風のあるぺじお (1987年)

作品総合評価 6点
少年の出番 50%(主人公の長男役)
寸評 父は人気歌手。その息子は必ずしも嬉しくない
【少年映画でない理由】あくまで父親が主役
映画情報など 1987年製作。ビデオ絶版。
(写真は長男役の飯泉征貴君)


2017年12月、フォーク歌手のはしだのりひこ(端田宣彦)氏が亡くなられました。享年72歳。フォーク・クルセダーズやシューベルツ時代のヒット曲は、私が小学校低学年の頃から馴染んでいましたが、最近はTVでお見かけすることもなく、引退されたのかと思っていました。

音楽界で、東京ではなく関西が元気だった頃の京都フォークの牽引者。その端田氏の著作「おとうさんゴハンまーだ」を映画化したのが本作品です。人気フォーク歌手とその家族という切り口で、特に子供たちとの関係が描かれています。端田氏の追悼の意味でレビューを書きました。

なお、例によってノースエンド先生からビデオをお借りして鑑賞しました。

母が入院。父は超多忙なフォーク歌手。残された兄妹は..
■ストーリー

主人公は人気フォークグループのリーダー五郎(江藤潤)。自ら作詞作曲しコンサートツアーと多忙を極めていたが、妻が倒れて入院してしまった。大慌ての五郎だが、2人の子供の世話と音楽活動を両立すべく奮闘を始める。長男の竜(飯泉征貴)は学校でいじめを受けているようだが、五郎は忙しさにかまけて深く立ち入らなかった。

小学校の参観日。五郎のファンでもある担任の女性教師は音楽の時間に五郎のヒット曲(風)を歌わせる。しかし竜だけは歌わずに下を向いている。やがてイジメはエスカレートし怪我をして帰ってくる事が多くなった。父が人気歌手との事でやっかんだ連中たちがいるのだ。

そして今度は逆に竜がイジメっ子に反撃し怪我をさせる事件が起きた。イジメっ子の両親はここぞとばかり五郎を非難するが、イジメっ子の方が自分が悪かったと謝りにきた。五郎も他の父母も、子供の事は何にも判っていなかったことを思い知る...

■振り返らず、泣かないで、歩くんだ..

父親(母親)が人気のある有名人だと、その息子(娘)はどうなんでしょう。小さい頃は鼻高々かもしれませんが、だんだんと周囲がやっかむようになって、辛くなってくることもあるのでしょう。今でもそれは同じだろうと思います。

しかし学校の対応は違うでしょう。1987年当時はその辺はルーズだったのかも。音楽の時間しかも授業参観の時に、生徒の親である有名歌手の曲を歌わせるなんて...他の親から文句が出ても仕方ありません。その生徒自身が一番辛い思いをしている事を先生も親も知らないとは。

息子は小さな笛(トランペットのマウスピースみたいな物)を常に持ち歩き、何か吹いています。誰にも知られないように。ところがイジメっ子が気づきました。「振り返らず泣かないで歩くんだ」父親の曲「風」(シューベルツのフォーク名曲)のサビの部分の歌詞です。

なんと父親ですら知らなかったのです。息子の気持ちを。息子を演じた飯泉征貴君。幼くてもしっかりした演技力を見せてくれました。この2年後には映画「夏のページ」で少し成長した姿が見れます。役柄は本作と同じような、ちょっと突っ張り系の少年。

長男の竜は天体観測が趣味
(辛い時に一人になれる時間だった..)
最寄りの駅を歩く竜(右端)
(東急世田谷線。まだ緑色の古い電車ですよ)

■江藤潤さんの好演

はしだのりひこ氏の実体験を元にした小説が原作。その有名フォーク歌手を演じたのが江藤潤さん。誠実なお父さん役は本当に好感が持てました。はしだのりひこ氏本人が演じるよりも良かったと思います。たださすがに本人の歌声は殆どありませんでしたけれど。

風、悲しくてやりきれない、青年は荒野をめざす、花嫁、もう懐メロですが、今でも時々カラオケで歌います。今度は物議を醸したイムジン河でも練習して歌いましょうか。

竜(中央)をイジめるグループに囲まれた
(しかし左端の少年、脚が長いですなあ..)
階段から落とされて怪我をした竜
(誰にやられたんだ!答えない)


(おまけ)在りし日の端田宣彦氏を偲んで

youtubeで検索すれば、フォークルやシューベルツ時代の端田氏の映像はいくつでもありますが、今回は俳優?としてドラマに出演した時の画像を。今や憎まれ口男になってしまった坂上忍さんとの共演作。ふしぎ犬トントン第6話「男と男の国際デート」より。

右が端田さん。ある国の皇太子役。
(変な関西弁なまりの日本語を話す変な人)
この回のタイトルは「男と男の国際デート」
(端田さんと坂上君がデートするの...)







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