万引き家族 (2018年)

作品総合評価 8点
少年の出番 50%(群像劇で主役群の一人)
寸評 是枝ワールドの集大成的な作品
【少年映画でない理由】群像劇の一部でしかない
映画情報など 2018年製作。BD/DVD未発売
(写真は海外でも美少年と話題になった城桧吏君)


2018年カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールを受賞して話題沸騰。同時に11歳の城桧吏君にもスポットが当り、第2の柳楽優弥などと騒がれました。最近の是枝監督作品では少年俳優はそれほど活躍していないだけに、少し不安を覚えながら鑑賞。

「誰も知らない」以降の是枝監督の作品のエッセンスを散りばめたような作品で、集大成のように感じました。静かに静かに展開される物語。心地よくスクリーンに集中できました。城桧吏君は主役群の1人という扱いに過ぎませんが、スクリーンの中では目立ちます。(私が少年俳優ファンだからですれけど)

しかし少年映画か?と問われると難しいのですが(今の時点では)違うとしか言えません。ただこの万引き家族が壊れてしまう引き金を引いたのが少年。そして最後のシーンなどを考えると、是枝監督は少年に力点を置いていたようにも思えます。なので今回のレビューはあくまで初見の暫定とさせて下さい。

血の繋がりはないが兄妹になった二人。ダブダブの貧しい服なのに、少年が着るとなぜかおしゃれ。
(映画パンフレット。城桧吏君ファンには大いに不満。役柄に比べて写真が少な過ぎ...)
■ストーリー

東京の下町で時代に取り残された一軒家。そこに暮すのは中年男の治(リリー・フランキー)、嫁(安藤サクラ)、老母(樹木希林)、嫁の妹(松岡茉優)、そして息子?の祥太(城桧吏)の5人。老母の年金をベースに細々とアルバイトをして生計を立てている。そして足りない分は万引きや泥棒で補う。極貧生活だが家族は幸せそうにさえ見える。

祥太は治を父ちゃんと呼ばず学校にも通っていない。治と祥太が万引きをした帰り、寒空の中でアパートのベランダに放置されている女の子(佐々木みゆ)を見つけて軽い気持ちで連れて帰った。すぐに帰すつもりでアパートへ行くと両親が激しい喧嘩の真っ最中。そのまま家に連れて帰り祥太の妹になってしまった。

祥太は女の子に対して嫉妬めいた複雑な気持ちを抱きながらも妹として受け入れて6人家族で楽しく暮す。そんな生活がずっと続くと思われた矢先に老母が急死。葬儀費用もないため自宅の床下に埋葬。やがて万引き行為に疑問を抱きはじめた祥太がスーパーで捕まった。それが引き金で家族は崩壊。祥太も実子ではなかった...

■家族の絆って..

この家族、全員が血の繋がっていない他人かと思っていたのですが、2人の子供以外はしっかり家族。2015年の映画「at Home アットホーム」はそんな家族でした。「貧乏でもしっかり絆で結ばれた家族の愛?」そんなはありません。つながっているのはお金だけ。家族が大事と声高に叫ぶ権力者に対する是枝監督のアンチテーゼ(家族の絆という美名の下で進む戦前の封建体制回帰への不安)なのでしょう。

母親が亡くなっても悲しむ前にお金の心配。11歳の祥太がスーパーの店員に追われて大怪我。入院先に警察がやってくると、祥太を捨てて一家で夜逃げ(失敗しますけど)。全くドライな人間関係ですが、愛は全くないのでしょうか。いやあるんだと思います。なにか言葉で言い表せない暖かい空気を感じるのです。

ひょうひょうとしたリリー・フランキーさんの演技も安心できるのですが、嫁役の安藤サクラさんが出色の出来。お金が全てのように装いながら、もっと深いレベルの人間愛が滲み出ています。そしてエロっぽい。まさか是枝監督作品で男女の絡みをここまで描くとは。R12指定も仕方ありません。

小5とは思えない表情と色気
■少年の視線...

城桧吏君のセリフは多くはありません。ただ視線の演技(演出)は凄く印象に残ります。ゆりが来るまでは祥太が1番下で王子様。特にリリーさん演じる治と男同士で遊んだり万引きするのは魅力的だったんでしょう。そこへゆりがやってきて。祥太は嫉妬。でもお兄ちゃんになっていきます。

狭い家の中で押入れの中が祥太の城。押入れは是枝作品の定番アイテム。(監督自身、子供の頃から押入れが好きだったとか。押入れというと「呪怨」や「ほん呪」など幽霊が写ってしまいそうで怖いイメージですが、是枝作品ではちっとも怖くありません)

お兄ちゃんになった祥太。妹のゆりは祥太の真似をして万引き。しかし駄菓子屋のおじさんに見つかり「妹に万引きさせちゃいけない」と諭されます。おじさんは祥太の万引きはお見通し(学校に行ってないのも知ってたかも。でも通報とかしない)。祥太はそこで万引きや今の生活に疑問を抱きます。

そして祥太が破局への扉を開くのですが。最後のシーンは思わせぶり。今はネタばれはしません。

しかしチョイ役にも豪華俳優陣。池松壮亮さんなんか勿体なくて。次回は彼にもスポットをあてて欲しい。少年映画として「誰も知らない」を超えは出来ませんでしたが本当に良作です。製作にフジテレビが入っているのが、おかしいような。面白いような。(超右寄りメディアと左寄り監督の組合せ)

万引きをする直前の緊張した表情
(ラグビー五郎丸選手のように、ルーティンがあります)
虐待されていた女の子ゆり。祥太は...
邪魔に思いながらも次第に妹のように思えてくる

後ろ姿。ハーフパンツは自分でカットしたお手製?
(城君はスタイル抜群。お尻の位置がすごく高くて..)
家族で海水浴。浮き輪をふくらませる
(ちょっと寒そう。この表情は年齢相応に幼い)


万引き失敗。スーパー店員に追われて必死で逃げる表情に鬼気すら感じられて...
(手に持ったミカンの袋が切ない。でも後日「わざと失敗したんだ」と告白)






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