誘拐報道 (1982年)

作品総合評価 7点
少年の出番 5%(誘拐される小学1年生)
寸評 豪華俳優総出演。ラストのボーイソプラノ。
【少年映画でない理由】出番過少
映画情報など 1982年製作。DVD発売中。
(写真は誘拐される少年役の和田求由君。)


高橋かおりさん演じる幼い少女のウチ、お父ちゃん好きや!がキャッチフレーズになっていた作品。そして故・萩原健一さんの渾身の演技も。それでもどういう訳か鑑賞する機会に恵まれませんでした。

少年合唱関係の方々からラストのボーイソプラノが素晴らしいとお聞きしていたのですが、映画本編については特に言及もなく、まあ見なくてもよいかと。

ところが例によってスカパーの日本映画専門chで放送。萩原健一さんの追悼番組だったのかもしれません。録画して鑑賞。少年映画とは言えませんが、この時代の日本映画の実力に改めて感心した次第です。いや懐かしい有名俳優が総出演。皆様も是非DVDで。

阪急電車で通学する1年生の少女と少年。同級生で席も隣。仲がよかったのに...
(高橋かおりさんと和田求由君。2人はこの後も子役として活躍)
■ストーリー

大阪の豊中市にある私立小学校1年生の少年(和田求由)が誘拐された。警察とマスコミが動き出したが、被害者に配慮して報道を控える事になった。映画の前半は読売新聞の支局スタッフの活動が中心。

開業医である少年の両親へ身代金要求の電話。両親はお金を工面して犯人の指示に従うが、警察やマスコミの存在を察知されて接触できない。犯人は少年と同級生の少女(高橋かおり)の父親(萩原健一)だった。喫茶店の経営に失敗して多額の借金を重ねた挙句の犯行っだ。

犯人は少年を処分する予定だったが、自分の娘の影と重なってどうしても殺す事が出来ない。身代金受渡しも失敗の連続。そのうえ少年は熱を出して意識を失った。焦り切った犯人はついに観念する。犯人逮捕の報と同時に報道協定は解消。新聞各社が活動開始。読売新聞は号外をすっぱ抜く...

■関西が舞台なのに関西人がいない...

本作品の舞台は宝塚や豊中といった阪神北部(大阪でもお上品な地域)。しかし出演者は萩原健一、平幹二朗、三波伸介、丹波哲郎、大和田伸也、伊東四朗、藤巻潤、福田豊土、宅麻伸(以上敬称略)など全員東京で活躍する有名俳優。女優さんも小柳ルミ子、秋吉久美子、池波志乃(同)など。

東映の総力を結集したのでしょうか。本当に迫力がありました。私は愛国心ならぬ愛関西心?は薄いので、この俳優陣で全く問題ありません。吉本興行のお笑い芸人などがいると興ざめです。(大昔の花菱アチャコさんなんかは俳優でも違和感なかったですけれど)

気に入らないのは方言指導という言葉。かつて日本の中心地。せめて関西弁指導と言って欲しかった。やはり愛関西心はあります。それはさておき一番いい味を出したのは三波伸介さん。今ならブラック認定間違いなしの新聞記者という職場。三波さんみたいな人がいるから働ける。(本作直後に急逝されたのが残念)

■息をしている

誘拐報道、子役で検索すると高橋かおりさんだけ。和田求由君は影が薄いのですが、幼いながらもかなりハードなシーンを頑張りました。萩原健一さんに担ぎ上げられたり、車のトランクに閉じ込められるシーンはきつかったと思います。

そのおかげでしょうか。本作の3年後の映画「恋文」では主役萩原健一さんの息子役に抜擢。さらに4年後の萩原健一主演映画「離婚しない女」にも出演。気に入られたのかもしれませんね。

ラストのシーンで歌われる「息をしている」は谷川俊太郎作詞の素晴らしい主題歌。歌っているのは林牧人君。これを聞くだけでも価値があります。歌はラストだけですが、曲は映画の全編で流れていますので、本当の意味で主題曲、主題歌。(最近の日本映画では、ラストだけ有名歌手やグループの歌が流れますが、映画の主題と殆ど関係ない曲も多々。これでは席を立ちたくなるというもの...)

学校から帰る途中。小さなトンネルを通る少年
(ロケ地は兵庫県宝塚市)
出口で上から布団袋を被せられて誘拐された。
(懐かしいエンジ色の布団袋。赤玉製?)


1度は脱出。海岸の廃屋に隠れる少年
(この必死の表情は1年生とは思えない..)
しかしまた犯人に捕まってしまった。
(雪の積もる中、小学校制服が寒々しい..)


ここは犯人の故郷。日本海の海辺の小さな町
(布団袋の中は人形ではなく本当に和田君が..)
少年がオシッコしたいと。男は殺せなかった。
(布団袋を撫でる...台本ではなく心からの行為だった。)


車のトランクで目隠しされてパンを食べる。
僕はクリームパンもいいけどジャムパンが1番好きや。
少年が意識喪失。犯人は手を握り叫ぶ、おい!
(萩原健一さんの鬼気迫る表情がすごい...)
(この時少年は死んだと思ったのですが..)


※後記
映画のエンドロールでは主題歌「息をしている」となっています。(右を参照)
しかし正式な曲名は「風が息をしている」との事です。本作に出演した小柳ルミ子さんがレコードを出していて、youtubeでも聴けます。なお林牧人君については、ボーイソプラノの館で詳しく書かれておりますので、検索してみて下さい。






▼イーストエンド劇場へ戻る   ▼第5部トップへ戻る