井証)の金魚鉢になっていた。そのソバ屋で左膳が暴漢に襲われるが見事に返り討ち、しかしソバ屋は巻き込まれて瀕死の重傷、左膳に「この子を頼む」と言い置いて亡くなった。ちょび安は5歳で天涯孤独の孤児。左膳は仕方なく家へ連れて帰る。

左膳も妻も子供嫌いのはずだったが、ちょび安を実子のように可愛がる。ある時、ちょび安の間違いをきっかけに60両もの借金を作ってしまい、左膳は賭博や道場破りで金の工面をする。ちょび安は自分のせいだと思い込み、大事な金魚壺を持って家を出た..(奉行の次男がどんな壺で買い取るとお触れを出していた)

■丹下左膳ってこんなキャラクターだったの

隻眼でも鋭い眼光、片腕でも剣の達人、ニヒルでクールな男だと思っていたのですが、本作品では女房の尻に敷かれてブツクサ言っている、どこかコミカルなキャラクター。ただ原作者は本作品の大元の「丹下左膳餘話 百萬両の壷」には否定的で大抗議したとの事ですから、本作品の左膳はちょっと違うのでしょう。

演じた豊川悦司さん自身つかみどころのないキャラクターで、剣豪とか侍役が適当かどうか判りません。凄みと重みがやや足りないのです。役所広司さんくらいなら..(逆に重すぎてしまうかも)

爺ちゃんに金魚を買って貰い満面の笑顔
爺ちゃんが死んだ。安はまだそれを知らない。
左膳はどう話そうか悩み、結局家へ連れて帰る。

■シンデレラ・ボーイ・ストーリー

ちょび安を演じた武井証君、大きな壺をかかえてヨタヨタと歩く姿は誰が見ても可愛いとしかいいようがありません。ただあまりに幼いので、少年俳優としてどうのこうの評価はしません。でも武井君はこの後、本当に多くの作品に起用されましたので、スタッフからは好印象だったのだと思います。

シンデレラ・ボーイと書きましたが、そういう意味(俳優として認められる)ではなく、役柄のこと。貧乏なソバ屋の孫で天涯孤独だったちょび安。彼が持っていた御守りを見て、実は奉行様の落胤(隠し子)だった事が判明。奉行様に引き取られてリッチな生活に。

男女問わず、この手のストーリーが多いのは、まだ大半の大衆の生活が苦しかった時代の夢なんだろうと思います。Always三丁目の夕日の孤児・淳之介も実は社長さんの息子だったし。でも名もなく貧乏な家の子供のままで幸せになっていくような話の方が好きです。

子役が印象的な時代劇といえば、もう少し年齢の高い少年が出ている「浮浪雲」。映画化されているとばかりと思っていたらTVドラマだけ。新之助役が伊藤洋一君だった事を覚えているのですが、こんなのも映画化して欲しいものです。

安は死んだ爺ちゃんの孫ではなかった
(ずっと身につけていた御守りに秘密があった)
奉行様の落胤(隠し子)だったのだ。奉行に引き取られ
籠に乗ってお殿様生活(シンデレラストーリーですなあ..)







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