blank13 (2017年)

作品総合評価 6点
少年の出番 15%(主人公の小学生時代)
寸評 失踪した父への愛憎を非常に乾いた視線で描く
【少年映画でない理由】出番少
映画情報など 2017年製作。BD/DVD等未発売
(写真は主人公の少年時代を演じた大西利空君)


前触れもなく父が失踪。残された家族は大変な思いをする。そして月日が経ち再開した父は死期の間近。本当によくあるストーリーです(具体的に作品名を挙げよ!と言われるとすぐには出てきませんが)。本作を見るモチベーションは「大西利空君が出演している」それだけでした。

大阪地区での公開翌日、シネマート心斎橋の初回を鑑賞しました。この日は月1回の「シネマートの日」という事で誰でも1000円。そのせいもあるのか地味な作品にも関わらずお客さんは結構入っていました。年齢層を問わず圧倒的に女性が多い印象でした。

どうやらNHK朝ドラでも活躍中の高橋一生さんが目当てのような感じです。少年俳優の大西利空君が目当ての人は私一人くらいかも...そんな事はおいといて、70分というやや短めの作品ですので退屈する事なく見れました。ただ後半がテレビのトーク番組みたいになっているのは少し興ざめですけれど。

大西利空君。本当にいい顔しています。それ以外に言いようがない...
■ストーリー

23歳のコージ(高橋一生)は婚約者に子供が出来た事を知る。そんな時、兄のヨシユキ(斎藤工)から13年前に失踪した父(リリー・フランキー)の消息が判ったと連絡を受けた。父はがんで余命3ヶ月。入院先も判ったが、兄も母もお見舞いなんか絶対行かないと言い張った。

13年前、父は麻雀や賭博に明け暮れて多額の借金をかかえ、毎日借金取りのヤクザが家に押しかけてくる始末。それでも10歳のコージ(大西利空)は父が好きだった。コージには優しく野球を教えてくれた。一方、兄のヨシユキ(北藤遼)は父のようにならないため受験勉強に必死だった。ある日ちょっとタバコを買いに行くといったまま父は失踪。残された母と息子二人は死ぬような思いで暮らし抜いた。

兄も母も拒否する中、コージは父の病室に行った。婚約者もコージの父に会いたいと。やがて父は亡くなった。その葬儀の日、閑散とした会場に弔問に来たのは強烈なクセを持つ人間ばかり。彼らから語られた父の姿とは...

■13年のブランクは長いのか..

年を取ると時間がどんどん短く感じると言われています。私もそれを実感。13年なんてあっという間。しかし10歳の少年にとっては長い時間である事は確かです。あれだけ好きだった父親が、憎んでも憎みきれない存在になるには十分な時間だろうと思います。

しかし本作品では少年の抱く感情の変化(愛→悲しみ→憎しみ→無関心)が殆ど描かれていません。母親が交通事故に会いながらも警察にも病院にも行かず、血とアザのついた顔を化粧して仕事に行く鬼気迫る姿は印象に残りますが、二人の息子の気持ちは描かれていません。

70分の映画ですし、多くの場面を撮影できなかったのかもしれません。舞台でいうならせいぜい2幕くらい。葬儀に参列したクセ者達に、順番に故人への思い(秘密)を語らせる場面で時間を消費しています。お笑い芸人のトークバラエティのような感じで。

これはこれでいいのですが、せっかく映画というダイナミックな表現手段があるのですから、各人のエピソードを映像で表現して欲しかった。その辺が新人監督の(資金的なものを含めた)限界かもしれません。逆に言えば、その制約を考えれば非常に健闘した作品ではと思います。

■タダ者ではない、大西利空君

10歳の主人公を演じた大西利空君。出番自体は多くありません。映像的には予告編で見れるものが大半。それでも本当に後光が差すほどの存在感を感じます。リリー・フランキーさん演じる父親とのキャッチボールのシーン。

ボールを投げたあとニヤッと笑う表情は、ふてぶてしいのか、小悪魔のようなのか。普通の子役さんでは出せない表情です。このシーンだけで映画を見た甲斐があったというもの。(映画見なくてもyoutubeで主題歌「家族の風景」(笹川美和さん)PVを見れば、ほぼ利空君の出演シーンは全てですけれど。)

もう一つは服装。兄のお下がりなのか、だぶだぶのTシャツと短パン。短パンは以前の中学生が着用していた紺の体操短パンの成れの果てでしょうか。貧乏臭い服装なのに利空君が着ると不思議に似合っているのです。オシャレにすら見えるのです。もうちょっと見たかった。

兄役の北藤遼君の出番はもっと少ないのが残念。後半のお笑い芸人さんの時間を少しカットしてでも二人の少年時代をもっと描いてくれたら素晴らしい作品になったと思うのに。

雀荘に入り浸る父に会いに行くコージ
(作文で賞をもらったよ!)
父とキャッチボール。どうだ!とばかりの笑顔
(この笑顔がなかなか挑発的)

■高橋一生さん、ほか

さて大人気俳優の高橋一生さんですが、10歳で父と別れて13年後ですから23歳くらいの設定。雰囲気は若いとはいえ、さすがにそれは厚かましい!のでは。特にアップになると肌の張りが若者ではなく40前です。兄役で監督の斎藤工さんの方がずっと若く見えます。

とはいえ高橋さんの空気感は人を惹きつけるものがあるのは確か。
どうでもいい話ですが、私には彼の鼻の形が羨ましい。鼻梁の幅がすーっと細くて鼻の穴が縦に。私は幅の広い鼻で穴が横向き(南方系)。昔から、細い鼻と後頭部が出っ張っている人が羨ましかった(私は絶壁頭ではありませんが)。ヒトラーのゲルマン民族優性学信者みたいで、情けない話です。

あと前述しましたが、母親役を演じた神野三鈴さん、彼女の演技が本作ではベストです。後半のクセ者のリーダーは佐藤二朗さんでしたが、ラバーガールの大水洋介さんを久し振りに見て懐かしく思いました。「We Can☆47」に出ていた頃よりも老けていましたけれど。いずれにせよ斎藤工さんの監督作品はこれからも見てみたい気がします。

バッティングセンターで..
(凛々しい顔だなあ..美少年)
父がいなくなった食卓。母子3人だけ
(ちゃぶ台を見るとひっくり返したくなる...なんて)

斎藤工監督に指導を受ける
監督と大西利空君、兄役の北藤遼君







▼イーストエンド劇場へ戻る   ▼第5部トップへ戻る