学校の怪談4 (1999年)

作品総合評価 5点
少年の出番 60%(序盤は兄が主役、以降は妹が主役)
寸評 真面目に丁寧に作られた子供向け怪談
【少年映画でない理由】少女が主役
映画情報など 1999年製作。DVD発売済
(写真は主人公の兄役を演じた広瀬斗史輝君)


1995年から1999年にかけて4本製作された映画「学校の怪談」シリーズ。子供向け映画にもかかわらず、丁寧に作られています。ノースエンド先生の部屋に1〜4までレビュー(番外編219話)がありますが、私もこれを読んで遅まきながらレンタルで全作鑑賞しました。

どの作品も少年俳優は登場しますが少年映画とはいい難いのが残念です。監督さんの視点はやはり女の子が中心になるようです。でもそのおかげてしょうか、このシリーズはどれも興行収入10億円以上のヒット作になっています。

4作目を取り上げた理由ですが、このレビューのUPは 2018.3.11。東北大震災からちょうど7年目。この4作目は津波によって亡くなった子供たちのお話なのです。(不謹慎と思われる方がおられましたら、本当に申し訳ございません。)

恒は、知らない子供たちに誘われて気がつくと古い木造校舎の中にいた。
(このシーンはモノクロ。この角度の広瀬斗史輝君は美少年ですなあ...)
■ストーリー

太平洋戦争中のある海辺の尋常小学校。かくれんぼで幸一(福田亮太)がオニになっている時に大津波が襲来。幸一ひとり脱出できたが、隠れていた子供(男子2,女子2)は亡くなった。それから50年余りがたった夏。小学生の恒(広瀬斗史輝)とヤエ(豊田眞唯)の兄妹が海辺の旅館へやってきた。叔母が経営する旅館だ。

恒は従姉妹から学校に伝わる怪談を聞く。津波で亡くなった子供たちの写真も見た。そしてお盆が近づく中、子供の行方不明事件が頻発。いずれも津波で亡くなった霊にいたずらや暴言を吐いた子だった。やがて恒も子供たちの霊を見るようになった。子供たちは「早く私を見つけて」と恒にせまり、お盆の夜、恒は姿を消した。

一方、妹のヤエは海辺にいる老人(笑福亭松之助)が気になり話をする。老人は津波で生き残った幸一だった。そしてみんなからコウちゃんと呼ばれていたと。ヤエは驚く。兄の恒もコウちゃんだ、兄は幸一老人と間違えられて呼ばれたに違いない。ここからヤエの大活躍が始まる。

■因果応報、オーソドックスな怪談

50年前の津波で亡くなった子供たち。魂が帰ってくるというお盆の時期。海に流れ着いた古いランドセル(亡くなった子供のもの)を粗末に扱った少年。慰霊のために建てられたお地蔵様に石をぶつけた少年、暴言を吐いた少女などが次々に怪異に遭遇し行方不明になります。

悪いことをした。その報いとして怖い目に会う。判り易い因果応報です。これが本来の怪談で、昔から語り継がれてきたもので倫理教育なんだろうと思います。今や刺激的な怖さばかり求める時代で、ホラーも支離滅裂というか、道理もなにもない作品が多いのは困ったもの。

本作で幽霊となった子供たち。かくれんぼで隠れたまま命を失ったため、単に早く見つけて欲しいという念が強いだけ。あまり恨みとかオドロオドロしい感じはなくユーモラスにしているのが、これを見る子供たちにも優しい内容となっています。

戦争末期に東海地区に大きな地震があったそうですが、戦時中との事であり秘匿されてあまり記録に残っていないそうです。本作では地震はなく、いきなり大津波ですから架空の話だとは思います。でも東北大震災の前に本作が作られていますから、何らかの教訓になっていたら...

50年前の津波で亡くなった子供たちの写真
約50年後の夏、恒とヤエの兄妹がやってきた

■基本は少女映画でした。

都会からやってきた兄妹が主役。序盤は兄の恒が主役のようでしたので、これは少年映画かと思ったのですが、本当にダメなやつ(妹が兄にいつも言うセリフ)でした。演じた広瀬斗史輝君は「北の国から」少年時代の吉岡秀隆さん似。見る角度によっては美少年なのでもっと活躍して欲しかった。

妹ヤエ役の豊田眞唯さんは見るからに可愛い女の子で、全ての冒険を彼女が一人で(老人も一緒ですが)独占します。監督の平山秀幸氏はシリーズ中の1,2,4作を担当していますが、全て少女目線が強い感じです。これはこれで仕方ありません。その期待に応えた豊田眞唯さんは大したもの。

もう一人、津波で生き残った幸一役の福田亮太君。本当に戦前の昭和顔ですが、当時はNHK天てれのレギュラーで人気者。演技もセリフも度胸満点。同じく戦前の昭和少女ユキコを演じた森安加代子さんと合わせてこの二人の顔が印象に残ります。

最後に老人役の笑福亭松之助さん。あまりのセリフ棒読みに驚きました。せっかくの作品の中でレベルを低下させている張本人。そのせいなのか「シックスセンス」ばりに、実は老人も幽霊だったとの設定。幽霊なればセリフが不自然でも仕方ないのかも。お笑い芸人ではなく、普通の俳優さんを使って欲しい。(いるでしょう。ずっと真面目に役者活動をしてきたのに芽が出ない人が。そんな人に活躍の場を与えてあげて欲しい)

また残りの学校の怪談1、2、3についてもレビューできればと思っています。

海から漂着した古いランドセルを捨てた少年
海へ引きずり込まれるように行方不明に..
お地蔵さんを壊した少年は、友人の目の前で
廃線なのにやって来た幽霊列車に乗せられて...


お盆の精霊流し。津波で亡くなった人を偲ぶ。
(浴衣の裾を足にしっかり巻き込んで..)
恒は行方不明に。その間、妹のヤエが大冒険と大活躍!
そのおかげで成仏した子供たち。左は老人の幸一


幸一(中央)も当時の姿に戻って笑顔に..
(福田亮太君。強烈で個性的な顔ですが人気者でした)
妹が大活躍している間、恒はというと...
(ダメなヤツ!)







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