この空の花 長岡花火物語 (2012年)

作品総合評価 7点(人により評価は異なりますが)
少年の出番 5%未満
寸評 長時間ですがテンポよく見れます。
【少年映画でない理由】出番過少
映画情報など 2012年公開。DVD/BD発売中。
写真は星豪毅君。


昨年(2020年)お亡くなりになられた大林宣彦監督作品。本作から始まる晩年の4作品は反戦メッセージが前に出過ぎて、映画作品としては低評価もあり、映画賞やベストテンに名前が出る事も少なくなりました。

そして何よりも尺が長すぎるので見るのが辛い部分もあります。しかし本作など一旦見始めたら、テンポよく進む展開で最後まで一気に見れました。独特のカラーやケレン味たっぷりの演出は目に楽しいのです。そして出番は多くありませんが、少年俳優も大切にしてきた大林監督の心使いが感じられます。

ヤスシと片山先生は釣りにやってきた。そこへハナが....
(ハナはいつも一輪車。演じている猪股南さんは実際に一輪車の選手だったとか)

熊本の地方新聞記者の玲子(松雪泰子)が長岡へ花火大会の取材に訪れた。長岡には別れた恋人の片山(燗政宏)が高校教師をしている。女子高生のハナ(猪股南)が「まだ戦争には間に合う」という脚本を片山に持ってきた。それを読んだ片山は長岡花火大会の夜に演劇部で上演する事を決めた。

一方、玲子は取材を続ける。長岡は終戦半月前の8月1日に大空襲を受け1480名余りが死亡。その慰霊を込めた花火大会だった。空襲で1歳半の娘ハナを失った女性が語りかける。やがて花火大会。演劇が感動のフィナーレ。脚本を書いた女子高生ハナは姿を消した。空襲で死んだハナの霊だったのだろうか...

■長岡という町の持つ力...

長岡の花火大会は日本三大花火大会の一つ。放浪の画家 山下清画伯の貼り絵は有名です。そして山本五十六元帥の生まれた町。そのせいかどうか原爆模擬弾も落とされました。町の大半が空襲で焼けた町。そこには多くの魂が何かを残しているのでしょう。

大林監督を長岡に引き寄せる何かの力があったのは間違いありません。私も1度だけ長岡へ行きました。長岡科学技術大学で学会講演を聞き、夜は打上げ宴会の後、新幹線で東京へ。町の事は何も知りませんでした。今(2021年5月)の新型コロナウィルス騒動が収まったら、もう一度長岡へ行ってみようと思います。

さて映画ですが、女子高生ハナを演じた猪股南さんの個性的な顔が印象に残ります。大林監督の最後の?お気に入り女優になった事は確実です。映画では常に一輪車に乗っています。最初はこの一輪車が目障りでした。ハナが普通の人間ではなく1歳半で死んだ赤ん坊の霊だと思うと、この演出に納得。

大勢の俳優さんが出演していますので人間関係の把握が難しいところ。尾美としのりさん、厚木拓郎さんなど大林監督の常連さんの顔も。星豪毅(ほし ごうき)君が演じるヤスシという少年が出番は少しですが印象に残りました。少年主役の映画も数多く撮ってきた大林監督。晩年はその余裕が無くなったのかもしれません。

朝、ヤスシと片山先生は一緒に家を出る。
ヤスシは震災で亡くなった片山先生の姉の子(甥)
池の前で休憩。ハナも珍しく一輪車から降りた。
(一輪車で静止するのは疲れますもんね...)


花火大会の夜。隣に座った女性は...
誰だったのか。透けていく...
花火大会も終わった。ヤスシは少し成長
(出番が少ないのが残念でした)



※後記
2012年の本作の後、2014年『野のなななのか』、2017年『花筐』、2020年『海辺の映画館 キネマの玉手箱』と似たようなテイストの作品を製作。以下に簡単にレビューを書いておきます。3作とも少年映画ではありませんけれど。



『野のなななのか』(2014年)

北海道芦別市が舞台。ある男が死んで七七日(なななのか)までの49日間。樺太での終戦、青春や初恋などを描く。時折り登場する楽隊。なぜか『長岡花火物語』の山下画伯っぽい男性も参加。どことなくフェデリコ・フェリーニ監督っぽいテイストを感じます。
(写真は家出して駅の窓口で切符を買う少年)




『花筐/HANAGATAMI』(2017年)

佐賀県唐津市が舞台。太平洋戦争開戦前夜。3人の学生の青春。反戦メッセージだけでなく人間ドラマもしっかり描いています。LGBT(レズ、ゲイ)シーンあり。主人公の青年がどうも気色悪い。その中で、長塚圭史さん演じる足の悪い学生?の存在感が素晴らしい。
(写真は唐津おくんちの少年)




『海辺の映画館 キネマの玉手箱』(2020年)

大林監督の原点である広島県尾道市が舞台。尾道市にある映画館が閉館。最後を飾るのは戦争映画特集。明治維新の戊辰戦争、日中戦争、太平洋戦争での沖縄、広島まで。一貫して反戦思想が貫かれています。主役の一人が厚木拓郎さん。少年俳優として大林作品で何本も主役を務めました。最後の作品で主役とは嬉しい限りです。
(写真は雨に濡れる少年)






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